我が家の庭の生き物たち (都内の小さな庭で)

2008/11/13(木)10:05

ヒメハラナガツチバチ(雄)

昆虫(ハチ)(46)

 先日、ヒメハラナガツチバチの雌を掲載したが、今日はその雄の方を紹介する(ハラナガツチバチ類は雄と雌で外見が非常に違うので、別々に紹介している)。  これで黒と黄色のハラナガツチバチを紹介するのは4回目である。順序として、一番沢山居るキンケハラナガツチバチ(以下、キンケと略す)の雌から始めたので、このヒメハラナガツチバチ(以下、ヒメ)の雄が最後になってしまったが、これを撮影したのは、キンケの雌を撮ったのと同じ頃(10月10日前後)である。 北米原産シオンの1種で吸蜜するヒメハラナガツチバチの雄 小楯板、後胸背板、前胸背板後縁に黄紋がある(2008/10/09)  写真でみると、キンケの雄とよく似ている。しかし、黄色い部分がキンケよりも一寸多い。特に、小楯板に2紋あるのが目立つ。その後にある後胸背板と、頭部に続く前胸背板の後縁も黄色い。また、一寸見たときには気が付き難いが、ヒメの腹部の黄色横帯は第1~第5節の5本あるのに対し、キンケでは第4節までで4本しかない。なお、前肢と中腿の腿節外側先端と脛節外縁が黄色いのはキンケと同じだが、一般にヒメの方がその範囲が広い。  これらの斑紋の色は、同じ黄色と言っても、キンケの方は正に黄色なのに対し、ヒメではかなり白っぽく、時として象牙色に近い。  キンケとヒメの雄は、多くの場合、これで区別が付く。しかし、ヒメの雄は小型になると小楯板の2紋が消失することが多いそうで、また、小型のキンケ雄の黄色はかなり白っぽくなってヒメの色に似てくる。更に、ヒメの第5節の黄色横帯は細いし、また、ハラナガツチバチ類は花に留まると体を丸めるので、写真には第5節の横帯が写らないことが多い。なお、ヒメの雌はキンケの雌とは異なり、翅端近くに明確な暗斑を持つが、ヒメの雄はキンケの雄や雌と同じく、この暗斑を持たない。 横から見ると、腹部の黄色横帯が5つあるのが分かる 横帯の色は白味がかった黄色(2008/10/10)  ところで、ヒメの雄はキンケの雄よりもずっと小さい。写真では、虫体を出来るだけ大きく表示する様にトリミングしてあるので、虫の大小が分かり辛い。そこで、キンケの雄の写真を見ていただきたい。キンケ雄の体長は「北米原産シオンの1種」の花径の1.2倍以上あるのに対し、ヒメではその径よりもかなり小さい。  北隆館の圖鑑に拠れば、キンケの雄16~23mm、ヒメの雄11~19mmである。写真の雄は体長2cmに近かったから、これでも最大級と言える。  前述の様に、小型のヒメの場合、小楯板の黄紋は時に消失することがあるが、実際的には、キンケの雄が幾ら小さくても普通のヒメの雄程度の大きさはあり、一方、ヒメの場合その程度に大きければ小楯板の2紋は必ずあると言って良い。言い換えれば、体長15mm以下であれば、背中の黄紋の有無に拘わらずヒメ、それ以上で背中に黄色い紋があればヒメ、無ければキンケである。また、腹部に横帯が5本あるのを確認できればヒメ、どう見ても4本しか無ければキンケとなる。 ハラナガツチバチ類の雄は触角が長い (2008/10/10)  ヒメの雌の所で書いた様に、ハラナガツチバチ類の雌は触っても逃げないことがある位落ち着いているのに対し、雄は非常に臆病で直ぐに逃げてしまう。逃げるにも色々な逃げ方がある。ツマグロキンバエやハナアブ類は、逃げても直ぐ隣の花に留まったりするので写真を撮るのに大した問題は生じないが、このヒメの雄は、隣の花ではなく、隣の敷地まで逃げてしまう。全く気弱なヤツである。 腹部腹板にも黄帯があるのが見える 前肢、中肢の脛節外縁にある黄斑が目立つ (2008/10/10)  キンケの雄もかなりの臆病者だが、それでもまだ、充分に近づいて、少しはカッコウの付いた写真を撮ってやることが出来た。しかし、このヒメの雄は全然ダメであった。ソモソモ、等倍接写出来るまで容易に近づけないのである。何とか接近して撮ったのが、下の写真。しかし、何とも頼りない格好である。 口吻を筒状花に差し込むヒメの雄.何とも頼りない感じ (2008/10/12)  これで夏から秋にかけて、この辺り(東京都世田谷区西部)で発生するハラナガツチバチ類の雌雄はほぼ全部紹介した。キオビツチバチの雄は紹介していないが、これはもう一つのWeblogに掲載してあるので、興味のある読者はこちらを参照されたい。  他に、この辺りで夏期~秋期に出現する可能性のあるハラナガツチバチはアカスジツチバチだけである。しかし、このハチは中学~高校の頃に数回見たことがあるだけで、その後は、残念ながら、一度も見ていない。

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