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テーマ:日々自然観察(9868)
カテゴリ:昆虫(アブ、カ、ハエ)
2日後、またクロヒラタアブの幼虫が花の上で日向ぼっこをしていた(上の写真)。成虫は日向ぼっこが大好きだが、幼虫も日向ぼっこが好きなのか? 或いは、日に当たらないとヴィタミンDが不足するのかも知れない。 上の写真で、黒と白の矢印で示した先に、クロヒラタアブの幼虫が居る。全部で5頭だが、勿論、見えないところにもまだ居る。
しかし、2日前は7mm程度だったのが、2日で10~12mmに成長している。蛹化直前と云う感じ。 実際、既に蛹になったものも見つかった(次の次の写真)。
花の下で、2頭が仲良く?している場面も見つけた(上)。クロヒラタアブの幼虫は共食いをすることもあるので、こんな光景は珍しいのではないだろうか。因みに、細長い方が頭なので、上の写真では互いに「顔」を向け合っていることになる。 これまでの経験によると、蛹になってから確保したヒラタアブ類の羽化率はかなり低い。50%を越えたことはないと思う。コバチ類が「無数」に出て来るか、その儘干からびてしまうことが多い。ヒラタアブ類は蛹になってからコバチ類に寄生される、と何処かで読んだ。其処で、もう蛹化も近いし、見つけた個体(幼虫7頭に蛹1個)は全部飼育することにした。
ところで、餌となるアブラムシは・・・と見ると、もう殆ど居ない。下の写真は、辛うじて残っているアブラムシを見つけ出して撮ったもの。背景になっている茎に見える白っぽい粒々は中身を吸われたアブラムシの殻である(一部に脱皮殻もあろう)。 アブラムシの居た茎の数は50本位で、各茎に50~100頭位のアブラムシが居たと思う。・・・と言うことは、全部で3000~4000位のアブラムシが、数日で殆ど全滅してしまったのである。 この時見つけたクロヒラタアブの幼虫と蛹は全部で8個体、他に、ホソヒラタアブの幼虫も数頭見つけた。勿論、見えないところにもかなりの数の幼虫(特に小さい個体)が居ただろうが、しかし、天敵としてのヒラタアブ幼虫の威力、スザマジイものである。
このアブラムシ、全農教のアブラムシ図鑑で調べてみると、どうやらミカンミドリアブラムシ(Aphis citricola)らしい。体全体や脚、角状管、尾片等の色、角状管と尾片の形態、触角の長さなどが一致する。
同図鑑に拠れば、このアブラムシはミカン属、シモツケ属、リンゴ属、ボケ属、その他多くの木本植物や草本に寄生する。かつてアブラムシは寄主の違いで分類されたことが多いので、このアブラムシも、学名和名共に、沢山の名前を持っていた。 ユキヤナギアブラムシ(A. spiraecola)の名もよく知られているが、同図鑑に拠れば、これは本種のシノニム(Synonym:異名)とのこと(尚、九州大学の日本産昆虫目録を見ると、ミカンミドリアブラムシの名は見当たらず、ユキヤナギアブラムシがA. citricolaとして載っている)。
幼虫7頭と蛹1個を確保したが、幸いなことに、全個体が無事に羽化した。飼育の甲斐があったと言える。クロヒラタアブはもう既に紹介済みだが(実は、幼虫も蛹も・・・)、写真の幼虫がクロヒラタアブであったことの証拠として、雄雌1頭ずつを並べて掲載することにした(酷似種にニッポンクロヒラタアブ(B. nipponensis)があるが、珍種の様だし関東では記録が無いのでその可能性は考慮していない)。 左が雄、右が雌。体長がほぼ等しくなる様に倍率を調整してある(実際の体長は、雌が約11.0mm、雄が11.5mmで殆ど違わない)。小楯板や頭部胸部は雄の方がかなり大きい。逆に言えば、雌は腹部の比率が大きい訳だが、腹には卵、或いは、その元(卵原細胞や卵母細胞)が詰まっている筈なので当然であろう。 尚、今回はクロヒラタアブの幼虫や蛹の詳細に付いては紹介しなかった。実は、昨年の暮れにその細かい構造や捕食行動をシッカリ撮影してある。しかし、余りに詳しく写真を撮り過ぎたので、どう整理するかがまだ決まっていない。その内、掲載すると思うが、何時のことになるか、自分でも良く分からない。 [18日に掲載予定であったが、一部の写真が未調整であった為、19日の朝に掲載することになった。文頭の「今日」は昨日(18日)である] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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なるほどそういう訳でノースポールを植えられたのですね。
