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カテゴリ:植物(木本)
実は、我が家ではこのシャクナゲ、余り評判が芳しくない。咲き始めは綺麗なのだが、開花後段々花色がくすんで来るし、花穂に着いた花が何れも水平方向を向いてしまって広場の広報用スピーカーの様な格好になってしまう。どうも、今一つ情緒に欠けるところがあるのである。
一つひとつの花を良く見てみると、雌蕊がみな曲がって花の端にへばり付く様な形になっている。どうも、雌蕊と言うものは真ん中にないと格好がつかない。授粉を拒否している様に見える。
花だけ撮っても面白くないので、柱頭(雌蕊の先端)と葯(雄蕊の先端)を撮ってみた。
柱頭は正面から見ると、丸かったりかなり細長い楕円であったりして、様々な格好のものがある。写真はそれらの中間的な形のものである。長径は葯3.3mm、短径は2.5mm、表面には粘液の様なものがあり、写真ではそれが白く見えている。花粉を付き易くする為であろう。 この柱頭、厚みがあって写真を撮るのに苦労した。其処で、横からも撮ってみた。
随分と真ん中が盛り上がった柱頭である。以前、紹介した日本シャクナゲや白花の西洋シャクナゲ(品種名:マダムマッソン)の写真原画を拡大してみたが、こんなに盛り上がってはいない。しかし、表面がデコボコしている点では同じであった。
葯の方はウツボカズラの虫を捕る壺を2つ並べた様な形をしている。長さは3~3.5mm。普通、葯と言うものは、内側に花粉があって、葯が開裂し裏側がめくれて花粉が出て来るのだが、咲いて少し日の経った葯を見ても、同じ格好をしている。シャクナゲの葯は開裂しないらしい。 調べてみると、開裂しないのではなく、上の部分が蓋の様に開くのだそうである。ツツジ科植物の多くはこう言う形の葯をもつとのこと。他に、ナス属やヒメハギ属にもこの手の葯があるらしい。
その葯の上部にある口の様な穴から中を撮ってみた。・・・花粉らしきものは見えない。 其処で、葯を切り裂いてみた。幅1mmに満たない葯を真ん中付近で切るのには、実体顕微鏡、ピンセットとメスが無いと一寸難しい。ピンセットは先日この手の用途のものを買ったので何とかなるが、実体顕微鏡とメスはない。仕方なく、+3と+2.5の老眼鏡を2重にかけ、刃物の方は先日磨いだばかりの柳刃包丁を使うことにした。 ピンセットで葯を押さえ、柳刃の刃をペティナイフの様に持って、何とか切ることが出来た。
すると・・・、中はカラッポ!!、花粉は見当たらない。最初から無いのか、或いは、もう全部出てしまったのか? 其処で、咲き始めたばかりの花弁が極く少しだけ開いた花から葯を取り出して切ってみた。
花粉と思しきものが少し見える。しかし、葯の大きさから判断して数が少な過ぎる。開き始めたばかりの花でも花粉が少ないとはどう言うことか? そこで、まだ咲く前の花、即ち、膨らんだ蕾の花弁を取り去って、中を見てみた。
葯の「口」の周りに花粉と思われる白い粒々が見える。花が開く前にもう花粉が吹き出していると言うことらしい。 この葯を取り出して切ってみると、下の写真の如し。
中には、半透明でまだ少し未成熟な感じの花粉が沢山入っていた。しかし、半透明に見えるのは光線の加減かも知れない。 何れにせよ、このシャクナゲでは、花粉はまだ花が開く前に葯から出ており、開花する頃にはもう殆ど出尽くしているのである。・・・と言うことは、これは閉鎖花の様なもので、自家受粉の為の機構なのだろうか? シャクナゲを含むツツジ科植物の花は一般に虫媒花である。しかし、このシャクナゲが咲くのは3月中旬、コマルナハバチが来る可能性はあるが、他のミツバチやハナバチ類等の花粉を媒介してくれる昆虫が多数出現する時期よりも少し早い。このシャクナゲは、或いは、花粉媒介昆虫が少ないので、自家受粉の機構を発達させたのであろうか。 残念ながら、このクリソマニカムと言うシャクナゲ、その起源が全く分からない。そもそも「クリソマニカム」の欧文綴りが分からないのである。色々な綴りを考えて検索してみたが何れも有意なヒットは無かった。だから、調べようが無い。開花時期、花色、花穂の形等、何れを取っても少し変わったシャクナゲである。或いは、園芸品種などではなく、何処か特異な環境で進化した原種かそれに近い特殊な品種なのかも知れない。もしそうだとすれば、上の空想的推論もあながち「空想」ではない可能性も無くはない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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