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カテゴリ:国内ミステリ
天才エンターテイナー岡嶋二人による最後の作品。 徳山惇一と井上泉の共著としての筆名で、まるでエラリー・クイーンやロジャー・スカーレットのようだ。 日本では珍しい。 中期以降そういった傾向はあったようだが、この作品は完全に井上泉だけの手によって書かれたもの。 解散以後、井上泉はその後も井上夢人として活躍しているが、徳山惇一はその後の執筆活動を聞かない。 処女作「焦茶色のパステル」等徳山氏の能力を知っているだけに淋しい。 しかしこの作品は抜群に良かった。 PlayStationVRが発売され漸く仮想現実も進化してきたが、この作品はそれよりも凄まじい正にダイブ型のゲームをなんと平成元年の時点で、しかもこれ程までの質で書き上げている。 ゲーム世界の中にプレイヤーが生きる。 これが大きな仕掛けとなり、主人公を騙す。 読者よりも主人公を騙すのだ。 読者の方では題名がモロであるし、遅くとも終盤に入れば結末までしっかり読める。 しかしだからといって決して面白さが削がれる訳ではない。 梨紗の失踪や七美との捜査はとてもサスペンスフルでどきどきする。 特に何故ポケットに入れたピアスや名刺が無くなるのか、かと思えばまたポケットに出現しているのかという場面は実に魅力的だ。 現実と虚構が判断出来なくなり破滅を迎える結末は、それしかないとは解っていてもやはり素晴らしい結末だ。 SFでもミステリでもどっちでもいい。 とにかくサスペンス溢れる傑作である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.07.26 04:37:51
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