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2018.04.09
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カー最初期の長編。
アンリ・バンコランものの長編としては第二作目となる。

この頃のカーの第一の特徴となる怪奇趣味が爆発している。
舞台は霧の街ロンドン、夜の街に突然現れる絞首台、首を掻き切られた男しか乗っていないリムジンが疾走、伝説の絞首刑吏ジャック・ケッチから届く殺人予告、犯行現場は存在しない街ルイネーション・・・。
そしてそれらの悪魔の如き謎に挑むのは、パリの悪魔の如き予審判事アンリ・バンコラン。
雰囲気抜群である。
特に死者を乗せて疾走するリムジンは、冒頭でいきなり読者の心を鷲掴みにする。

犯人設定は意外性のあるものだった。
但しトリックは謎に対して薄味だ。
しかしそんなものはあまり問題にはならない。
前述の怪奇趣味の汪溢が興味を持続させ、巧みなストーリーテリングはこの頃から光るものがある。
それに本書はミステリよりも怪奇に淫した物語だ。
頁を巡る手はカーの達者な謎の設定と物語の構築技術によって止まらないし、怪奇現象が現実に引き摺り降ろされてもその芳醇な雰囲気が雲散霧消してしまう事はない。

亦、探偵役のバンコランの魅力も忘れ難い。
悪魔の容貌に威風堂々とした態度。
事件を解決した後に、絞首台に送られる事となった人物がバンコランを罵倒し唾を吐きかける。
それに対してバンコランが見せた悪魔も怯む恐ろしい態度たるや、正にメフィストフェレスが宿ったかのようだ。
物語を締める最後の一文は、どんな怪奇的な現象よりも凄まじい。

本書はカーの代表作ではないし、個人的にも決して傑作とは言えないと思う。
然し、カーはカーなのだ。
カーの備える特徴は「謎の魅力」「道中の愉しさ」「探偵役の魅力」だと思っている。
本書もその全てを兼ね備えている。
だからカーはやめられない。
傑作駄作の差が激しい作家であるが、カーは駄作でさえも愉しい読書体験にしてしまうのだ。
ミステリとしては重要な作品ではないかもしれないが、カーの良さが詰まった印象深い一冊である。





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最終更新日  2018.04.09 07:47:44
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