2018/07/26(木)04:28
木々高太郎「三面鏡の恐怖」
偉いぞ河出文庫シリーズ。
これも名前は知っていたがその著作を読む事は無かった、戦前の探偵小説家の作品だ。
とは言ってもこれは千九百五十五年の作品だ。
後期の作品と言える。
捩れた人間関係の中、一人の悪党が死ぬ。
毒入りのグラスが有りながら被害者の胃からは毒は検出されない。
ピストルでの射撃が唯一の死因でありながら猟銃によって自殺が装われている。
なかなか面白い謎を含んだ事件が展開される。
誰もが誰もを助けようとする事件で、証言が錯綜し、事件が複雑なものとなっているのは楽しい。
真相はスラップスティックとも思えるドタバタもの。
それでも変遷していく時代の中で必死に気高く生き、人と人が庇い合うのは良い読後感を与えてくれる。