我が家の庭の生き物たち (都内の小さな庭で)

2009/08/29(土)18:02

デオケシキスイ亜科の1種

昆虫(甲虫)(35)

 今日は、「庭を漂う微小な羽虫」の第3段である。  一昨日の夕方、もう少し暗くなってきたとき、妙な言い方だが、今までの羽虫よりも「核」のある虫がフワリフワリと漂っていた。これは一寸違うぞと言う感じがして、殆ど瞬間的に左手が動き、虫を掬ってしまった。これまでの虫とは異なり、左の掌に何かがぶつかる軽いが明らかな衝撃を感じた。  手を開いてみると、まだ動いている。逃げられるといけないので手を閉じ、コールド・スプレーを指の間から噴霧して低温で動けなくしてから(三枝先生に教えて頂いた方法)、マクロレンズで覗いてみた。前翅が短く腹がはみ出している。一見したところハネカクシに似ている。  しかし、まだコールド・スプレーのかけ方が足りないらしく、今にも飛び立ちそう。其処で、もう一度手を閉じて今度はしっかりスプレーをかけた。しかし、手を開いてみると、虫が居ない。スプレーの勢いで、指の隙間から何処かへ吹っ飛んでしまったらしい。全く何をやっているのだ・・・。そんな訳で、今日の写真は1枚だけである。 デオケシキスイ亜科の1種.体長2.1mm、ハネカクシと間違えた (写真クリックで拡大表示) (2009/07/)  しかし、この虫、本当にハネカクシか? 体長2.1mmと小さいのは良いとして(1mm位の種類もある)、先ず触角がおかしい。先端3節が膨らんで丸くなっているし、第1節と思われる部分も肥大してな変な格好になっている。それに、妙に円らな可愛い眼をしている。こんなハネカクシは見たことがない。  鞘翅(前翅)が短く見えるのは翅がカメラの方向に立っているからで、本当は腹部を隠すだけの長さがあるではないか。しかし、鞘翅の先端は切り取った様な形になっており、これで腹部全体を被うことが出来るとは考えられない。  ハネカクシ科の近縁にアリヅカムシ科と言うのがある(ハネカクシ科に入れる場合もある)。この科の連中も前翅が短く腹がはみ出している。体長は4mm以下(多くは2mm前後)と微小で、図鑑を見ると、触角や頭部の形は写真の虫とよく似ている。しかし、アリヅカムシの胸部は何れも丸く、頭部と余り変わらないほど小さく纏まっており、写真の虫の様に横に拡がって翼状になっているものはない。  よく調べてみると、ハネカクシの近縁以外にもケシキスイ科のデオケシキスイ亜科に四角い前翅を持ち腹部が露出される種類があることが分かった。デオケシキスイとは、「出尾芥子木吸」の意らしい。しかも、この科の仲間は何れも触角の先端3節が球桿となり、頭部の構造もソックリである。  図鑑を見ると、その中でもヘリグロデオキスイと言うのがよく似ており、特に腹部が上に曲がった所がソックリである。しかし、色は口の周りを除いてもっと濃く、特に、鞘翅は「ヘリグロ」の名の通り周囲が黒っぽい。まァ、何分にも小さいし、鞘翅を立てた状態の写真しか無い。デオケシキスイ亜科に属すことは間違いないと思うので、此処では単にデオケシキスイ亜科(Carpophilinae)の1種としておく。  実は、ケシキスイ科の虫を見るのは、今回が初めてである。しかし、それ程珍しい虫ではない様で、九州大学の日本産昆虫目録には161種が登録されている。保育社の甲虫図鑑に拠ると、大きな種(18mm)もあるが、多くは5mm以下、1mmのものもあるとのこと。小さいので余り目に付かないのであろう。食性は多様らしく、花、樹液、落果、キノコ、朽ち木、貯穀、腐肉などに見られる、と書かれている。しかし、こう言う虫が、我が家の庭を浮遊しているとは夢にも思わなかった。  追記:当初、この虫の正体が良く分からず、本稿の表題を「ハネカクシ科の1種(?)」としていた。しかし、投稿の翌日にケシキスイ科デオケシキスイ亜科の虫であることが判明し、それに従って、表題と本文を書き改めた。

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