|
カテゴリ:漢字の知識
漢字が伝わったのは中国からだというのは常識ですが、じゃあどうやって、古代中国の人たちは漢字を作ったのかというお話。
中国から漢字が伝わってくるまで日本には文字というものがありませんでした。奈良時代になって、ずっと暗誦口伝(口伝え)されてきた神話が、漢字によってようやく書き残されるようになったのでした。「古事記」とか「日本書紀」ですね。二つあわせて『記紀』といったりします。ここのところ日中関係はよくないのですが、中国から漢字が伝わったことが、日本の文化が育つきっかけとなったともいえるわけです。 その中国では文字をどのように作ったのでしょうか。「甲骨文字」なんて社会の得意な人は知っているかもしれません。その文字を作ったときの方法を見ていきましょう。漢字の作り方は直接、文字を作る方法として四通り、さらに使い方で文字を増やす二通りを加えて六通りの作り方がありました。これを『六書(りくしょ)』といいます。漢字を作るのに並々ならぬ智恵と努力があったろうと思います。その六通りとは、次の六つです。 1 象形文字 絵から作った文字 象はもともと中国にはいない動物だったので、象を知らない人に絵を描いて形を説明したところから象形文字といいます。象という字は「象る(かたどる)」とも読みます。 例) 山 川 日 月 馬 羊 牛 女 人 大など (板書でイラストを書いて説明したいのですが、ここではムリ。) 2 指事文字 形のないものを記号のように表した文字 指(示)文字ではありません。指(事)文字です。 例) 上 中 下 一 二 三 など形のないもの 本 末 (「木」に一本加えて位置を表す) 小 (もとは小さな点を三つで小ささを表した。) ここまでで「大」は象形文字だけど、「小」は指事文字だということを押さえておいて下さい。突っ込んだ問題では問われます。また「本」はもともと書物という意味でできたのではなくて、「もと」という位置を表す指事文字から始まりました。「末」も同様です。いずれにせよ、姿・形のあるものは「象形文字」になり、姿・形のないものは「指事文字」だという大まかなとらえ方は忘れないで下さい。 3 会意文字 二つ以上の漢字を組み合わせて作った合体文字 例) 林 森 岩 鳴 など文字が組み合わさっているのがわかります? 4 形声文字 音を表す部分と意味を表す部分からできている。 悪魔の「魔」はなぜ「マ」と読むのかというと、「魔」はよく見ると「麻」と「鬼」でできている。「麻」が読みで「鬼」の方が意味というわけ。大麻(タイマ)の読みを知っていたらわかる。この例は危ないですな。(笑)こうした文字の一部で漢字の読み方の見当をつける方法はぜひ知っておいて下さい。全漢字の九割はこの形声文字でできていると言われています。 あとの例)に三つずつ挙げるように同じ音読みになるわけは、目で見て判断できるとおり、同じ部分が共通して入っているから、同じ音読みになるのです。そして残りの部分が意味を表しています。 例)全て音読みは「フン」で、部首が違うところで意味を表している。 墳 古墳として使うように「つち」の意味。 噴 噴火として使うように「口からふきだす」意味。 憤 怒っているという「こころ(りっしんべん)」を表す。 全て音読みは「セイ」で、部首が違うところで意味を表している。 晴 お日さまに関係する「はれ」という意味。 清 「さんずい」で水のきよらかさを表す。 精 「お米」の中心の一番大事なところを表す。 5 転注文字 本来の意味が変化したもの 例)楽 長 悪など 「楽」 最初は音楽の曲の意味だった。そこから、曲を聞いていると楽しい、楽(らく)という意味でも使われるようになった。 「長」 年寄りという意味から、おさめる意味での「長(おさ)」という意味でも使われるようになった。意味の変遷(へんせん)は、長ずる(年をとる)→大きくなる→身のたけが長いとなって最後に「長い」の意味で使われるようになった。 「悪」 もともと「わるい」の意味だったが、みんな「悪」を「にくむ」という意味で用いられるようになった。現在でも使う「嫌悪(けんお)」「憎悪(ぞうお)」などは「きらう・にくむ」「にくむ・にくむ」と同じ意味で使われる字が重なってできた熟語というわけです。「嫌悪」「憎悪」ともに「悪」は「悪い」という意味ではありません。大学受験の漢文では、「悪む」と書いて「にくむ」と読みます。大学受験では結構常識。 余談です。何年も前に自分の子どもに「悪魔」という名前をつけ、ニュースなど世間から非難を浴びた父親がいましたが、「魔を“にくむ”と読んで『悪魔』です。」なんて言えば、世間に言い訳できたかも知れません。 6 仮借文字 漢字の音だけ借りて使うようになった字 「かしゃく」または「かしゃ」と読みます。 「珈琲」って読めますか?「コーヒー」ですね。漢字一字一字に意味はありません。「加・非」の部分で音を表そうとしています。こうした音だけを借りて表そうとした使い方が仮借です。これは他にもいろいろあって漢字で音を表しているだけで意味を考えてはいけません。 例)英吉利(イギリス) 亜米利加(アメリカ) 仏蘭西(フランス) 伊太利(イタリア) 濠太剌利(オーストラリア) 倫敦(ロンドン) 華盛頓(ワシントン) 紐育(ニューヨーク) 巴里(パリ) 基督(キリスト) 亜細亜(アジア) など、明治維新前後、西洋文化が大量に入ってきたときにも多く使われるようになりました。パソコンのワープロで外国名や都市名を変換すれば、カタカナ以外に漢字表記があることに気がついていましたか。ぜひ、やってみて下さい。今でもイギリスを英国、フランスを仏国というのは、こうした漢字の使い方の頭文字を取っていたということだったのです。アメリカは「亜」と表すと亜細亜とかぶったりするので、2文字目の米で表されていますね。 ここまで説明してきた「六書」以外にも、日本独自で作られた「国字(こくじ)」というものもあります。 例) 畑 峠(とうげ) 躾(しつけ) 辻(つじ 十字路のこと) 麿(麻呂が合体して、まろ) 匂う(におう) 働(はたらく) など、日本独自の漢字は音読みがないのが普通ですが、「働」のみ音読みを持ち中国でも使うようです。中国に逆輸入されたのかなあ。私はまだ詳しいことを知りません。漢字学者でないとわからないことはいっぱいあります。 今日の漢字の成り立ちは、1~4までは中学受験レベル、1~6の六書・国字を含めて高校受験レベルでした。もちろん中学受験段階で全部知っていても損はありません。 今日はここまで。 【追記】05/05/31付 国字は訓読みしか持たないと考えるのは誤りだと国字研究の大家、大原望先生からのご教示を頂きました。『働』は日本で作られた国字に間違いないが、音読みを持ち中国でも使われるようになった字であるのは確かだということです。大原先生のブログ 楽天ブログ漢字・雑学サイトのカリスマをぜひ、参照なさってみてください。 【今回の記事が役に立ったと思う方はクリックお願いします。】 → と お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/06/03 01:30:59 AM
[漢字の知識] カテゴリの最新記事
|