モンキーレンチ 通 信

2014/05/30(金)10:55

 劇作家

映 画(155)

 ウッディ・アレン監督の映画『ブルー・ジャスミン』を観てきました。  今作の主演をつとめたケイト・ブランシェットは、先の3月発表だったアカデミー賞で見事、主演女優賞に輝いた。嬉しいニュースだったけど、主演賞に輝くのはこれが初めてと聞いて少し驚いた。『エリザベス』(98`)で受賞していたと思っていたからだが、調べたらそのときはノミネートのみで受賞には至っていなかった。『アビエイター』(04`)で助演賞を受賞しているものの、『エリザベス:ゴールデンエイジ』(07`)でも主演賞はノミネート止まりだったようだ。ま、米・アカデミー賞に限らなければ、これまでに様々な賞を獲得しているし、今回の受賞はサプライズ受賞ではないのだ。アカデミー賞などいつ受賞してもおかしくない、いやこれからも更に受賞の可能性が大の名女優なのである。……だが本人にしてみればやはり念願の受賞だったと思う。  俳優にとって運命的な役に出会えるか否かは大きな問題だ。運良く巡り合えればいいが、多くの人はなかなかそう上手くはいかない。  名優は生まれるのではなく選ばれ育てらるのだとしても、選ばれない時点で前に進みようはない。とりあえずその都度出会う役にしっかり取り組み、常に高い評価を得ていなければならない……。  そして、選ばれ結果を残している人の持っている、その魅力とはどんなものなのか。抽象的で全ての人に当てはまる答えはないが、自分にとっての答えは持っていたい。いや持っていないとダメだろう。  もとい本編である。この映画の予告編を見たときに思ったが今作はW・アレン版の『欲望という名の電車』(米の劇作家テネシー・ウィリアムズの代表作)のような作品なのかなと。実際に映画を観てみると、C・ブランシェットは正しく現代にあらわれた「ブランチ」だった。  テンポのいいウイットに富んだ会話劇。心を病んだ登場人物、もつれる男女関係に人間関係。そして虚栄心。更にアルコールに向精神薬……って。この作品はどう見ても、いつも通りのウッディ・アレン作品だ。  いや多くの登場人物を群像劇的に描くことが多いアレン作品は、最後はどこか散らかった印象を残しがちであるが、今作はずっと主人公に寄り沿って描かれているから、いつもより見やすくそして面白かった。  テネシー・ウイリアムズのもうひとつの代表作『ガラスの動物園』では「ブルー・ローズ」というキーワードが出てくるが、今作のキーワード「ブルー・ジャスミン」はその辺りを意識したものかもしれない。  ウッディ・アレンは映画監督であるが、「劇作家でもあるんだ」と言っているような作品だった。  DVDが出たら買おうっと。

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