七代目ちぃのブログ

2018/09/14(金)07:54

西村京太郎「赤い帆船」

西村京太郎(7)

初期長編。 お得意の海洋ものである。 日本人初のヨットによる無寄港単独世界一周航海を成功させて一躍海洋レジャー時代の寵児となった男と、その周りの人々を描いた作品。 まず帆船についての描写が興味深い。 ホーン岬の事なんか今まで知らずに生きてきていた。 更に事件も面白い。 東京からタヒチまでの賞金一千万円のヨットレースが行われ、その間に東京からタヒチまでで次々と事件が起こる。 どうやら単独犯で、しかもレース参加者が怪しいのだが、アリバイもクソも無い洋上で一体どうやって殺人を犯したのか。 警察の捜査中もレースは進行しており、全く退屈させないサスペンスフルで動きのある展開は見事の一言。 手掛かりは次々に見付かれど、その度に暗礁に乗り上げる。 ヨット界の英雄であった被害者の意外な裏側も明るみになってきて、読む手を休ませない。 被害者もトリックも豊富で、抜群に面白かった。 そして忘れてはならないのが、十津川の初登場作であるということ。 まだ三十路を過ぎたばかりの十津川はこの時警部補で溌剌としていて、部下を怒鳴り付け、自身も海外まで足を運び駆けずり回っている。 ここに日本で最も稼ぐ名探偵が生まれたのだ。 一流の海洋エンターテイメントであり、我が国のミステリ史に於いて無視出来ない歴史的価値を持った作品である。

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