しろい抜け殻はなかみを吸われた痕。そうなんですか。知らなかったです。ヒラタアブのおかげでノースポールは枯れる心配はなくなったわけですね。 身近なところでもこんな食物連鎖があるんですね。感激いたしました。 (2011.05.19 10:25:22)
下から3・2枚目の写真で「!!!!」でしたが
こんな大量のを食べつくすクロヒラタアブの幼虫、、うちにも是非お越し頂きたいです。 アーモンドの若葉に付くのはグレイの厭~なアブラムシで 私が指で潰しております(>_<) しかし「ミカン」や「ユキヤナギ」と命名され でもキク科のにも付くとは…選びませんね、、 ってその方が生きるのには都合が良いのでしょうね。 その凄い生命力をこれまた平らげるクロヒラタアブ、、 それにまた寄生するコバチ…う~ん、、 ところで「幼虫は共食い」をするとありますが アブラムシは「身を吸われた」との記述も。 すると幼虫の「口」はどうなっているのでしょう? もしや「共食い」てのも「ちゅーちゅー」と中身を??(おぞっ!) (2011.05.19 12:48:52)
クロヒラタアブの捕食行動は、どんなでしょう~
幼虫がアブラムシを 成虫が花粉を食べるのでしょうか。 お花からミカンミドリアブラムシ 幼虫など楽しく拝見させて頂きました。ありがとうございます♪ (2011.05.19 16:56:06)
クーン43さん
>なるほどそういう訳でノースポールを植えられたのですね。 ----- 他に花が無いせいもあります。何種類か植えた洋花の一つです。 >しろい抜け殻はなかみを吸われた痕。そうなんですか。知らなかったです。ヒラタアブのおかげでノースポールは枯れる心配はなくなったわけですね。 ----- 実は、その後うどん粉病が急速に拡がって枯れてしまいました。 >身近なところでもこんな食物連鎖があるんですね。感激いたしました。 ----- 花を切って飼育箱の中に入れておくと、屡々ヒラタアブ類の幼虫が出て来ます。以外と多くの花に潜んでいる様です。 (2011.05.20 09:47:00)
snowrun29さん
>下から3・2枚目の写真で「!!!!」でしたが >こんな大量のを食べつくすクロヒラタアブの幼虫、、うちにも是非お越し頂きたいです。 ----- ヒラタアブの幼虫は一般に広食性なので、何処からか捕まえてくれば、問題のアブラムシを食べてくれます。 >しかし「ミカン」や「ユキヤナギ」と命名され >でもキク科のにも付くとは…選びませんね、、 >ってその方が生きるのには都合が良いのでしょうね。 ----- 寄主転換を行う様で、キクに付くのは本来は夏の寄生植物なのですが、既に付いていました。 >その凄い生命力をこれまた平らげるクロヒラタアブ、、 >それにまた寄生するコバチ…う~ん、、 ----- 飼育して居たホソヒラタアブの蛹からコバチが沢山出て来ました。その内、掲載するかも知れません。 >ところで「幼虫は共食い」をするとありますが >アブラムシは「身を吸われた」との記述も。 >すると幼虫の「口」はどうなっているのでしょう? >もしや「共食い」てのも「ちゅーちゅー」と中身を??(おぞっ!) ----- 唾液を流し込んで消化し、口吻を獲物の体内に挿し入れて吸収するようです。昨年撮影してあるので、いずれ・・・。しかし、口吻(黒い)を深く挿し入れるのはほんの一瞬なので、中々旨く撮影出来ません。 尚、フタスジヒラタアブの幼虫は時に鱗翅目の幼虫を補食しますし、他にもアブラムシ以外を捕食する種類が居ます。 (2011.05.20 10:11:03)
るる555さん
>クロヒラタアブの捕食行動は、どんなでしょう~ ----- その内紹介の予定ですが、凶暴と云う感じです。 >幼虫がアブラムシを 成虫が花粉を食べるのでしょうか。 ----- 多くのヒラタアブではその通りです。アブラムシ以外を食べる種類もあります。 >お花からミカンミドリアブラムシ 幼虫など楽しく拝見させて頂きました。ありがとうございます♪ ----- 写真が多いと掲載に時間がかかります。現在の状況では写真の枚数が少なく、且つ、種の判別に問題のない虫の新顔が出現すれば掲載頻度が増すのですが・・・。 (2011.05.20 10:15:24)
>全農教のアブラムシ図鑑
というのがあるんですね。 恐い物見たさ…という気もしますが、中身を想像しただけで背筋がぞぞぞぞっとしました(~_~;) 「ミカンミドリアブラムシ」のプリプリした写真! 見事ですね。が、条件反射で思わずプチュっと潰したくなります…。 我が家でも、バラやアンズ、アブラムシが目立ってきました。クロヒラタアブの幼虫がこんなに活躍してくれていたとは、心強い! これまでもそしてこれからも大事にしなくては。 アブラムシを食べるのはテントウムシが有名ですが、うちの庭では、クロヒラタアブの幼虫のほうがずっと数が多いように思います。 (2011.05.22 16:13:24)
