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2011.01.31
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カテゴリ:昆虫(蛾)


 今年は例年に較べてかなり寒いが、今朝はまた一段と寒かった。我が家の庭に於ける7時の気温は-2℃、6時頃は-3℃位であったらしい。近来にない冷え込みである。気象庁発表による今日の「東京」の最低気温は-1℃になっているが、これは都心の大手町での観測で、畑なども所々にあるこの辺り(東京都世田谷区西部)は「東京」よりもかなり寒いのである。

 さて、今日はやっと今月4回目の更新、最近はすっかりサボリ癖がついていしまった。しかし、調べてみると、一昨年の12月はたった2回だからそれよりは多少マシとは言える。

 今日は、これまで延々と掲載してきたオオタバコガ(Helicoverpa armigera)の蛹と成虫を紹介する。



オオタバコガの蛹1


オオタバコガの蛹.上から背面、腹面、側面.頭は右

黒い斑紋は腹部第2~7節までの気門

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/31)

 最初の写真は、これまで紹介して来たのとは別の個体の蛹である。写真の枚数が多くなると必然的にHTMLのタグが多くなり、文字制限に引っ掛かってしまうので、3枚を合成して1枚にした。言うまでもないが、頭は右である。

 一番上が背面、真ん中が腹側、下は横から見た姿。側面に見える黒い突起は気門で、腹部第2節から第7節の各節に1個ずつ合計6個見えている。幼虫では腹部第1節から第8節までの8個の気門があるのだが、蛹では腹節第1節の気門は後翅に隠れて見えない。また、第8節の気門は痕跡的で、3番目の写真に筋状の裂け目として写っている(第8節から第10節の3節は一つに癒合している)。

 腹部より前方に胸部第3~1節があり、第3、2節の側方に広がるのは翅で、後翅(第3節)は前翅(第2節)に隠れて一部しか見えない。幼虫では胸部第1節に気門があるが、蛹では1節と2節の間にあり、背面と側面の写真にそれが見える。

 その前方は当然頭部で、背面からは極く一部しか見えない。しかし、腹面から見ると色々とゴチャゴチャした構造があるのが分かる。


オオタバコガの蛹2


オオタバコガの蛹腹面の拡大.かなりややこしい構造

略号については本文を参照(Lf1は重複)

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/31)

 腹面の前部を拡大してみた。略号は保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」の図にあるもので、Ant:触角、Cl:頭楯、E:眼、Hs:吸管、L1:前脚、L2:中脚、L3:後脚、Lf1:前腿節、Lp:下唇鬚、Lbは説明がないが多分上唇(labrum)であろう(普通はLbrと略す、Lbiならばlabiumで下唇)。



オオタバコガの蛹3


尾部の拡大.先端の1対の突起は尾突起と呼ばれる

腹部第8節に裂け目状の気門が見える

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/31)

 また、尾端には針状の突起が1対ある。これは尾突起と呼ばれるもので、これで蛹を物体に固着させるのだそうである。

 以上、Web上には蛾類蛹の外部形態に関する情報が少ない様なので、上記図鑑にある図を参考に説明を試みてみた。


オオタバコガ1


羽化した成虫(上の蛹とは別個体).もっと黄色かったと思うのだが

胸部の毛の色など、かなり妙な色に写っている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/24)

 さて、次は成虫の写真である。これは、これまで3齢を除いて2齢から6齢まで紹介して来た個体が羽化したものである。胴体が太くヤガ科(Noctuidae)らしい格好をしている。タバコガの成虫とよく似ているが、後翅外側(写真では下側)にある黒色帯が幅広く外縁にまで達しているのがオオタバコガで、タバコガではこれが外縁に完全には届かないのが普通であり、更にこの黒色帯の内側に細い筋がある。また、オオタバコガでは、前翅外縁の内側にある暗色帯(亜外縁線)の輪郭がハッキリしないことが多いが、タバコガでは明確でギザギザしている。


オオタバコガの蛹殻


上の成虫の蛹殻.小さな空間を作ってその中で蛹化している

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/24)

 土中に潜った幼虫が何処でどの様にして蛹になったかは確認しなかった。羽化してから分かったことだが、プラスティックのコップの底に小さな空間を作り、その中で蛹になっていた。上の写真は、羽化後にその部分を剥がして撮影したものである。

 コップにはさらさらした粒状の軽い土を入れてあり、その中でこの様な空間を作るのは土が崩れて少し難しいのではないかと云う気がする。終齢幼虫の記事で、食べるのを止めてから「ビチ」もしないで直ぐに土に潜ってしまったと書いたが、或いは、土中でビチをし、その水分を使って、この様な空所を作るのかも知れない。


オオタバコガ2


最初に示した蛹が羽化した成虫.模様が余りハッキリしない

この個体も胸部の色など記憶と違う色になっている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/26)

 上の写真は、最初に示した蛹が羽化したものである。前翅の模様が余り明確でない。オオタバコガの成虫は、幼虫に劣らず色彩の変異が大きく、斑紋が良く分からない個体も多いが、タバコガでは変異は比較的少ないとのこと。


オオタバコガ3


同一個体を正面から見た図.鼻面に見える一対の

小さな穴のある構造は下唇鬚であろう

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/26)

 オオタバコガは蛹越冬であるが、かなり遅い時期まで活動し、耐寒性が強い。成虫写真の最初の個体は表に出したら直ぐに飛んで行ってしまったし、2番目の個体は、余り動かない様に冷蔵庫に入れて充分「冷やして」から写真を撮ったのだが、外気に出して数分も経たない内に翅を震わせ始め、その1分後には飛んで行ってしまった。そう云う訳で、成虫の写真は充分に撮ることが出来なかった。


オオタバコガ4


オオタバコガの横顔.下唇鬚は飛び出しているので焦点外

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/26)

 成虫写真の最初の個体は10月23日に土に潜り、11月24日の朝には羽化していた。もう既に飛べる状態になっていたところを見ると、23日の晩に羽化したものと思われる。幼虫期は僅かに13日であったが、土中に潜ってから羽化するまでは丁度1ヶ月、31日を要したことになる。もう一方の個体も1日遅れて10月24日に土中に入り、11月25日の朝には羽化してバタ付いていたから、これも土中で同じ時間を過ごしたことになる。尚、土に潜ってから蛹になるまでの日数は不明である。


 以下に、これまでのオオタバコガ成長記録の一覧を示しておく。

  幼虫の齢   掲載日       撮影日       備考
   2齢   2010/11/26   2010/10/12
   3齢   2010/12/01   2010/10/14   他とは別個体
   4齢   2010/12/11   2010/10/14
   5齢   2010/12/15   2010/10/17
   6齢   2011/01/17   2010/10/21







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最終更新日  2011.01.31 20:21:06
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