ザビ神父の証言

2011/01/28(金)21:41

日本国債は格下げされたのか?

日本経済(473)

日本国債は格下げされたのか? テレビは勿論ですが、今朝の新聞もまた、判で捺したように、「S&P日本国債を格下げ」と報じていました。この報道は、極めて不正確で、正しくありません。消費税を上げたい政府に協力するため(それにしては、昨夜の菅首相の発言はオソマツでした)、意図的にそう報道したのか、単なる勉強不足なのかは、はっきりしないのですが…(苦笑)。 S&P社が、昨日日本について発表した格付けは、日本国債そのものの格付けではありません。即ち日本国債のデフォルトの可能性を探ったものではなく、彼らが国債の格付けとは別物としている、「ソブリン格付け」を下げたのです。「ソブリン格付け」というと、いかにも国債の格付けのようですが、国債の格付けは、基本的には外貨建て国債の場合にしか行なわれません。例外はユーロのような、多国間で流通する通貨の場合です。 実際に、国債の格付けが引き下げられたのなら、債券市場で日本国債は暴落するはずです。債券市場は、株式市場と違って基本的にプロが99%を占める市場ですから、マスコミの虚言に惑わされることはない市場です。S&Pの発表後、債券市場は僅かな揺れこそ見せましたが、引けは前日比で、ほとんど変わらずでした。 債券市場は、S&P社が勝手にやっている「ソブリン格付け」(各国の経済力、成長の可能性などについて、ランキングをつけるものです)で、日本の成長力に疑問をつけて、1段階引き下げただけで、日本国債のデフォルト可能性を問題にしたのではないことを、正確に見抜いていたのです。日本のマスコミとは、雲泥の差です。 S&Pは、「日本のソブリン格付け」の引き下げ理由を、生産人口の減少と高齢化の進行により、経済成長率予測が年率で1%程度に留まりそうだから、と説明しています。この指摘はその通りでしょう。生産人口が減少すれば、経済成長率が低くなるのは、ある意味当然です。 ただ、こうした今後の経済成長の問題と、国債のデフォルトの可能性とは全く別物です。S&Pも、日本の対外純資産残高が、世界最大であることを認めています。また、外貨・金の準備高が1兆ドルを超え、中国に次ぐ世界2位であることも認めています。その上、経常黒字が続いていることから、対外純資産が今後数年さらに増加するだろうことも、認めているのです。いったい何のために、「ソブリン格付け」を引き下げたのでしょうね。 これで、デフォルトの可能性が囁かれている、ベルギーやフィンランドのドル建て国債(いずれもAAフラットです)よりも、低く格付けするとは、どうかしています。実はこの会社、倒産したエンロンに、AAの格付けをしていたなど、何かと問題があることでも、知られています。 最後に米紙「ウオール・ストリート・ジャーナル」の記事を引用しておきます。「日本は経済成長率が低く、従ってインフレ率が低いのだから、日本国債を買い持ちすればいいでしょう。」

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