実は、此処数年間使っていたマクロレンズが、先月の中程に故障してしまった。マクロレンズは、別に仕事に使っているのがある(カメラもレンズも別メーカー)ので、カメラ本体と一緒に其方に切り換えていたのだが、お気づきになった読者は居られるだろうか。
先日、その修理に出していたメーカーから電話があった。修理に、私にとっては予想外の費用が掛かるとのこと。暫くどうするか悩んだが、もうその故障したレンズを付けていたカメラ本体やそのカメラ用の他のレンズも一切合切全部処分して、仕事用のカメラ1系列のみにすることにした。
そうすると、問題が1つ生じる。この仕事用のカメラのマクロレンズは、以前の実験では、テレプラスを使って超接写をすると著しく解像度が落ちるのである。しかし、暫く経ってから、これはレンズの絞値表示の違いに拠るらしいことに気が付いた。
今までこのWeblog用に使っていたマクロレンズは開放時の焦点比(F値)が2.8であるが、等倍接写状態にすると5.6になってしまう(絞り開放で等倍接写をすることなど有り得ないので、暫く気が付かなかった)。もう一方のレンズでは、等倍にしてもF値は変わらない。これが誤解の基であった。
少しややこしい話になるが、普通に撮影する時の露出は、被写体が無限遠点(撮影倍率0倍)にあると仮定してあり、被写体が近づくと露出を増やさなければならない。露出倍数は(撮影倍率+1)の2乗に比例する。通常のレンズでは最接近しても撮影倍率は精々0.2程度だから(0.2+1)の2乗=1.44で、補正をしなくても大した問題にならない。しかし、等倍接写では(1+1)の2乗=4、即ち露出倍数は4倍となる。これはF値では2段分だから、無限遠点で開放時にF2.8であれば、等倍接写時にはF5.6になったのと同じである。
どうも、故障したマクロレンズは、この露出補正をした絞値を表示していたらしいのである。だから、少し絞り込んだ状態(例えばF22)で撮影した場合、実際の絞りの状態はF11だと考えられる。
其処で、最近使用している仕事用のマクロレンズの絞を大いに開け、テレプラス×2を挟んで撮影してみた。下の写真は絞値8(F8)で撮影したものである。最大に拡大表示すると、ピクセル等倍(横幅1000ピクセル)になる。

ワタアブラムシの無翅雌.テレプラス×2を使って約2倍で撮影
体長1.4mm.右上に見えるのは若齢幼虫であろう
(写真クリックでピクセル等倍)
(2010/11/20)
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被写体は、コスモスの花にいた
ワタアブラムシ(
Aphis gossypii)で、体長1.4mm、先日「
サトクダマキモドキ(初齢幼虫:10月19日出現)」の脇に写っていたのと同じ種である。その記事の2枚目の写真を見ると、背中が縞模様に見えるからまだ幼虫らしい。今日の写真はその成虫である。
ワタアブラムシは以前掲載したことがあるので、虫自体については
其方を参照されたいが、誤解を避ける為に、丁度今頃話題になる所謂「
ワタムシ」とは全く無関係で、アオイ科のワタ(綿)に付くのでその名が付いた(実際は非常な広食性)ことだけは書いておこう(ワタアブラムシはアブラムシ科:Aphididae、アブラムシ亜科:Aphidinaeに属し、所謂ワタムシは主にタマワタムシ科:Pemphigidae)。
さて、上の写真の出来映えだが、ピクセル等倍でこの程度なら充分使える。図鑑に拠れば、尾片には5本程度の毛があるそうだが、残念ながら見えない。しかし、これは背景が真っ白なせいであろう。
これで超接写に関しても問題なしと相成り、安心してカメラを1系列にすることが出来た。万歳万歳(板垣征四郎大将は、最後に「まんざい」と言ったそうだ)。