ザビ神父の証言

2007/10/04(木)02:24

バブルを考える (5)

日本経済(473)

バブルを考える (5) 日本ビルプロジェクトという不動産会社がありました。日本長期信用銀行の不良債権を追っていたジャーナリストのS氏が、この会社の借入金を執念で調べあげたのですが、それによると、メーンバンクの長銀が子会社の日本リースを合わせると、1090億円、準メーンバンクの日債銀300億円、日本信託銀行200億円、さらに安田信託、第一勧銀、さくら、横浜、協同住宅ローンが仲良く150億円、東京三菱と日本開発銀行100億円……ときれいに数字が並んで、総計借入金2600億円となっていたのです。これはメーン、準メーンだけでは留まる知らない地価下落に追いつけず、やむなく同じような不良債権の山を抱える金融機関との談合によって、互いにメーンバンクの回す奉加帳に一般行として横並びで参加していった様子が良く分かります。 日本ビルプロジェクトは、一つの土地を取得すると、その土地を担保に新たな資金を借入れ、次ぎの開発案件を手掛けて行く手法を取っていたのです。地価上昇が続いている間は、担保の土地価格も上がっていきますから、問題は生じないのですが、ひとたび歯車が逆回転すると、土地の担保余力は失われ、さらには担保不足に陥ってしまいます。そこで、後に揉めないようにと、幹事行の肝いりで融資シェアを調整して、横並びに揃えて様子見をした図が見えてきます。 様子見の間も地価は下がり続け、膨大な不良債権を各社は抱える事になったのです。96年の日本ビルプロジェクトのバランスシートを調べると、負債合計は5700億円を超え、784億円の債務超過に陥っていました。さらに地価は下がり続けているのですから、実質債務超過額はさらに大きいことが予測されました。実質破綻状態の会社だったのです。長銀と長銀の子会社は、帝国データバンクの調査では、合わせて1600億円を貸し込んでおり、さらに夫々の系列会社をも含めると2800億円を貸し込んでいたとされています。 そして長銀は無税償却が認められる点で、通常の不良債権の償却よりもかなり有利な、共同債権管理機構への債権譲渡にも踏み込んでいなかったのです。他には日債銀と安田信託の2行が同じでした。引当金を積んでいなかったために、債権譲渡によって償却することが出来なかったのです。 こうした処理の引き伸ばしは,問題をさらに悪化させます。日本ビルプロジェクトは、約定金利7%の利子を1%に減免してもらっていました。98年3月まで、金利減免債権の定義は、金利0,5%以下という大甘な査定が金融当局によって認められていたからです。 つまり、長銀は日本ビルプロジェクトへの貸付金を不良債権にすら分類していなかったと推測出きるのです。こうしたでたらめは人の口に上ります。「長銀は未公表の不良債権をまだ大量に抱えている」人の口に戸は立てられません。噂は噂を呼び、長銀の株価は遂にはヒトケタにまで落ち込みます。最後の生き残りをかけた住友信託との合併話も、長銀の隠れ不良債権が原因となって破談に終りました。 こうして長銀は遂に野垂れ死にすることになっていきます。身から出たサビの諺の通りの憐れな末路でした。          続く

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