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テーマ:猫の病気と治療日記(296)
カテゴリ:猫ホスピス
2月28日の早朝、デパート付近に、 衰弱して倒れている猫がいると、 保健所が通報を受け保護され、 4月に愛護センターへ運ばれた猫がいました。 それが「トランプ」という茶トラの大猫。 ![]() トランプ大統領に似てるからと、 愛護センターでそう命名されましたが、 性格はトランプ大統領とは真逆で、 攻撃性も無く、人にも猫にも 穏やかで優しい子でした。 ![]() 保健所、愛護センターに保護された2ヶ月間、 トランプは、職員さん達からの愛情を受けながら、 新しい飼主さんとの出会いを待っていたのですが… トランプは、猫エイズ陽性だったため、 バッグヤードからなかなか出て来れず、 「いのちのはうす保護家」でレスキューしました。 ![]() 施設内では、陽の当らない「エイズルーム」で、 約8ヶ月間過ごすしかできませんでしたが、 今年になり、支援者様のお力添えを頂き、 トランプは、真っ先に窓辺に向かい、 ずっとずーっと、外を眺めていました。 ![]() どこか懐かし気な、嬉し気な、 そんな表情をしていました。 ![]() 外をずっと眺めているトランプの姿を見る度に、 考えさせられていました。 陽に当たる、陽を浴びる・・・ そんな当たり前のようなことすら、 出来ない仔達はまだまだ沢山いるんだと、 もっともっと頑張らなきゃいかんなと。 「満足感」は、私には不要なものだと そう喝を入れてくれたのがトランプでした。 ![]() トランプの凄さ、愛らしさを皆さんにも知って欲しい~!と、 何度カメラを向けても、「えっ?」という顔なのです。 私が肉眼で見ているトランプと、 写真のトランプは明らかに違うのです。 ![]() なんでこの子は人間みたいな顔してるんだろう… 神の領域に達している仏様のような… と言ったら大げさかもしれませんが、 写真で見るトランプに、いつもそう感じていました。 ![]() こんな強面の大きな茶トラ「トランプ」でしたが、 穏やかで優しい性格で甘えん坊なトランプ。 スタッフやボランティアさん達からもみんなから愛され、 きっとカフェでも人気者になるだろうね…と話していたのに、 ![]() トランプは、日に日に痩せていき、 毛もバサバサになっていきました。 いくら人間が大好きでも、高齢のトランプには、 カフェは厳しい環境かもしれないと、 バックヤードに戻すことにしました。 ![]() 口内炎を何度も繰り返し、 その度に、動物病院に通い続けました。 体調不良を感じる度に、 血液検査、エコー、レントゲン、 色んな検査を繰り返しましたが、 特に大きな原因は見当たりませんでした。 ![]() そんな中・・・ 腎不全の進行だけがどんどん進んでいき、 腎不全末期に入ってしまいました。 トランプは、「猫ホスピスルーム」へと移動しました… ![]() 誰か欠けても安定した治療が出来るよう、 スタッフ全員が、点滴をマスターしました。 二人がかりだった点滴も、スタッフ全員コツを覚え、 一人で出来るようにもなりました。 スタッフ全員、猫ホスピスルームの子達を 守りたい一心だったと思います。 ![]() 一日置きに点滴を入れ、 毎日食べるものも変わるので、 みんなが次々と、トランプが食べてくれそうなものを 用意してくれていました。 皆から愛されている子… もうこれ以上の苦しみは与えたくない。 早く楽になれれば…そう願っていました。 このまま看取りに入る予定だったのですが… ![]() 鳥越店長がふと、こう言いました。 「トランプって、街中で生きてた仔だよね? ずっと外で生き抜いてきた仔だよね? コンクリートの上を歩かせてみたい! 体全身で外を感じて欲しいから!」 中心になってトランプのお世話をしていた鳥越店長には、 トランプから発するものをキャッチしたのでしょうか… そう思えるくらい… ![]() 外を歩いてるトランプは、 生き生きとしていたのです! ![]() クンクンと外の匂いを嗅ぎながらヨタヨタと歩きまわり、 何も口にできなかったトランプは、 草をむしゃむしゃ食べ始めました。 