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2008.10.27
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カテゴリ:昆虫(カマキリ)


 今年の春は、我が家で生まれたチビカマども(ハラビロカマキリ)が庭の彼方此方に居た。夏になる前にみな何処かへ行ってしまったが、秋になってまたハラビロカマキリが姿を現した。背中(前翅)の模様(損傷や汚れ)から判断すると、今のところ全部で3頭の様である。ハラビロカマキリは毎年我が家に現れるので、これらが我が家で生まれたチビカマの成長した姿である可能性は低い。しかし、3頭とは何時もより少し多いし、何となく例年のカマキリよりも親しみを感じるので、今年は個体を区別せず一様に「カマちゃん」と呼んでいる。

 ハラビロカマキリの捕食風景?はこれまでに3回も掲載した(例えばこちら)。捕食に関してはもう充分だと思うので、今日は、捕食ではなく、獲り逃がすところを紹介する。「カマちゃん獲物を獲り逃がすの巻」である。


 カマキリ類が捕まえた餌を食べているのは屡々見かけるが、捕まえる瞬間や獲り逃がすところを見る機会は比較的少ない。食べるにはある程度の時間が掛かるのに対し、捕まえるのは一瞬だし、獲り逃がすのも捕まえてから30秒以内位だから、当然見る機会は少なくなる訳である。

 カマキリ類が獲り逃がし易い獲物は、カマキリの鎌にあるトゲが刺さらない様な外骨格の硬い昆虫であろう。カナブン類を襲うところは見たことがないが、これは恐らく非常に捕まえにくい相手に違いない。ハチにも外骨格が固く鎌の刺が利き難いと思われる種類がかなりある。

 我が家の秋の庭に一番多い大型のハチは、先日掲載したキンケハラナガツチバチ()である。このハチの外骨格はかなり固い。標本にするとき、ピンを刺すのが楽でなかった記憶がある。これまでに、ハラビロカマキリがキンケハラナガツチバチ(以下キンケと略す)を食べているのを見たのは3回(今日の分=後述を含む)なのに対し、獲り逃がしたのは5回以上見ているから、カマキリにとっては、やはりかなり捕まえにくい相手らしい。食べられてしまったのは雌1雄2で、逃げた内で記憶のハッキリしているのは雌3雄2である。



ハラビロカマキリ(捕食失敗)1
キンケハラナガツチバチの雌(左)を狙うハラビロカマキリのカマちゃん

キンケの上に以前掲載したブドウトリバの姿が見える

(2008/10/25)



 さて、開花中のセイタカアワダチソウにやって来たハラビロカマキリの「カマちゃん」、回りにキンケの雌が沢山居るので、キョロキョロと彼方此方に頭を向けていたが、やがてその内の1頭が、目の前にある隣の花穂に留まった。早速、体を徐々に伸ばしながら、キンケに迫る。

ハラビロカマキリ(捕食失敗)2
4秒後、キンケはカマちゃんに掴まってしまった

(2008/10/25)



 一瞬の内に、キンケはカマちゃんに掴まってしまった。チャンと刺されない様に背側から翅を押さえている。キンケの方は、不思議なことに毒針を出していない。この写真では、些か分かり辛いが、セイタカアワダチソウの花粉かキンケの毛らしき粉が飛び散っているのが、下の方に写っている。

ハラビロカマキリ(捕食失敗)3
14秒後、背後から翅を押さえられて為す術のないキンケ

(2008/10/25)



 その後、カマちゃんは体を回転させた。14秒後が上の写真である。キンケは背側から翅を押さえられて、為す術を知らず、と言う感じであった。

 しかし、お尻の方から食べるのは一寸マズくないか。頭から食べなければ、ハチは容易に死なず、刺されたり噛みつかれたりする可能性が残る。

ハラビロカマキリ(捕食失敗)4
3秒後、キンケはカマキリの鎌の間からずれて来た

大顎を思い切り拡げて噛みつこうとするキンケ

(2008/10/25)



 しかし3秒後、キンケの外骨格に鎌のトゲが刺さっていないせいか、キンケが鎌の間からずれて来た。キンケは体を捻り、強大な大顎を思いっきり拡げて、カマキリに噛みつこうとする。

ハラビロカマキリ(捕食失敗)5
獲物を獲り逃がして悔しがる?カマちゃん

(2008/10/25)



 次の瞬間、余りに一瞬の事なので何が起こったのかよく解らなかったが、キンケは逃げてしまった。悔しがる?カマちゃん(上)。その前の写真を見ると、お尻の先端近くにカマちゃんの頭があるから、顔を刺されそうになったのかも知れないし、或いは、単にキンケがスルリと抜け出たのかも知れない。しかし、やはりあの大顎で噛みつかれたのではないだろうか。

ハラビロカマキリ(捕食失敗)7
「腕」を舐める?カマちゃん.キンケにやられたのか?

(2008/10/25)



 実を言うと、この日私が見ている間にカマちゃんがキンケの雌を獲り逃がすのはこれが2回目で、また直ぐ後にも1頭を獲り逃がした。やはりハラナガツチバチの様な外骨格の硬い虫は容易に掴まらない様である。

 その後、カマちゃんは「腕」を舐める様な行動を暫く取っていた(上)。キンケに攻撃され何らかの傷を受けたのかも知れない。「腕」に付着したキンケの毛を食べている様には見えなかった。

 不思議なことに、キンケは上のどの写真を見ても毒針を出していない。しかし、別の個体で毒針を出している写真が1枚だけあった(下)。カマちゃんは、その毒針で刺されるのを巧く回避している様に見える。刺されない様なハチの扱い方を、本能的に知っているのであろう。

ハラビロカマキリ(捕食失敗)6
毒針を出しているキンケ.カマちゃんには届かない

(2008/10/25)



 この原稿を書いている間に、一服しにベランダに出た。今、カマちゃんはセイタカアワダチソウの隣に置いてある北米原産の赤紫色のシオン(友禅菊)の方に移って居る。どうしているかと思って花の間を探してみると、何と、キンケの雌を捕らえて食べていた。キンケを背側から頭部を上にして確保している。やはり、この態勢でないと逃げられてしまうのだろう。もう、頭は殆どないが、それでもまだキンケは動いており、お尻の先を時々カマちゃんの方に向ける。しかし、そのお尻はカマちゃんには全然届かない様であった。


 以上を書き終わってからまた一服しに出た。カマちゃんはもう先程のキンケを食べ終わって、次の獲物を狙っていた。すると、小型のキンケが目の前に留まった。今日は久しぶりの晴天のせいか、実に沢山の虫がいるのである。カマちゃんは、勿論攻撃を仕掛けたが、捕まえた次の瞬間、サッと身を引いてキンケを放してしまった(上の回数に入れていない)。どうも、腹側から捕らえたので噛みつかれるか刺されそうになったらしい。暫くすると、今度は非常に大型のキンケがやって来た。しかし、それがワサワサと目の前を通るにも拘わらず、カマちゃんは全く手を出さない。やはり、相手の大きさを見て攻撃するか否かを判断しているらしい。

 オオスカシバはこの大型のキンケよりもずっと大きい。しかし、以前掲載した様に、容易にハラビロカマキリの餌食になってしまう。・・・と言うことは、カマキリはハチが危険な相手であることをチャンと知っているのである。







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最終更新日  2008.11.03 21:38:13
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