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テーマ:日々自然観察(9854)
カテゴリ:クモ
実は、この手のクモは(特に)よく知らない。地面を走り回るクモには、ヤチグモ科、コモリグモ科、ワシグモ科等の他、よく知らない小さなグループも幾つかあるらしい。普段は使わない保育社の「原色日本クモ類図鑑」には科への検索表があるが、細かい形態が指標になっているので、とても使えない。其処で、頭胸部の形態に注意しながら文一総合出版の「日本のクモ」のページをめくって行く。幸いなことに、始めの方にあるヤチグモ科(Coelotidae)が写真のクモの特徴を持っていた。
「日本のクモ」には、ヤチグモ科は現在約30種が記録されている、と書かれているが、図版には9種しか載っていない。しかも、よく似ている種類が多い。しかし、その中でもメガネヤチグモ(Paracoelotes luctuosus)が一番よく似ていた。 解説の方を読むと、「人家、倉庫、神社、寺院などお建造物の周囲、壁の隅、板のつぎ目、すき間、壁の隅、窓枠の隅、植木鉢の下、石垣のすき間などに管状住居を作り、入り口に小さな棚網を張る。都会型のクモで公園や庭園などに多く、産地や樹林地にはほとんど見られない」とある。我が家の環境にピッタシではないか!!
しかし、その次にあるシモフリヤチグモも同様の環境を好み、大きさ、色彩や斑紋も似ている。調べてみると、この2種は、雌の腹の裏側にある外雌器の形状を調べないと区別が出来ないそうである。 ・・・と云う訳で、今日の表題は「ヤチグモ科の1種(メガネヤチグモ?)」として置くことにした。
しかし、このクモ、クモ相?が宜しくない。上顎の毛が顎髭の様に見え、凶暴なヴァイキングを思わせる。可愛らしさとか愛嬌と云うものが、まるで感じられない。まァ、クモの方としては遺伝子に従ってこの様に生まれ、他に選択の余地は無いのだから、クモ相が悪いと言われても困るであろうが・・・。
多くのクモには単眼が4対8個ある。このクモの眼を見ると、前中眼と前側眼がほぼ一列に並び、その後に後中眼と後側眼が、少し弧を描きながら、やはりほぼ一列になっている。各眼の大きさには殆ど差が認められない。 こう云う眼の配列や大きさは、科の特徴と言っても良く、近縁種間で差は殆ど認められない。 逆さに、各科の眼の特徴を知っていれば、科の同定に役立つ。但し、科が違っても眼の配列がよく似ている場合もあるので注意が必要。
前方中央にある前中眼は光っていないので、その位置が少し分かり難い。角度の違いもあると思うが、これは眼の構造上の違いが原因となっている可能性が高い。多くのクモでは、前中眼(主眼とも呼ばれ他の眼とは構造が違う)以外の眼(副眼と総称される)の眼底にタペータムと呼ばれる反射層を持っている。これにより副眼は真珠色に光って見えるが、タペータムを欠く前中眼は光らないのである。 タペータムは1種の集光装置で、これにより暗い所でも眼がより良く見える様になるらしい。但し、明るい所に住む昼行性のハエトリグモや、全く光の届かない洞窟に棲む種にはタペータムを持たない種が多いとのこと。以上は、吉倉眞著「クモの生物学」からの丸写しである。
最後の2枚の写真(上と下)では、クモさんは脚を体に引きつけて縮こまっている。これは、デュランタの幹の間に逃げ込んだクモさんを木の葉で突いて追い出したからで、防御の態勢である。 クモの脚は簡単にとれてしまうが、容易に再生される。トカゲの尻尾と同じで、自切によることが多い。体を脚で囲んでいれば、攻撃を受けて外側の脚に被害が出ても、体は守れるし脚はやがて再生されるから、こう云う格好をするのであろう。
此処暫く、一段と寒い毎日である。しかし、昨年掲載した枝垂梅は今満開だし、まだ一度も紹介していないジンチョウゲやボケの蕾も膨らんできた。これからは、もう少し更新の頻度を上げることが出来そうである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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