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ユグドラシル

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郵政民営化=小泉流を解く

小泉氏は、政治家としての出発点から旧大蔵省と密接な関係にあります。まず、元大蔵省主計局長の福田赳夫氏の秘書となり、福田氏から紹介された平沢貞昭氏(後の大蔵事務次官)に財政や金融を学びました。代議士になると、1979年に大蔵政務次官、80年に自民党の財政部会長、86年には衆院大蔵常任委員長を務め、自民党では数少ない「生粋の大蔵族」の道を歩みます。当然のことながら、小泉氏は大蔵省の政策に精通し、大蔵省は小泉氏を応援してきました。

小泉氏の年来の主張である「郵政3事業民営化」も大蔵族だからこそ遠慮なく言い続けることができたと言えるでしょう。とくに郵便貯金の民営化は、大蔵省のパートナーである銀行業界が強く求めてきたことであり、経団連の広報機関である経済広報センターは毎年のように「郵貯・簡保民営化」のパンフレットを発行してきました。小泉氏は「一匹狼の変人」ではなく、ちゃんと応援団がいたのです。

そう考えると、特殊法人改革のなかで、住宅金融公庫が早々とやり玉に挙げられた理由もかいま見えてきます。長引く不況と間接金融の衰退で、日本の銀行業界はリテール(小口)ビジネスに活路を見いださざるを得ず、個人の住宅ローンの奪い合いに躍起です。そうした銀行業界にとって最大の目の上のタンコブが住宅金融公庫。これが縮小・廃止されれば願ったり叶ったりでしょう。

でも、ちょっと考えてください。住宅金融公庫への国費補助は、調達金利と貸し出し金利の逆ざやを埋めるのが主目的で、その恩恵を受けているのは住宅ローンを借りている一般市民なのです。そこが、一部の天下り役人やファミリー企業の食い物にされている他の特殊法人との大きな違いです。このため、マイホームを夢見る人たちはまず公庫融資を受けて、不足分を銀行のローンで借りる計画を立ててきました。歴史的な低金利が続く現在は、どのフィナンシャル・プランナーも、「公庫の固定金利10年ローンをまず借りるのが有利ですよ」と勧めています。その公庫を縮小・廃止して喜ぶのは全銀協であり、一般市民は逆に困るのではないでしょうか。

「国債30兆円」の公約も、それ自体は立派な志ですが、旧大蔵省以来の「財政再建優先」路線が臭います。「道路特定財源の使途見直し」や「地方交付税制度の見直し」も、最もな意見ですが、旧建設省や旧自治省の力を削ぐことにつながるわけで、旧大蔵省がほくそ笑んでいるのが気になります。

構造改革が小泉首相の純粋なリーダーシップで進められるのか、それとも大蔵族の習い性で、旧大蔵省のシナリオや振り付けで進められるのか。中身に大きな違いがないとしても、見る目は違ってくるでしょう。

小泉氏のもう一つの政治的キャリアは、何度も厚生大臣を務め、厚生行政に深くかかわってきたことにあります。そこで自民党の政治家にとってひときわ重要なのは、援護行政であり、その対象となる日本遺族会でしょう。11万人の自民党党員を擁しており、特定郵便局長OB会や日本医師連盟などに次ぐ自民党の有力支持母体だからです。

自民党総裁選挙の告示から4日後の4月15日夜、小泉氏が日本遺族会の幹部にかけた電話の内容を、毎日新聞が報じていますが、小泉さんはそこで「私が総裁になったら必ず8月15日に靖国神社を参拝します」と約束したのでした。告示後4日目といえば、まだ橋本龍太郎氏が優位と見られていた時期。小泉さんが、総裁になれるとの確信のもとに約束したのかどうかは分かりません。また、小泉氏が「ああ、同期の桜」を座右の書とし、毎年数回の靖国参拝を続けてきたことを考えると、「哀悼の誠」からの約束ではあったでしょう。とはいえ、総裁選の最中の電話であることを考えると、11万票をまったく意識していなかったと見なすことは素朴に過ぎるでしょう。

しかし、自民党総裁としては可能でも、内閣総理大臣としては不可能なことがあります。8月15日の靖国参拝はその一つであり、中曽根総理の参拝中止後、16年間にわたって不文律でした。小渕総理や、あの森総理は、参拝そのものをやめたのです。そのことに思いが至らず、日本遺族会への約束が胸中の大きな部分を占めていたとすれば、それは厚生族の発想だと言わざるを得ません。


http://www.tv-asahi.co.jp/n-station/cmnt/shimizu/2001/1018num95.html
以上清水建宇の『異見あり』より抜粋


その他にも靖国神社参拝については、小泉総理だからこそ強弁できたと思える家系の秘密もありそうなのですが、この謎については表に出る事は、少なくとも小泉氏の生存中にはなさそうです。


ところで本題に戻りますが、問題一つである住宅金融公庫は2006年度末までに廃止され、独立行政法人に移行します。どういう形態に移行するかはまだ不明ですが、恐らく銀行の意向にそった形になるのではないでしょうか?
あとは銀行にとってもう一つの旨みである郵貯の切り崩しができれば、万歳といったところでしょうか?

また道路公団の40兆という借金も問題ですが、他にも石油公団など1兆円近い借金を抱えているところもあるのにこちらはまだ手つかずという状態です。
また道路公団を民営化するのはいいのですが、結局民営では立ち行かなくなるのは目に見えています。その為に本来法律で4年と定めた郵政の公社化を2年に短縮したのでしょうが、あまりにも無責任の感はぬぐえません。
また地方の発展という意味からも、リスク管理という意味からも首都機能の分散は必要不可欠なはずですが、この議論もいつの間にか立ち消えになってしまいました。
もし、今東京に関東大震災並の地震がくれば、その被害額は、国家予算の数年分にもなると予想されています。
リスク管理の意味からも各地方の均衡ある発展からも避けては通れない問題ですが、総理には、大蔵族議員の失われた利権の復活しか頭にないようです。
しかし、総理の「郵政改革なくして行財政改革なし」という虚言を真に受けている国民の多さを考えると、この国の未来には明るい材料はなさそうです。

2005.8.25


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