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 ÅOUME-青梅-

 ÅOUME-青梅-

日本双子話


日本双子話
これは、とんと昔の物語。むかしむかし、ある所に、それはそれはたいそう可愛い男の子と女の子の双子の姉弟がいました。彼等の名は弟の方が嬲(なぶる)、姉の方は嫐(なぶり)といいました。彼等はこんな法外な名前にもめげず、明るく元気にくらしていました。
しかし、一月前、両親が薬所持で捕まってブタ箱行きになってしまいました。双子の姉弟は悲しみましたが、これで狂った両親から解放され、新しい人生が始まるんだと、すっぱり割り切って親戚の家に預けられることに同意しました。預けられ先の老夫婦は変態でこそありましたが、彼等を喜んで迎え入れてくれました(双子ハァハァ)。そして明日からは新しい学校での生活が始まります。期待に胸を膨らませ、双子は眠りにおちました。
翌日、双子は夜明けとともに起きました。いつものようにハンドパースエイダー(銃器のこと、この場合は拳銃)の訓練をして、エルメスを叩いて起こします。そんな何気ない朝の風景、でも双子たちにとって今日は特別な朝でした。
まだ早朝なので控えめなエンジン音をたててモトラド(二輪車、空を飛ばないものだけを指す)が街を走ります。載っているのはもちろん、あの双子です。学校まであと2キロほど、そろそろ城壁が見えてもよい頃です。モトラドは少しだけエンジンを高鳴らせました。
学校に着いた双子たち。ついにこの瞬間がやってきました。二人は緊張の面持ちで、先生から呼び入れられるのを、教室の前で待っています。弟は落ち着かな気に爪を噛み、姉はすでに二箱目を空けてしまいました。「二人とも、入ってきなさい」
キター(゜∀゜)ーーー!! ぎ、ぎぎ、ぎ・・・。ガチガチに緊張しながら、教台にむかって歩きます。男女の双子が物珍しいのか、辺りからは「カワイー」とか「思ってたほど似てねぇな」などの小声が聞こえます。自己紹介するように促され、双子は漢検二級あたりに出そうな漢字を仲良く並べました。「ねえ、なんて読むの?」生徒の誰かが言いました。男女男と女男女。小学生低学年にはいろんな意味で縁のない漢字です。無理もありません。生徒達は一人また一人とざわめきだし、双子と教師だけが口籠もっている(教師の方は半ば絶句している)という状況になりました。
「は、はーい、みなさん、二人のことは苗字で呼ぶことにしましょう。」うつむいたまま沈黙している双子に教師が助け船を出します。「せんせー!それじゃあ二人のどちらを呼んでるのかわからないと思いまーす!」学級員の里佳ちゃんのもっともな発言が助け船をみごとに沈めました。と、そのとき、一番前の席に座っていた生徒が、おもむろに眼鏡を上げました。その顔に双子は直感します。(か、漢字マニアだ・・・。)どこの学校にも一人はいるタイプの人間です。この小学生らしからぬ、ニヒルな雰囲気、間違いありません。そして彼等は例外なく、知識をひけらかす場を求めています。今がまさにその時!司会の松平です。漢字マニアが発言体勢に入ります。 言うな!! 言うな!!! 言うなぁっ!!!! 「それナブルって読むんじゃないの・・・。」 ぐあっ!お、終わった・・・。転校初日からいじめられる。父兄の方々からも奇異の目で見られる。嗚呼・・・。「かわいいじゃん。」え!?「ちょっと変わってるけどかわいいよな?ナブルって。」「うん、ぼ
くもかわいいと思う。」「女の子の方はナブリちゃん?」「ほひょわっ!萌え~!!」双子は自分達の名前を誉められたのは初めてでした。散々馬鹿にされ、不憫がられた名前がこんなにたくさんの人に誉められています。何か熱いものが込み下ってきました。 シャアアアアー・・・ 「うわっ!こいつら漏らしたぞ!」「二人同時にか!?」「さすが双子ね!」「ほひょわっ!放尿萌え~!」
斯くして、転校初日から文字道理ぶちかましてくれた双子の噂は、瞬く間に広がり、二人は学校一の人気者になりました。よかったね。嬲くん、嫐ちゃん。めでたしめでたし。



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