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テーマ:日々自然観察(9833)
カテゴリ:昆虫(テントウムシ)
普通コマユバチは幼虫を宿主とし、コマユバチの幼虫は宿主が蛹になる前に体外に出て蛹化する(寄生者がホルモンを制御して宿主を蛹化させないらしい)。しかし、このテントウムシの場合は、宿主が成虫の時に蛹化している。コマユバチは何時テントウムシに寄生したのだろうか。 調べてみると、幼虫期に寄生するように書いてあるサイトもあるが、成虫に産卵しようとしているハチの写真を載せているところもある。思うに、幼虫から成虫に完全変態するときには蛹の中で大々的な細胞の再構成が行われると聞いているので、腹の中にコマユバチの蠕虫を抱えたテントウムシがまともな成虫になれるとは一寸思えない。テントウムシ成虫の寿命は2~3ヶ月あるから、コマユバチはテントウムシが成虫になってから寄生するのではないだろうか?
それにしても、テントウムシが生きたまま腹の下に繭を抱えて動けなくなっているのが不思議である。コマユバチの幼虫がテントウムシの腹の中から出て来て繭を完成させるにはかなりの時間を必要とするであろう。何故テントウムシはその間ジッとしていて、コマユバチの幼虫が繭を紡ぐのを許しているのだろうか。粘液でも分泌してテントウムシの脚を絡めてしまうのか? 腹の中に、宿主に比してかなり大きなコマユバチの幼虫が居ても、テントウムシが簡単に死なないのを不思議に思う読者も多いと思われる。コマユバチの幼虫は基本的に宿主の内臓や筋肉を食べるのではない。昆虫は脊椎動物とは異なり、解放血管系である。心臓はあるが、細かい血管は無く、心臓は謂わば体液(血リンパ)を掻き回すだけ。昆虫の体内では、栄養のある体液が内臓の間を自由に流れているので、寄生者はこれを摂取すれば内臓や筋肉に致命的な損傷を与えることなく成長することが出来る(最近の研究によると、テラトサイトと言う寄生者の漿膜に由来する細胞が栄養の貯蔵摂取に重要な関与をするとのことだが、此処では省略する)。
繭から剥がしたテントウムシは、2~3日はまだ生きていた。殆ど動かなかったので、何時死んだのか正確には分からないが、コマユバチの羽化する少し前までは生きていたものと思われる。 コマユバチにとって、生きているテントウムシの腹の下に居るのは、捕食者から身を隠すのに大変都合が良いことに違いない。テントウムシは鳥やクモも余り捕食しないと言う。形勢不利となると、黄色い苦い液を出すからである。 そうすると、テントウムシは、体液をコマユバチに盗られただけでなく、更に、その繭を保護する役目も負わされていることになる。このコマユバチ、益虫のテントウムシを殺す「悪い虫」だが、随分と「虫の良い」虫とも言える。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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