このトランプの姿を目の当たりにされた私は、 気持ちが変わりました。 看取りに入る前に、もう一度「生」を信じてみたい! まだ諦めちゃダメだ! 懸命に向き合っている鳥越店長とトランプの絆を、 まだまだ大切にしたい! そう思えたのです。 ![]() トランプをもう一度、病院に連れて行き、 獣医師さんにすがりつきました。 「トランプに出来る医療は、 まだ何か残されてますか?」…と。 ![]() 最後に試してみる事は、血管への点滴でした。 入院費用は1日10,000円。 今のいのちのはうす保護家の予算からは、 とても出せる金額ではありませんでした…。 保護家の会計も把握している鳥越店長とは 何度も何度も話し合いました。 まだまだ医療費を必要としている犬猫達が 保護家には沢山居るから! ![]() その子達の医療費を抑えてまでも、 トランプに一日10,000円、それが10日入院になったら? 今月の皆のフィラリア薬は?駆虫薬は? フロントラインは?ワクチン切れる子は? 当たり前にかかる医療費すら、今の予算では厳しいのに、 余命を延ばす事に、トランプ一人に、 私達はここまでかけても良いのだろうかと…。 私達二人の会議は四時間かかりました。 ![]() 最後に鳥越店長から出た言葉は… 「ねぇ、ゆみさん…やって後悔するよりも、 やらずに後悔する事の方がキツイよね?」 ![]() 鳥越店長は、必死に涙をこらえながら、 トランプを見つめながら私にそう言いました。 トランプには、もう一度外を感じて欲しい! それが1日であっても、 トランプがお外を望んでいるなら、 生きている間に、もう一度歩かせてあげたい! ![]() 寝たきりのトランプが、 外に出すと四本足で立ちあがり、 生き生きする姿をもう一度・・・ ![]() 私は、トランプの入院を決断しました。 その選択から降りかかってくるであろう困難は、 そのとき、考えていけば良いや! 這いつくばってでも、乗り越えられる事だと 自分を信じる事にしました。 信じなきゃ、怖くて決断なんてできなかったから。 でも・・・ 私は、誰のために決断したんだろう? トランプを生き生きさせてあげたいため? 鳥越店長が泣くほど辛いことから解放させたいため? 良く分からない・・・ 良く分からないけど、おそらく「尊厳」だと思いました。 トランプ…そして、 今までトランプと懸命に向き合ってきた鳥越店長への 尊厳…その二つを守りたいだけ。 ![]() ですが・・・ トランプは、2日で退院となりました。 血管への点滴に、効果がみられなかったんです。 ![]() 腎臓が機能していない事で、 何度もひきつけを起こすようになりました。 その都度、楽になれるよう睡眠薬を入れて 眠りにつかせる… その繰り返しの日々ですが、 不思議と、私も鳥越店長もスタッフも、 まだトランプに出来る事があるんじゃないかと、 医療面でもストップをかけていません。 また何かあれば、入院させて血管への点滴を しながら様子を見ていきたいと望んでいます。 ![]() トランプは、街中で生きてきました。 外猫として何年生きて来たのでしょうか… 本当はもっと若いのかもしれない。 きっと、近辺のお店の人たちから 残り物を貰っていたのでしょう。 舌はとても肥えていましたから。 近辺のお店の人たちから 可愛がってもらってたのでしょう。 人間を疑う気持ちは、最初からゼロでしたから。 トランプの本心は・・・ きっと、故郷に帰る事だったのでしょう・・・ トランプ、もう少し踏ん張ってみようか! 一緒にあの街を歩きに行こうか! もう一度だけ…。
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最終更新日
2018年04月26日 01時42分34秒
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