2009/08/10(月)08:29
ウスグモスズ(雌)
一ヶ月ほど前、ウスグモスズの幼虫と思われる虫を掲載した。今日はその成虫を紹介する。居たのは同じクチナシの木である。だから、直接的な証拠にはならないが、前に紹介した幼虫は、やはりウスグモスズの幼虫である可能性が高いと言える。
クチナシの葉裏にいたウスグモスズの成虫(雌)
体長は産卵管を除いて7mm
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(2009/08/06)
上の写真の様に、葉裏にくっ付いていた。産卵管が見えるので、これは雌。体長は産卵管を除いて7mm、しかし脚は長いし触角も長いので、もっと大きく感じられる。
このウスグモスズ(Usgmona genji or Usugumona genji Furukawa, 1970)、日本以外からの報告がないにも拘わらず原産地不明の帰化昆虫とされている、奇妙な虫である。しかし、この虫の来歴その他については別の所にかなり詳しく書いたので、此処では触れない。興味のある読者諸氏は此方を参照されたい。
驚くとサッと葉表に逃げる.実際は此方を撮ったのが先
位置が高いので殆ど見えないが時折葉上から顔を出す
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(2009/08/06)
かなり敏感で、撮影しようとすると、葉表にサッと逃げる。丁度私の背の高さ位の所なので、葉表に逃げられると殆ど見えない。しかし、時折顔だけが見える(上)。しかし、これでは全身像は撮れない。脚立を取りに行って戻ってくると、もう居ない。何処へ行ったか知る由もない。
次に見付けたときは、クチナシの徒長した新梢に居た。枝を上り下りしながら、触角の掃除をしている。
クチナシの若い枝で身繕いをするウスグモスズ
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(2009/08/06)
ウスグモスズは体の輪郭は、クサヒバリと非常によく似ている。しかし、脚、特に後腿節に模様がないので簡単に区別することが出来る。何れもコオロギ上科クサヒバリ科(Trigonidiidae:ヒバリモドキ科とも呼ぶ、コオロギ科クサヒバリ亜科とする場合もある)に属し、後脛節に長い棘を列生する。
ウスグモスズの全身像、眼が黒くて可愛い
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(2009/08/06)
以前も書いたが、私はバッタの類(直翅目)がどうも好きになれない。所謂バッタ(バッタ上科:ショウリョウバッタ、イナゴ類、オンブバッタ、ヒシバッタ類)の顔を見ると不愉快になるし、キリギリス類、カマドウマ等にも好意を寄せない。また、コオロギ類も好きではない。
しかし、このウスグモスズだけは、何故か可愛いと思う。眼が黒くてパッチリしているせいだろうか?
クチナシから跳んで枯れたユリの茎を上下するウスグモスズ
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(2009/08/06)
クチナシの新梢を左手でいじくり回していると、危険を感じたのか、いきなり草むらの方へ跳んでしまった。落差は約1.5m、このウスグモスズの体長は7mmだから、人間(体長1.5m)に換算すれば約320mの飛び下りに相当するが、小さい「物体」の場合は空気抵抗がずっと大きいので大した問題にはならないらしい。
ファインダーを覗いている間に逃げられたので、普通ならマズ探し出せない。しかし、雑草多しと雖も庭の中、直に見付け出すことが出来た。今度は枯れたユリの茎を上下している。
4分後に最初見付けた場所の直ぐ近くでまたウスグモスズを見付けた
僅か4分で元に戻るとは考え難いので、別個体であろう
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(2009/08/06)
ところが、ファインダーを覗いている間に、また何処かへ跳んで行ってしまった。かなり探したが、今度はもう見つからなかった・・・。
諦めて、撮った写真の確認を少ししてから、元のクチナシの木を見て驚いた。最初に見付けた場所から数cmも離れていない所に、また、ウスグモスズが居るではないか。しかも同じ雌。時間にして僅か4分、この僅かな間に元に戻ったのであろうか? 一寸それは考え難い。とすれば、2頭居たのか・・・。
クサヒバリの様に脚に模様があれば、同一種でも斑紋の入り方にある程度の違いがあるので区別が出来るが、ウスグモスズにはその模様がない。しかし、首の辺りの微妙な色彩変化や、脚に付いたゴミの位置などを比較すると、どうやら別個体らしい。最初から2頭居たのである。
ウスグモスズの体を拡大.拡大してみると、結構毛脛!!
前脚脛節基部付近に聴覚器官らしき構造は見えない
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(2009/08/06)
ウスグモスズは前にも書いた様に、コオロギ上科ではあるが発音器を持たず鳴くことが出来ない。当然、音を聞く必要も無いので、聴覚器官も持たない。以前紹介したキリギリスに近いサトクダマキモドキには聴覚器官があり、その写真も示したが、このウスグモスズの該当部分(前脛節基部付近)にはそれらしき構造は見当たらない。
同じクサヒバリ科に属すクサヒバリ、キンヒバリなどは美声で知られている。しかし、ウスグモスズの他にもクロヒバリモドキやキアシヒバリモドキなど、同じクサヒバリ科に属すにも拘わらず発音器も聴器を持たない虫が居る。人は様々、虫も様々である。