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テーマ:日々自然観察(9868)
カテゴリ:昆虫(ハチ)
上はクチナシの蕾の基部を撮ったものである。赤味を帯びた青灰色のアブラムシに多くのアリが集っている。全農教の「日本原色アブラムシ図鑑」には、クチナシに寄生するアブラムシとしてクスオナガアブラムシ(アブラムシ亜科ヒゲナガアブラムシ族)とToxoptera sp.A(Toxoptera属の未記載種が2種あるのでAとBで区別している)(アブラムシ亜科アブラムシ族)が挙げられている。 この内、クスオナガアブラムシは触角が体長よりもずっと長く明らかに異なる。一方、Toxoptera sp.Aは、クチナシ専門のアブラムシらしく、また、写真のアブラムシと、腿節の色や角状管、尾片の構造が類似している。しかし、今回はアブラムシの写真は余りキチンと撮らなかったので、このアブラムシの種類に関しては明確な結論は出さず、「Toxoptera sp.Aの可能性が高い」とだけしておこう。 アブラムシとアリの他に、白い突起を持った変な虫も写っている。コクロヒメテントウの幼虫で、アブラムシを食べに来ているのである。一見、コナカイガラムシの様な格好をして居るが、これはアリなどのアブラムシの保護者を騙す擬態とされている。実際、アリはすっかり騙されている様で、このテントウムシの幼虫を攻撃することは全くなかった。
さて、肝心のアリの方である。このシリアゲアリの仲間は警戒態勢を取るとき、下の写真の様に、毒針を突き出して腹部を反らせる。それでシリアゲアリの名がある。 全国的な普通種であるオオクロアリやトビイロケアリ等が属すヤマアリ亜科のアリには針が無く、刺す代わりに腹端から蟻酸を出して敵に吹付ける。しかし、その他のアリはこのシリアゲアリの様に針で毒液を注入する。ハチと同じである。ハチとアリは同じ膜翅目だから、当然と言えば当然であろう。
ハリブトシリアゲアリにはテラニシシリアゲアリと言う類似種が居る。図鑑に拠れば、両者の違いとして、前者の方が色が赤っぽいこと、背中にある棘(前伸腹節刺)が前者では余り尖らず横から見るとほぼ三角形をなすのに対し後者では針状であること、後腹柄節背面中央が後者では縦に窪むのに対し前者では窪まないこと、等が挙げられて居る。しかし、色彩の違いは余り当てにはならないし、後腹柄節背面の窪みはこの程度の写真では判断できない。一方、前伸腹節刺の形は真横から撮った写真で何とか判断出来る。 上の写真中、白矢印で示したのが前伸腹節刺である。ほぼ三角形で針状ではない。ハリブトシリアゲアリとした所以である。 このアリは主に蜜液を餌とし、樹皮下や腐った樹木に営巣するとのこと。また、住宅地に棲息するのは一般にハリブトの方で、テラニシはもっと木の茂った環境に棲息するらしい。
最初の写真を撮った2日後に、また同じ場所を見に行った。もうアリの多くは蕾の裏の方に集まっており、撮り易い表側には殆ど居なかった。 上の写真は、最初の写真の右上と同じ部分である。最初の写真でも一番上のアブラムシは異様に腹が膨らんでいたが、2日後には明らかなマミー(Mummy:ミイラの意、アブラバチに寄生され中にはハチの蛹が入っている)になっている。その他のアブラムシも多くはマミーになっていた。シリアゲアリに守って貰っても、アブラバチの寄生からは逃れ難いのであろうか。或いは、アブラバチはかなり若齢の幼虫に産卵する様なので、アリが来る前に既に寄生されていたのかも知れない。 アブラムシと言うと、穂先にビッシリと付いているブキミな光景を思い浮かべる。しかし、我が家の庭を観察していると、群が増殖する前に捕食者に食べられてしまったり、大風に吹き飛ばされてしまったり、或いは、アブラバチに寄生されて殆ど全滅する機会の方がずっと多い。アブラムシも思っているほど楽ではない様である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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