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テーマ:日々自然観察(9860)
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ガガンボの様な、体が細く脚が異様に長い双翅目昆虫は色々な科に存在する。ガガンボ科の他に、近縁の科としてはシリブトガガンボ科、ヒメガガンボ科、オビヒメガガンボ科等があるが(これらを全てガガンボ科に含める研究者も居る)、一見非常に良く似ているにも拘わらず、それぞれ下目のレベルで異なる全く遠縁のガガンボダマシ科、コシボソガガンボ科、アミカ科等と云うグループもある。全く困った連中としか言い様がない。
これらの科の違いは、主に翅脈をみれば大体の見当が付く。しかし、1つの科の中でも翅脈にかなりの変化があるので注意が必要。写真のガガンボの翅脈(写真の解説を参照)を見ると、どうやらヒメガガンボ科の様である。 ヒメガガンボ科には、口吻が体長よりも長く、しかも真っ直ぐなクチナガガガンボと云う種がある。しかし、口吻の細部を見ると、これとはかなり違う。 北隆館の新訂圖鑑の解説を読むと、口吻の長いヒメガガンボ科のグループは他にも幾つか存在する。しかし、図版を見ても殆ど何も分からない。お手上げである。 其処で、例によって双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のお世話になることと相成る。此処には、達磨大師様と云うガガンボの権威が居られるのである。
達磨大師様は、一年程まえ白神山地の研究室に転勤され、研究棟の建設とか今かなりお忙しい筈なので、気長に御返事を待つつもりで居た。ところが、何と一時間も経たない内に御返答を賜った。 「交尾器の詳細がわからないので「絶対に」とはいえませんが、ヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のGeranomyia gifuensis Alexander, 1921 に一票.本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」との御答えであった。 北隆館の圖鑑に拠れば、このGeranomyia属に属すヒメガガンボは「口吻が鳥のクチバシ状に突出している」そうである。
御話に拠れば「本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」なのだから、殆ど決まったも同然の様な気がするが、大師様は「・・・に一票」としか書かれていない。 これは、ガガンボ類(ガガンボ科とその近縁科)の研究が圧倒的に不足している(研究者が少ない)ことに起因している思われる。「一寸のハエにも五分の大和魂・改」での情報に拠ると、ガガンボ科の代表的な属の一つであるTipula属では、日本で記録されている種は約100種だが、実際には400種以上が生息するとのこと。この様な事情はTipula属に限らず、ガガンボ類全体に通じると思われる。既知種よりも、未記載種や日本未記録種の方がずっと多いのである
ヒメガガンボ科(Limoniidae)は九大目録ではヒメガガンボ亜科(Limoniinae)に入っているが(ガガンボ類の上位分類には議論が絶えない様である.近縁の科として上に挙げた数科を全てガガンボ科に含める研究者もおり、九大ではそれを採用している)、亜種も含めて488もの記録が出て来る。 また、Geranomyia属(九大目録ではLimonia属の亜属として扱われている)には、7種8亜種が記録されている。この属(亜属)がどの程度研究されているのかは分からないが、Tipula属と同じ程度とすれば、他に20種位は未記載種や日本未記録種が居る可能性がある。単純に、Geranomyia gifuensisと決めつける訳には行かないのである。
・・・と云う訳で、今日の虫はヒメガガンボ科(Limoniidae)ヒメガガンボ亜科(Limoniinae)の「Geranomyia gifuensis?」と、「?」を付けて置くことにした。尚、Geranomyiaを亜属とした場合の学名は、Limonia (Geranomyia) gifuensisとなる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
>既知種よりも、未記載種や日本未記録種の方がずっと多いのである
植物の分類も大変だ…と思っていましたが、昆虫類は動き回るし、なお大変なんですね。人間の生活に直接かかわり無い昆虫には、研究者も少ないのでしょう。 昨日は、居間に思わぬ「ガ」の侵入者がありました。 アーチャーンさんだったら、カメラを持ち出して冷静に撮影されるのだろう…と脳裏をかすめながら、掃除機で吸い込みました!(思い出して日記を書きながら、また背中が何度もゾクゾク(>_<) (2010.11.15 20:42:02)
『あ、ガガンボだ!』と、感覚的にしか見ていない私などお恥ずかしい限りですが、それでも、よく見るガガンボとはちょっと違う顔立ちのように思いました。
研究もあまり進んでいないとのこと、それでもちゃんとわかる方がいらっしゃるのはすごいですねー。 (2010.11.15 21:25:43)
lemidoriさん
>>既知種よりも、未記載種や日本未記録種の方がずっと多いのである > >植物の分類も大変だ…と思っていましたが、昆虫類は動き回るし、なお大変なんですね。人間の生活に直接かかわり無い昆虫には、研究者も少ないのでしょう。 ----- 昆虫は数の上で植物の10倍以上の種があり、しかも3mm以下の種類が沢山あります。植物は種間雑種が生じ安いのが面倒ですが、昆虫の場合は未記載種、未記録種がゴマンとあります。特に双翅目(ハエ、蚊、虻)は、全体でも既知種より未知種の方がずっと多い様です。日本の双翅目のプロ(大学や博物館などで給料を貰って仕事している人)は、僅か10人程度です。未知種は1万種以上といわれていますから、10人では100年経っても解明出来ないでしょう。 >昨日は、居間に思わぬ「ガ」の侵入者がありました。 >アーチャーンさんだったら、カメラを持ち出して冷静に撮影されるのだろう…と脳裏をかすめながら、掃除機で吸い込みました!(思い出して日記を書きながら、また背中が何度もゾクゾク(>_<) ----- 我が家の辺りでは、街灯の周囲に蛾を見ることはまずありません。多分、蛾の来ない様な周波数の蛍光灯を使っているのだと思いますが、余りに居ないので大変寂しく思っています。 (2010.11.16 08:02:57)
marinesnow2525さん
>『あ、ガガンボだ!』と、感覚的にしか見ていない私などお恥ずかしい限りですが、それでも、よく見るガガンボとはちょっと違う顔立ちのように思いました。 ----- ヒメガガンボ科にはこう云う顔が多い様ですが、何分にも種類数が多いので、一般的にどうなのか明言出来ません。 >研究もあまり進んでいないとのこと、それでもちゃんとわかる方がいらっしゃるのはすごいですねー。 ----- 大きなグループなので、研究者は居ます。達磨大師の本名は中村剛之氏で、弘前大学出身の様ですが、九大名誉教授の三枝先生の弟子を自称されている様です。 (2010.11.16 08:14:57)
1センチ以内の蚊のような昆虫にも ガガンボの仲間がいるのですね~ 花の蜜を吸うガガンボ ちょっと見るだけでは、蚊に見えます。
ヒメガガンボ これから気をつけて観察して発見してみたいです^^ (2010.11.16 08:15:59)
るる555さん
>1センチ以内の蚊のような昆虫にも ガガンボの仲間がいるのですね~ 花の蜜を吸うガガンボ ちょっと見るだけでは、蚊に見えます。 >ヒメガガンボ これから気をつけて観察して発見してみたいです^^ ----- ガガンボ上科の他、本文に書いたガガンボダマシ科、コシボソガガンボ科、アミカ科等、更にタマバエ科その他にも、肉眼的にはガガンボと区別し難い連中が居ます。精密な写真を撮らないと、科すら分かりません。 (2010.11.16 08:38:24) |