ベッコウマイマイ科の1種(続)
さて、今日は殻径1.8mmの「ベッコウマイマイ科の1種」の続きである。 前回は、フキの葉裏で見付けたベッコウマイマイ科(Helicarionidae)の不明種に水を振り掛けた後、綺麗になった貝殻の写真を撮っていたら、殻口の中から何か黒い舌の様なものが出て来たところ迄であった。 先ず最初に、前回の最後の写真をもう一度出すことにする。なお、写真は全て拡大するとピクセル等倍になる。殻口の中から黒い舌の様なものが出て来た.カタツムリの足であろう(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) これはカタツムリの足であろう。これまでに殻の中に閉じ籠もったカタツムリがどう云う順序で体を表に出して来るのか観察した記憶はないが、漠然と頭から出して来るのだと思っていた。小学唱歌の「でんでん虫々 かたつむり、お前の頭は 何処にある、角出せ、槍出せ、頭出せ」の影響もあるかも知れないし、また、感覚器を最初に出さなければ、外部の情報(危険)が掴めないだろうと思うからである。 しかし、写真を見ると、足から先に出すものらしい。約25秒後、頭が出て来た.大触角(左)と小触角(右)が見える(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 次は最初の写真の約25秒後、頭部が出て来た。長い1対の突起があり、まだ充分に伸びていないがその先端に眼がある。これが大(後)触角である。その右にある小さな突起は小(前)触角で、味触角とも呼ばれるので、その種の感覚器が備わっているのであろう。その間の下側(写真では右)に口がある。約50秒後。頭が完全に出た(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 約50秒後、頭が完全に出て来た。しかし、殻が水に浸っており水の凝集力で殻が倒れないので、頭が下にある葉っぱに中々届かない。暫く、頭を伸ばしながら左右に振っていた。頭を一杯に伸ばして漸く下の葉っぱに届いた殻口の周りは外套膜で被われている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 次は漸く頭が下に届いたところ。約30秒後の写真である。その約10秒後、殻が傾いて来た(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) その約10後には殻が傾いて来た。その後、殻の位置は「正しい位置」となり、普通に這い始めた。フキの葉の上を這うベッコウマイマイ科の1種(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) しかし、これはどう見ても普通の殻径3cm位のカタツムリが這っているのと大して違う様には思えない。上の写真では、右の触角の先端から左の殻の端まで僅か3.0mmである。触角が体全体に比して大きいのは分かるが、殻径1.8mmの微小なカタツムリとはとても思えない。前から見たベッコウマイマイ科の1種大触角の先端に黒い眼の粒が見える(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 前方からも撮ってみた。大触角の先端部に黒い粒が見える。これが眼である。しかし、カタツムリの眼にはどの程度の機能があるのだろうか。 そこで、若かれし頃に参考書として使っていたRobert Barnesの「Invertebrate Zoology」を書庫から引っ張り出して読んでみた。すると、巻き貝の中でも海産のMurex属(ホネガイの仲間)等はレンズ付きの眼を持っており、更に海洋浮遊性の異足類(Heteropoda)は最も高度に発達した眼を持っていて多くの魚の眼よりも優れていると思われるが、多くの腹足類(Gastopoda:巻貝)では光を感知するだけである、と書いてあった。カタツムリの眼も、恐らくは、結像する様な高級な代物ではないであろう。オマケにもう1枚.フキの葉上を這うベッコウマイマイの1種(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 先日、性懲りもなく植木鉢の下を探していたら、もっと小さなベッコウマイマイ科と思われるカタツムリを見付けた。これも生きているカタツムリであった。同じ様な貝だが、体の色が違うので別種の可能性が高い。此処暫く寒い日が続いて新顔のネタも現れないので、その内また超微小カタツムリを紹介することになるかも知れない。