lemidoriさん
>>全農教のアブラムシ図鑑 >というのがあるんですね。 >恐い物見たさ…という気もしますが、中身を想像しただけで背筋がぞぞぞぞっとしました(~_~;) ----- それ程ゾッとする様な図鑑ではありません。 >「ミカンミドリアブラムシ」のプリプリした写真! 見事ですね。が、条件反射で思わずプチュっと潰したくなります…。 ----- アブラムシの写真を撮る度に、此奴正体分かるかな?と云う感じで、分からない方が多いので、憂鬱な感じです。 >我が家でも、バラやアンズ、アブラムシが目立ってきました。クロヒラタアブの幼虫がこんなに活躍してくれていたとは、心強い! これまでもそしてこれからも大事にしなくては。 ----- クロヒラタ、ホソヒラタ他色々あります。長野ならば、かなり違う種類も居るでしょう。 >アブラムシを食べるのはテントウムシが有名ですが、うちの庭では、クロヒラタアブの幼虫のほうがずっと数が多いように思います。 ----- クロヒラタ幼虫の特徴は背中の横の隆起と、遠目に見た時の横縞です。その他にも色々種類がありますので、御庭で活躍中の幼虫は、果たして、クロヒラタかどうか? 先日、ダンダラテントウの幼虫を飼育したので、近々(何時のことやら?)掲載予定ですが、ヒラタアブの幼虫の方がずっと沢山アブラムシを殺します。但し、ヒラタアブは成虫は花粉を舐めたりしているだけですが、テントウムシは成虫もアブラムシを食べ、寿命も長いので、幼虫~成虫~死亡まで、1頭当たり、何方がアブラムシを沢山食べるのかは良く分かりません。 (2011.05.22 21:15:40)
我が家でも、アブラムシ捕獲の警備員としてすばらしい働きを見せているヒラタくんですが、蛹の姿は初めて見ました。
虫も爬虫類も大好きでなので、こちらのブログは見ているだけでわくわくします。2010年に、クダマキモドキの食事についてのお話がありましたが、うちではバラの蕾や柔らかい新芽などを好んで食べています。とにかく食欲旺盛すぎて、困ってしまうほどです。 (2011.06.09 11:04:13)
ラピスラズリさん
>我が家でも、アブラムシ捕獲の警備員としてすばらしい働きを見せているヒラタくんですが、蛹の姿は初めて見ました。 ----- 昨年の晩秋や今春にヒラタアブ類の幼虫を何種か飼育したので、色々写真があるのですが、時間が無くて、まだ掲載に至っていません。 >虫も爬虫類も大好きでなので、こちらのブログは見ているだけでわくわくします。2010年に、クダマキモドキの食事についてのお話がありましたが、うちではバラの蕾や柔らかい新芽などを好んで食べています。とにかく食欲旺盛すぎて、困ってしまうほどです。 ----- そうですか。クダマキモドキは少なくとも植物を食べると云うことですね。動物性のものは食べないのかな?? 最近は非常に忙しくて応答が遅れました。お詫び申し上げます。 (2011.06.10 09:05:13)
アーチャーンさん
ヒラタアブ特集楽しみにしています! クダマキモドキが、植物以外を食べている場面にあったことが無いです・・日中は、木のてっぺんで優雅に風に吹かれ、21時頃になると降りてきて食事を始めます。いくら綺麗な姿をしていても、バラにとっては犯罪者ですから、逮捕したのち離れた野原に追放しています。昨年は、38匹の訪問を受け、卵まで産み付けられ・・クダマキパラダイスと化していました・・・ (2011.06.10 12:03:46)
ラピスラズリさん
>アーチャーンさん >ヒラタアブ特集楽しみにしています! ----- ヒラタアブ関係は写真の枚数が多く、まだ調整が出来ていませんので、掲載は何時になるか分からない状況です。 >クダマキモドキが、植物以外を食べている場面にあったことが無いです・・日中は、木のてっぺんで優雅に風に吹かれ、21時頃になると降りてきて食事を始めます。いくら綺麗な姿をしていても、バラにとっては犯罪者ですから、逮捕したのち離れた野原に追放しています。昨年は、38匹の訪問を受け、卵まで産み付けられ・・クダマキパラダイスと化していました・・・ ----- やはり夜行性なのですね。それならば、何故、日中は葉陰に隠れたりしないで、目立つところにいるのでしょう?? 御宅は何処にあるか存じませんが、昔はこの辺りで見た記憶はなく、最近都内の住宅地で増加しているのではないかと云う気がします。 (2011.06.11 14:44:18) |