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テーマ:日々自然観察(9652)
カテゴリ:昆虫(アブ、カ、ハエ)
2年前のツヤヒラタアブは体長5.5mm、今日のは8.3mm、かなり大きさが違う。大型なので、飛んでいるところを見ると、小さめのホソヒラタアブの様な感じがする。ツヤヒラタアブ類は、留まる時に必ず翅を畳む。ホソヒラタアブは普通は翅を開いて留まるが、気温の低い時には翅を閉じるので、少し遠くから見ると区別が付き難くなる。 今年はこの大きなツヤヒラタアブをまだ寒い頃から時々見ている。この辺りでは、冬や早春に見ることのない種類なので、或いは、同一個体なのかも知れない。こんな狭い庭に飽きもせず、冬の間ず~と居るとは考え難いのだが・・・。
実は、今日の個体は以前、もう一つのWeblogで紹介した「ツヤヒラタアブの1種」と細部に至るまで同じである。此方の方は、以前、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」で見て頂いた。ハナアブに詳しいPakenya氏の御話では、「(ツヤヒラタアブ類は)関東地方の平野部には4種が普通に見られ、全種顔面は黒く、似通った黒地に黄色の斑紋を持ちますが、斑紋の形や大きさは相当な変異の幅があるようで、斑紋で区別することは危険なようです.確実には、腹部の腹板の形状を見る必要がありますが、全ての脚が暗色部を持っていないので、ご推察のM. orientaleツヤヒラタアブの♀と思われます」とのこと。今日のヒラタアブを、「ツヤヒラタアブの1種」ではなく、「ツヤヒラタアブ」と断定した所以である。
ツヤヒラタアブは、ハナアブ科(Syrphidae)ヒラタアブ亜科(Syrphinae)ツヤヒラタアブ族(Melanostomatini)に属す。ホソヒラタアブやキタヒメヒラタアブ等、黒と黄色の模様があるヒラタアブの多くは、ヒラタアブ族(Syrphini)所属である。この両族で、生態がどう異なるのか良く分からないが、ハナアブの研究者である市毛氏に拠ると、ツヤヒラタアブ族のヒラタアブはイネ科の花穂の花粉を好む様で、他のヒラタアブ類でイネ科の花穂に来るのはクロヒラタアブ類など数種しかいない、とのことである。成虫の食性は多少違いがあるらしい。 幼虫はどうか。多くのヒラタアブ類の幼虫はアブラムシやダニ等を補食する。このツヤヒラタアブの幼虫は何を食べるのか調べてみたら、Melanostoma属の幼虫が捕食するアブラムシの種類や補食速度に関する文献が見付かった。ツヤヒラタアブもやはりアブラムシを食べるらしい。
上に書いた様に、ハナアブ科はラテン名ではSyrphidae、ヒラタアブ亜科のラテン名はSyrphinaeである。ラテン名の綴りは語幹が同じ(idaeは科を示す語尾、inaeは亜科の語尾)だが、和名の方はハナアブとヒラタアブで異なる。ラテン名の語幹はSyrphus(ヒラタアブ)属から来ており、オオフタホシヒラタアブやマガイヒラタアブ等がこれに属す。だから、Syrphinaeをヒラタアブ亜科とするのは良いが、Syrphidaeは本来ハナアブ科ではなくヒラタアブ科とすべきところである。しかし、名前としてはハナアブの方が一般的なのでハナアブ科としたのであろう。 また、ハナアブやヒラタアブは、何れも双翅目短角亜目環縫短角群に属す広義の「ハエ」であり、アブ類が属す直縫短角群ではない。それ故、保育社の原色日本昆虫図鑑では「ハナアブ」を「アブバエ」、「ヒラタアブ」を「ヒラタアブバエ」と置換えた新称を使用したが、日本語としては何とも落着きが悪く、結局普及しなかった。和名の付け方は難しい。
今日は、早朝は真冬並みの気温であったが、一点の雲もなく、春の陽射し照らされて次第に暖かくなって来た。明日はもっと暖かくなるらしい。徐々に花弁を開き始めていたサクラもこれで一気に満開になるに違いない。今週末辺りが見頃となりそうである。
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