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Napping of Woog

詩論(4)文字の始まりとギルガメッシュ

  文字の始まりとギルガメッシュ


 後期旧石器時代のHSSは既に観察、抽象、文書記録などの
認知能力を発達させていた。
彼らの文書記録の1例として、2ヵ月と4分の1ヵ月の間の
数日に渡る月の形の移り変わりを彫った、骨でできた飾り板がある。
この記録がどれほど実用的価値を持っていたかは不明である。
作られた後の1万年間、比肩できる物が現れなかった。
単なる職人芸だったかもしれない。
しかし職人芸は芸術であることも忘れてはならないだろう。

 人間は文字を発明する以前に、
体系を持つ象徴や記号となる物を数々生み出した。
それらの中には、現在我々が使用している物もある。
文字も記号であるが、文字とは音声言語を前提とし、
それを視覚的に固定しようとする人間の努力の産物である。

 今から6000年ほど前にメソポタミア地方で、
楔形文字の原型となる絵文字が書かれていた。
これは農業に関する記録であった。
BC2900年頃から楔形文字が使われ始める。
そして、BC2600年頃に実在した王、ギルガメッシュを主人公とした
『ギルガメッシュ叙事詩』が書かれた。
この叙事詩には4つの主題がある。

(1)死に直面した人間の生
(2)友情--主人公ギルガメッシュとエンキドゥのいわゆる男の友情--
(3)太陽神(シャマシュ)信仰
(4)主人公の精神の遍歴。

主題以外にも、都市と山、荒野との対立、
フンババ(ドラクエVIに出てきたような気がする)という怪物などを
退治する物語、夢とその解釈、神が人間を亡ぼすために起こした洪水、
「若返りの草」を手に入れたが、眠っているうちに蛇に盗まれてしまい、
そのために、蛇が常に脱皮を繰り返して若返ることができるようになった
という物語も含まれている。

 ギリシア神話の壮大な予告編であり、
大洪水とノアの方舟の神話の原型である『ギルガメッシュ叙事詩』は
BC2000年頃には成立していたが、
定本と言えるものできたのはBC1200年頃である。
その間にこの叙事詩は西アジア全体に流布していった。
「定本」を書いたのはシン・レキ・ウンニンニという名の
書記を職業とする人物であった。
ここで特筆すべきは、総じて古代メソポタミアの文学が、
吟遊詩人などが語り継ぐなかで自然に生起したようなものではなく、
始めから文書化されており、それが、読まれ、書き写され、改編されてきた、
という事実である。

 では、古代メソポタミアの文学を担った書記とは
どういう人々であったのだろうか。
最終的には総数600程となった楔形文字ではあるが、
読み書きは非常に難しかった。
書記養成学校で厳しい教育を受けた書記は貴族階級に属し、
君主や大臣達が読み書きのできない場合、
彼らより大きな権力を持つことさえあった。
早くも古代メソポタミア時代から、
貴族による「文字化された」詩の独占があったのである。


(後書き)

 楔形文字が世界最初の文字だと読んで、漢字も負けていないはずだ、
世界で最も多くの人が最も長く使っているのだから、と思って調べたところ、
今から6000年以上前の遺跡である、
中国の半坡(ハンパ)遺跡からの出土した陶器には
文字らしきものが書かれているということでした。
これは漢字ではなく、直線を用いて作ったもので、楔形文字より単純であり、
文字とは言えないかもしれません。
ただ、中国文明の発掘はまだまだこれからでしょうから、
楔形文字を凌ぐ文字が発見されないとも限りません。
などと思っていると、遺伝子から見た日本人、
朝鮮人は中国や東南アジアの人々よりヨーロッパ人に近く、
日本語や朝鮮語は中国語ではなく
ヨーロッパの言葉に近いという話しも出てきて、いやはや。

 テレビ東京のせいでギルガメッシュのイメージが1部の、
しかし、少なくはない日本男性の間でガタオチしたのを
悲しんでいるのはぼくだけではないでしょう。
ギルガメッシュは女神の性的誘惑を拒絶した英雄です。
徒に性欲を掻き立てそうで立てないあの番組は・・・

 次回はホメロスにちょこっと触れてみます。
ホメーロスとも呼ばれる吟遊詩人です。 
              


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