2017/06/13(火)04:53
幸生と過ごした14時間
5月26日、愛護センター犬舎で初めて会ったこの子は、
可愛いお洋服を着ていた。
きっと、飼い主がまだ探し切れていないんだろうね。
もし、待っている間に保護期限が切れても、
あなたなら、判定に合格して「譲渡犬室」に行けるね。
SNSで、ポスターがあちこちに貼られていると知り、
私は、人任せにしてこの仔の事を見ていた。
私は、他の子のレスキューに意識を向けていた。
その子達をレスキューする目的で
愛護センターの犬舎に入ると、
なくとなく…
なんとなくですが、この仔の体は
「大変な事」が起こっているんだなと感じた。
心臓が悪いとは聞いていましたが、
同じ心臓肥大でも元気にしている保護家の子達と比べると、
明らかにそれが原因だとは思えなかった。
予定していたレスキューする2頭と一緒に、
この仔も緊急レスキューを決意した。
直ぐにかかりつけの病院でエコーを撮ると…
体の中は、腫瘍だらけで、一体何の癌なのかすら
分からない状態にまでなっていた。
「先生、余命どのくらいですか?
年単位ですか?月単位ですか?」
「・・・月単位ではないな。山下さんに出来る事は、やるべき事は、身体を綺麗にしてあげて、美味しいものを食べさせてあげる事かな?」
あぁ・・・
そうか・・・
この仔に残されたのは数日なんだなと感じた。
直ぐにサポートに来てくれたスタッフと一緒に、
糞尿まみれだった体を拭いて、
ご支援で頂いてた介護用缶詰を二缶ペロリと平らげて、
お水も沢山飲んで、
満足げな中にも、どこか悲しげな瞳をしていた。
自分のお家に帰りたい事は、明らかだったけど、
この子は、私に頼ろうとしてくれた。
「幸生」(こうき)!
残りの時間、幸せに生きれますようにと名付けた。
幸生が生きている間に、新聞で元の飼主に呼びかけてみようと思った。
どんな飼主なのかは分からない。
ここまで癌が転移してて気付かないわけはない。
もしかしたら酷い飼主なのかもしれない。
分かってて遺棄したのかもしれない。
でも、そんな事は幸生にとってはどうでも良い事だった。
幸生は、まだ飼い主を捨ててはいなかったから。
そんな目をしていたから。
それなのに・・・
翌朝、静かに、眠るように、
最期を迎えた。
とても安らかで、全く苦しみの無かったような顔をしていた。
幸生と共に過ごしたのは、たった14時間だった。
これだけは言いたい。
私は、自分自身が許せない。
5/26、センターで幸生と初めて会った時に、
私は安心して幸生を見ていた。
飼主が出て来なくても、
譲渡犬室にまわるだろうと…。
安心ってなんだよ!
殺処分がないから安心?
愛護センターだから安心?
なんでもっと危機感を持たなかったのか!
もっと幸生と真剣に向き合っていれば、
幸生をもっと知ろうとしていれば、
幸生の体が普通じゃない事に
気付いてたはずなのに。
洋服を着ているから?
毛ヅヤが良いから?
そんな表面でしか判断できなかったのかと、
自分に腹が立つ。
もっと早くにレスキューして、
新聞なりで飼い主探しをすれば、
幸生の家族がみつかったのかもしれないのに。
みつからなかったとしても、
もっと早くにレスキューしていれば、
フカフカなお布団の上で毎晩眠れていたのに。
なんで気付いてやれなかったんだろう・・・
なんでお家に帰してやれなかったんだろう・・・
なんでお家で最期を迎えさせてあげれなかったんだろう・・・
幸生、お帰りなさい。
幸生、今頃はお家に戻れているのかな?
たまには、保護家にも顔出してね。
短い時間だったけど、私も幸生の母ちゃんだよ。
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