我が家の庭の生き物たち (都内の小さな庭で)

2010/11/29(月)09:33

ヤノイスフシアブラムシの幼虫(超接写:約4倍)

昆虫(アブラムシ)(19)

 先日、今まで使っていたマクロレンズが故障して、接写システムを変更した話をした。新しいシステムでもテレプラス×2を挟んで充分使い物になる(撮影倍率2倍弱)ことを、ワタアブラムシを撮影して示した訳だが、そうなると人間は卑しい。更に欲が湧いて、これにクローズアップ・レンズを付けてもっと高倍率にしてみよう等と考えてしまう。 100mmマクロレンズで等倍接写したヤノイスフシアブラムシの幼虫 背景の葉裏に生えている毛で、虫の毛は良く見えない (写真クリックでピクセル等倍) (2010/11/26)  クローズアップ・レンズの5番と3番の2枚をレンズの先端にねじ込んで撮影すれば、撮影倍率は約2倍になる。だから、テレプラス×2とクローズアップ・レンズ2枚を併用すれば、倍率は凡そ4倍になる筈である。  実は、先日の写真を撮った時に、一寸これをやってみたのである。しかし、焦点深度が浅過ぎて焦点合わせは殆ど不可能、と云う感じで、余り真面目に考えずに「無理だ」と思ってしまった。 テレプラス×2を挟み、F6.3で撮影.倍率は1.8倍 解像度が高く毛が管状になっているのが分かる (写真クリックでピクセル等倍) (2010/11/26)  だが、手持ちで焦点合わせが殆ど不可能でも、据え物撮りならば、テーブルに肘をついてカメラを安定させることが出来る(一眼レフは機動性が最大の特徴なので、三脚は使わない主義)。考えている内に段々とその気になって来て、遂にその実験をしてみることと相成った。  4倍もの撮影となると、被写体に何を選ぶかを考えなくてはならない。細微な構造を持つ被写体(当然生き物)である必要がある。手近にいる生き物で思いついたのは、写真家の糸崎公朗氏のWeblog「路上ネイチャー協会」に載っていたヤノイスフシアブラムシの幼虫(或いは無翅成虫)である。これならば、我が家の外庭のコナラにゴマン、どころか10万も20万も居る(今年は猛暑のせいか捕食者が非常に少ない。特に暑さに弱いテントウムシは殆ど居ない)。  拙Weblogでも、ヤノイスフシアブラムシ(Nipponaphis yanonis)の有翅虫と幼虫を3年前に掲載している。成虫も幼虫も普通のアブラムシとはかなり違う形をしているが、アブラムシ自体についての話は3年前の記事を参照して頂きたい。 同じくテレプラスを使い、F8で撮影 F6.3の写真より解像度が低い (写真クリックでピクセル等倍) (2010/11/26)  さて、この幼虫の何処が面白いかと云うと、その刺毛(毛)である。これが、何と毛状ではなく管状をしているのである。このことは糸崎氏のWeblogで初めて知った(こんなアブラムシは他に知らないが、残念ながら全農教「日本原色アブラムシ図鑑」の解説には何も書かれていない)。今回の約4倍の接写装置を使って、この管状の毛を見てみよう、と云う訳である。  今回は、倍率の変化を実感して頂く為に、全て原画からの拡大率を同一にした。何れの写真も原画で横幅1000ピクセル、記事の写真は全て横幅500ピクセルに縮小してあるので、最大に拡大するとピクセル等倍、丁度記事の2倍(面積では4倍)となる。  尚、被写体の幼虫は少し小さめで、体長約0.97mmである。 テレプラス×2とクローズアップ・レンズ5番+3番を併用 撮影倍率は正確には4倍ではなく3.5倍.F8で撮影. 毛がホースの様な管状をしているのが良く分かる 虫体のかなりの部分に焦点が合っていて見易い (写真クリックでピクセル等倍) (2010/11/26)  各写真の解説に書いてあるが、最初の写真は100mmマクロレンズ単体の等倍接写写真。倍率は当然1.0倍である。周りがゴチャゴチャしているせいもあって、虫に生えている毛が良く見えない。変なアブラムシの幼虫なので分かり難いが、頭は左側である。  2番目はテレプラス×2をレンズとの間に挟み、最大倍率にして撮影したもので、倍率はスケールを撮影した別の写真から計算すると1.8倍、毛が管状になっているのが一応分かる。絞りをF6.3にしてあるせいか、解像度が高い。  3番目は、F8に絞って撮影した。解像度はF6.3に比してかなり落ちる。F11では、解像度の低下が著しく、高精度の写真としては使用に耐えないと判断した。 同じ条件でF6.3で撮影.焦点深度が浅過ぎて虫体に焦点を 合わせた写真は使えなかった.虫体より手前に焦点が合った 毛が管状であることが良く分かる写真を選んだ (写真クリックでピクセル等倍) (2010/11/26)  最後の2枚が、クローズアップ・レンズの5番と3番を重ねて前に付け、テレプラス×2と併用した写真である。撮影倍率はスケールと比較すると4倍ではなく、3.5倍であった。4番目の写真はF8で撮影。毛が管状になっているのが良く分かる。頭部(左)は深度外になって良く見えないが、まァ、虫全体の雰囲気は分かる。  最後の写真はF6.3で撮影。虫体に焦点を合わせた写真は深度が浅過ぎて使い物にならなかった。其処で、少し手前の管状の毛の先端に焦点が合っている写真を載せることにした。断面が円形をしているのが良く分かるであろう。虫体は完全に焦点深度外で、ボヤボヤである。  F11でも撮影してみたが、明らかに解像度が低下しており、掲載する必要なしと判断して、省略した。  こうして実験してみると、このマクロレンズ+テレプラス×2+クローズアップ・レンズの組み合わせでは、F8辺りで撮るのが最適と言える(F8の1/3前のF7.1、1/3後のF9では実験していない)。  なお、クローズアップ・レンズを使用すると、絞り込みによる焦点移動が生じる。テレプラス×2と併用した場合は、F8に絞るとファインダーで焦点の合っていた面より約1mmほど後の面に実際(CCD上)の焦点が合う。撮影する際は、焦点が合ったと思った位置から1mm引くか、或いは、1mm手前に焦点を合わせてシャッターを切らなければならない。

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