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「コウー!おはよ。」
「おはよ。来るの早かったんだね。」 「お義母さんに送ってもらったから。」 蒼は白いタイトなTシャツに、細身のGパン姿で現れた。普段以上に足が長く見える。 私たちはターミナルの近くの自販機で飲み物を買うことにした。2人とも暑さで喉がカラカラだった。海のほうへ行くバスは、後20分しなければ来ない。強い陽射しの下を、肌を焼かれながら歩いた。 自販機で買った物は2人とも冷たいお茶だった。私たちは昔からあまりジュースを好まない。施設にいた頃からずっとそうだった。他の子供がジュースを欲しがっても、私たちはいつもお茶ばかりを飲んでいた。 待合室のベンチにもたれて、2人とも黙って座っていた。冷たいお茶が喉を駆け下りていく。扉は開け放たれていたが、風はほとんど入ってこなかった。室内にある扇風機がぬるい風を送ってくる。口から出てくる言葉といえば、「暑い」だけだった。 「私ね、昨日帰ったらお義父さんたちに話があるって言われたの。」 ゆっくりと、ボトルを見つめたまま蒼が言った。私は何も言わなかった。 「本当の両親がね、私を施設に放り出した人たちが名乗り出てきたって言うの。」 蒼は、まだよちよち歩きの頃に施設の前に置き去りにされていた。彼女の名前や年齢を書いた紙とクロスのペンダントが、蒼の背負ったリュックサックの中に入っていたそうだ。どうやら本当の両親はクリスチャンなのではないかと、以前に蒼がいっていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 27, 2004 10:26:32 PM
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