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怪鳥の【ちょ~『鈍速』飛行日誌】

2005/06/18
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テーマ:お勧めの本(5195)
カテゴリ:有川浩作品
『塩の街 -with on my precious- 』 
有川浩/著(電撃文庫刊)

『夜が明けて、御使い達はロトを促して言った。「立って、ここにいるあなたの妻と二人の娘とを連れ出しなさい。そうしなければ、あなたもこの町の不義の為に滅ぼされるでしょう。逃れて、自分の命を救いなさい。後ろを振り返って見てはならない。低地にはどこにも立ち止まってはならない。山に逃れなさい。そうしなければ、あなたは滅びます」
ロトがゾアルに着いた時、太陽は上った。主は硫黄と火とを天からソドムとゴモラの上に降らせて、これらの町と、全ての低地と、その町々の全ての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。しかしロトの妻は後ろを顧みたので、塩の柱になった。(~旧約聖書:創世記・第19章~)』


題名から、まず連想したのは『ソドムとゴモラ』のことでした。
『悪いヤツは神の裁きを受け滅び、良いヤツだけが生き残る・・・・・・・・』
旧約聖書お得意の教訓的なお話です。
でも、実際の世の中ってそんなに甘くない。
現実では良いヤツにも悪いヤツにも、程度の差はあれ不幸は訪れます。
幸福なのは運の良いヤツだけ。
ある意味神は皆に平等で、ただ「サイコロ遊び」が好きなだけなのかも知れません。

この作品は、第10回電撃ゲーム大賞小説部門の大賞受賞作であり、作家・有川浩さんのデビュー作でもあります。
最新作『海の底』が発売されたこともあり、ちょっと以前の作品も紹介してみたいと思います。

突然、人間がその善悪に関係なく『塩』に変わってしまう。
そんな世界に主人公の少女と、その自称保護者である青年は生きています。
そこで主人公たちは、いろいろな人達と出会い、別れていきます。
大きな荷物を背負い、一途なまでに海を目指す男。
罪を犯し、償うことのできなかった男。
未来を失い、ただ欲望のままに生きる人々・・・・・。
法も、秩序も、人の命さえも風化していく街で、それでも主人公たちは生きなければなりません。
どちらかが塩となり風化してしまうその日まで。
しかし、

『世界とか救ってみたくない?』

その言葉と共に現れた一人の男によって、二人の運命は大きく変わって行くのでした・・・・・。

この作品、読み始めるとぐいぐい物語に引き込まれていきます。
大賞を取ったのもうなずける、作者の力量を感じさせてくれます。
ただ、ものすごいインパクトがある、とかドキドキワクワクする展開が続く、とかいうような作品とは違います。
今はやり(?)の『萌え』要素も少ないです。
設定が設定だけに、SFホラーとかミステリーのように思われるかもしれません。
でもそうではありません。
結構普通に恋愛ものだったりします。

僕は最初、この作品って「ロード・ムービー」的なものかとおもったんですよ。
一人の青年が旅の間にいろんな人と出会い、別れ、そして人間的に成長して目的を達成し、その時にこのお話の世界の根底にある謎も判るんだろう・・・・・・・。
漠然とそう思いながら読んでいたので、一章だけで青年の話が終わってしまってびっくり!
主人公を見誤ってましたw
でも、この第一章が秀逸なんです。
ひとつの短編作品としてもすごく出来が良いんです。
もう、SF短編の傑作選に載りそうなくらい。
リリカルなSF短編の名手と言われる梶尾真治さんの名作「美亜に送る真珠」なんかと比べても遜色ないくらい。
絶品です。
この一章のためだけにも読んでも良いくらいに素晴らしいんです。
僕は、この第一章が一番好き。

後半は、世界の状況が徐々に明かされていくなか、主人公達もまたその『世界を救う』という動きに巻き込まれていきます。
どちらかと言えばお互いを意識し始めた二人の心のすれ違いが中心なのですが、アクションシーンも出てきます。
特に、後半最後の方のF-14戦闘機による攻撃シーンは細かく書かれています。
レーザー誘導爆弾を使って攻撃するんですが、何故か主人公側に不利な条件が数々・・・・・。
ここでちょっと違和感。
実際には動かない相手に、わざわざレーザー誘導爆弾なんて使うことはないでしょう。
最近は、JDAMなどGPS兵器も優秀です。
巡航ミサイルも精度抜群です。
しかし、よく考えてみると、
動かない相手に遠方からGPS兵器で攻撃って・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
盛りあがらね~~
全然、話が盛り上がりません。
中途半端です。
読んでいて、手に汗握らなさそうです。
んで、納得。
面白い方が良いもんね。
いやぁ、楽しみました。
飛行機大好き人間の僕が読んで楽しめるくらいですから、普通の人にはツライかもしれませんけどw
それくらい気合入れて書いてあります。
作者が男性と間違われても仕方ないかもしれませんねw


この物語の登場人物ですが、案外みんな、我侭で自分勝手です。
彼等は自分の大切なものを手にするために悩み、足掻きます。
それぞれの求める想いは同じなのに、何故異なる選択肢を選ばなくてはならないのだろう、と。
そしてラスト。
『君たちの恋は君たちを救う』
最終章のこの題名が、結果のすべてを物語っているのかもしれませんね。

ところで、物語の後半に入江という人物が登場します。
この人物が、僕には非常に魅力的に感じられました。
その言葉に、共感を覚えるのです。
たとえば、
「愛は世界なんか救わないよ。」ってヤツ。
全くその通りだと思います。
「愛」と言う名のもとに・・・・・・。
人は自分の愛する者を守るために銃を持ち、奪い、殺し、街を焼きます。
「憎しみ」は「愛」の裏返し。
「憎しみ」があるところにこそ、その裏にはより純粋な「愛」が存在する。
愛は世界を救わない。それどころか逆に、
『世界を滅ぼすものこそが、実は「愛」なのかもしれない』
僕にはそう思えることがあります。
だけど「愛」と言うものが素晴らしいことも知っているのです。
矛盾ですよね。
でも、こんな矛盾を持っているからこそ、「人間」なのかもしれません。

さてみなさん、
これは、あくまで僕の感想です。
でももし、この感想を読んで心を惹かれる『なにか』があったとしたら、読んでみてはいかがですか?
もしかしたら、あなたの『傑作集』に入る作品かもしれませんよ。
オススメの作品です。

塩の街 Wish on my precious ( 著者: 有川浩 | 出版社: メディアワークス/角川書店メディア...


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最終更新日  2007/12/06 12:20:40 AM
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