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2004.08.05
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昨日とおととい、ひとりで飲んで帰ったのには訳がある。

おとといは、システムの本番稼動初日だった。
我々は、稼動監視とトラブル対応のため、実行開始予定の午前8時に、現地で待機することになった。

定刻通り、システムは稼動しはじめた。
本部の情報が、いくつかの中継地点を経由し、別の分析システムへ送り込まれる仕掛けがあり、今回は、転送の早期化を図るために再構築した後の、初回運用だった。
何もなければ、ただログをながめて、正常にデータが送り届けられたことを確認した時点で解散の運びとなるはずだった。

ところが稼動して2分も経たないうちに、システムがダウンしてしまった。最悪の事態だった。
webブラウザでシステムの状態を監視していた我々は愕然となった。おそらくサーバーのコンソール端末ではサイレンとともに赤く「エマージェンシー」のランプが点滅する。監視室の黄色いパトライトがくるくると回転し、緊急事態を告げる。

我々が待機しているのは就業開始時刻以前の銀行オフィスであり、すぐには緊急度は伝わってこない。
しかしにわかに電話が鳴り響き静寂を打ち破ったことで、緊張と重大さとを知らしめることとなった。
障害発生内容を記したメールが関係者各位へ自動的に配信される。電話は、メールを見たシステム運用統括部門の責任者によるものだった。
電話を受けたのはキュートな銀行員で、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」、「ただちに原因を調査いたします」、「ご報告させていただきます」というような言葉を使っていることで、現場はさらなる緊張と恐怖につつまれた。深刻な事態だった。

電話を終えたキュートな銀行員も、我々ソフトハウス側の責任者も、あるいは早めに出社して席についている知らない人も、ほとんど全員が、オレに注目しはじめた。
稼動開始直後に障害を発生させてしまったこの欠陥システムを構築したのが、オレだからである。
オレに向けられた視線には、怒りとか失望とか、あるいは憐れみなども含まれていたはずだが、いずれの感情も前向きではない。いくつもの感情が複雑に絡み合っている現場のこの重苦しい空気の中から、一つだけ合理的なものがあるということをオレは感じ取った。それはおそらく、迅速な原因追求と、確実な対策策定であろう。

朝のだいぶ早い時刻、まだ完全に覚醒していないアタマをオレはフル回転させなければならなくなった。障害発生の報を聞きた瞬間から脳内には覚醒物質が大量に分泌していたらしく、一度に5つぐらいのことを考えながら、あわただしくキーボードを叩きはじめた。さらにその状態で銀行員と、現状の認識や今後の事務手続きに関して話をした。
その間、ソフトハウス側の責任者はというと、オレの後ろに陣取ったままめまぐるしく切り替わるパソコンの画面をのぞき込みながら、「あー、まさか起こるとは思わなかったなー」とか「これはチョット痛いなー」などとまるで生産性の無い言葉を吐き散らかしているだけだった。

オレにしてみれば、当日障害が起こるかもしれないということはあらかじめ予測していたことであった。
それにはいくつか要因があるが、最大は、テストしたプログラムとは違うシステムが本番に載るということが挙げられる。つまり「一発勝負」であり、手をつくしたらあとは祈るしかない、というこの時世に信じられない手法を採用している環境下での初仕事だったため、ちゃんと動いてくれるという自身をどうしてもオレは抱けなかったし、障害が起きない確率はほとんどゼロパーセントという悲観的観測をずっと持ちつづけてきた。

マネージメントするしか能がないこの小心者の小男にオレは、以前からこのシステムの危険性、というよりも、システム開発を取り巻く環境や技術サポート体系の不透明さからくる不安定な方式の危険性について説いていたし、本番稼動の数日前にも、「障害が起こるかもしれない」という警告を発していたが、小男は「えっ、マジ?」とか「きっと大丈夫だよ」といったような根拠のない楽観論を並べただけで、オレの警告はほとんど黙殺に近い形で切り捨てられていた。

「一発目でうまく動いた例はないよ」
経験者は口々に語っていた。
それでも散々障害が発生し、未だ警報機は鳴り止まない。
キュートな銀行員は関係者へのネゴと上司への説明と事務手続きに追われた。小男のマネージャーはただおろおろしているだけだった。そんな中でオレは原因追求に集中すること20分。やがて一つの謎に突き当たり、ある仮説を打ち出した。
技術サポートチームにその仮説を伝えると、まさにそれが障害の原因であるという結論にたどりついた。

オレは電話を切り、横で見守っていた小男を黙殺しすぐにキュートな銀行員のもとへゆき、オレがたてた仮説とその裏づけと、そこから導き出される今回の障害原因について説明した。
オレはそのままテスト室へ向かい、事象が再現するということの証明をしなければならなかったし、銀行員はそのことをまとめて上司や関係者への報告書を書かなければならなかった。
小男のマネージャーは、首を鶏のように運動させているだけだった。





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最終更新日  2004.08.06 13:41:27
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