トゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)
トゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans) トゥーツ・シールマンスは、ジャズ・ハーモニカの創始者にして第一人者です。本名をジャン・パブティスト・シールマンス(Jean Baptiste Thielemans)といい、1922年4月29日にベルギーの首都ブリュッセルで生まれました。日本の年号では大正11年生まれになります。2005年1月にも82歳で来日していますし、2006年4月12日にはアルバム「ワン・モア・フォー・ザ・ロード」がリリースされ、83歳になっても音楽活動を続けていました。しかし、2014年3月12日、シールマンス91歳のとき、今後のコンサートの予定をキャンセルし、音楽活動からの引退を発表しました。そして引退を発表してから2年後の2016年8月22日、ケガのため入院していたベルギーの病院で、老衰のため亡くなりました。享年94歳でした。 “トゥーツ”(Toots)というのはハーモニカを「トゥーッ」と吹き鳴らすとこからきた愛称ということです。アルバムによっては、Jean ThielemansとかJean "Toots" Thielemans という名前になっています。「Jean」という本名はジャズにふさわしくないので変えたとも言われています。 子供のころからアコーディオンを弾き始め16歳の時にハーモニカを吹くようになり、さらにジャンゴ・ラインハルトの影響を受け、19歳でギターを始めたといいます。 第二次世界大戦後、ギタリストとして地元のクラブで活動。1950年にベニー・グッドマンのグループに参加し、ヨーロッパを回り、1951年にアメリカに移住しジョージ・シアリングのグループに参加します。1962年に、彼のギターと口笛のユニゾン・ソロ(ホイッスル・ギターと呼ばれている)をフューチャーした、彼の作曲による「ブルーセット」がヒットし、一躍注目を集めます。1963年以降、ABCテレビのスタッフ・ミュージシャンとして活動する一方で、セッション・ミュージシャンとしても数多くのレコーディングに参加しています。1969年の映画「真夜中のカウボーイ」のサントラでは、彼のハーモニカ・プレイが話題になりました。 1970年以降は、ソロ・アーティストとして数多くのアルバムをリリースしたり、ライヴ・ツアーなどを精力的に行う一方、クインシー・ジョーンズやジャコ・パストリアスなどのアルバムでフューチャーされたり、ポール・サイモン、ビリー・ジューエル、レイ・チャールズなどといった、ポップアーティストたちのアルバムにも積極的に参加している他、テレビ番組の「セサミストリート」のテーマ曲の作曲により、作曲家としても認められました。母国ベルギーでは記念切手にもなり、国民的な人気アーティストになっていました。 ハーモニカというとブルースやロックではなじみの深い楽器ですが、彼のハーモニカはそれらに使われるダイアトニック・ハーモニカ(商標名:ブルースハープ)いうものとは全く別物の、クロマティック・ハーモニカを使うため、半音を自在に操るための高度なテクニックを必要とするものです。ですから、ハーモニカといってあなどってはいけません。彼のプレイするハーモニカは、とてもジャジーでヒューマンでロマンティックな表現豊かなものです。 クインシー・ジョーンズのアルバムにはシールマンスのハーモニカは欠かせないものになっていて、クインシーは、「作品に何か足りないと感じたらトゥーツを呼ぶことにしている」と言い、さらに、「トゥーツはわれわれの時代が誇れる最高のミュージシャンの一人だ、と声を大にして言いたいね。彼のプレイにはハートがある。心ゆくまで泣かせてくれるんだ。彼とは数え切れないほど何回も仕事をしているけれど、そのたびに教えられた。トゥーツは永遠なり!」と大絶賛しています。 私も、トゥーツ・シールマンスの名前を知ったのはクインシー・ジョーンズのアルバムでのことです。彼のプレイを聴いたおかげで、ハーモニカという楽器がこんなにも素晴らしい楽器だったのだということを感じさせられました。トゥーツ・シールマンスのハーモニカは、とても素敵です。トゥーツは永遠です!