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倫理の進化

倫理の進化

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若樹

若樹

Headline News

2012.11.29
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カテゴリ:思想
故・ノーマン・メイラーが殺人者「ゲイリー・ギルモア」のノンフィクションのタイトルを、この「死刑執行人の歌」にした理由は、恐らくは犯罪者ゲイリーが、法廷で自ら死刑を要求した為だろう。


1976年ゲイリーは、ユタ州で何の関係もない男性を、二人撃ち殺した。
翌年の1月、ゲイリーは自ら「銃殺」を望んで、その要求を貫徹した。

いきなりこの話から始まるのは、文脈として正しくないかも知れない。
私は、北海道に冬が訪れ、雪が降り始めてからと言うもの、胸の中に恐怖を感じ、
自分の考えや気持ちが、散々に乱れるのを、整理しようとしては、失敗すると言う事を
繰り返している。

だが一つだけ、自分の中で見つけた真実がある。

私は、「倫理の進化」の中で、努めて、保護している犬や猫の事には触れなかった。
一番の理由は、「支援金」募集をしている、と、思われたくないと言う事と、
自分が覚悟を決めて引き受けて来た命の世話と、自分が彼らの身の上に怒った事を
止める為に、世間に訴える事は、道理であって、日常生活の日記ではないからだ。

同様に、私はこのブログを再開させた切っ掛けとなる、「現状」の説明も、
ここに至るまで全くブログ内では書いて来なかった。

このブログの多くの失敗は、元支援代表を自ら断行してしまった、ある女性との
トラブルが、ブログのコメント欄で炎上を続け、また、始めて使用した楽天ブログに、
それらのコメントと、理性あるコメントの掲載の可否を、より確実につける術がなかった
事だ。

インターネットと言う、相手が誰なのか分からない文字だけの世界で、私はブログの
方向性を破壊され、それは殆ど修正が効かなくなってしまった。

そして、自分自身も、不条理に浴びせられる書き込みの中で、怒りが度を越し、
「目には目を」のハムラビ法典の法に従ってしまった事だ。

そうした当時の記事については、削除しておきたいが、その様な時間は取れないし、
また、自らの過ちとして、世間に晒し続けるのも、良い自分への罰になるだろうと、考えてもいる。

長くなった連載の、軽いおさらいになるが、
私は子供の時から、殺処分と言う、恐ろしい制度を前に、救えるだけの命を救って来た。
結果はどうあれ、この問題から逃げて、普通の人間らしいー私に言わせれば卑怯者の生き方に
なるのだがー生活に、去った事は一度もなかった。

苦痛は常に、私を取り囲んで離さなかったし、私もまた、苦痛にまみれた人生から、犬猫の置かれた現状を前に、背を向けて逃れようとは思わなかった。


ゲイリー・ギルモアについては、私の心臓に等しい本が、一冊出版されている。
ゲイリーの弟、マイケル・ギルモアによって書かれた、「心臓を貫かれて」だ。

この本が書店に並び始めた頃、丁度私は、自分の家から、家族から、離れて、自分の日常がそのまま保護活動に添って進行し始めた事を、本格的に自覚し、実父や祖母や、実父の愛人、伯母の暴力から来ていた常軌を超えた憎悪と殺意からの、脱却に向かっていた。

この本の帯にはこう書かれていた。
「ゲイリーは物心ついたときから激しく愛を求め、常に激しい暴力で報いられた。-中略ーその恐怖の世界を抜け出すための手だては、たった一つしか残されていなかかった。血は流されなくてはならない。」

何て事だ、と思った。
本の中身を読まずとも、ゲイリーが分かった。
自分と同じ過酷な運命の下に生まれつき、そして死んだ男なのだと。
彼が殺した二人の人間達。
そして、その遺族や友人。

許しを請う事は出来ないが、私はゲイリーの敵になる事は出来なかった。

実は、ゲイリーの事は、いつかこのブログで触れようと、ずっと初めの頃から思っていた。
子供の虐待について。
幼い頃から虐待を受けた子供が、どんな人間に育つのか、奇しくも私はやっと、前連載の中で触れる事が出来た。

ゲイリーは、本を読む前から、自分の子の様に、愛しさを感じてならなかった。
私から生まれた、もう一人の私。

しかし、自分の運命を、ゲイリーが落ちてしまったそれと、違う方向に向けて行こうと戦っていた私は、毎週、毎月の様に書店を訪れながら、その本を買うのに、7年以上の歳月を必要とした。

事実、この本は、それだけ長くあらゆる書店に必ず置かれていた。
いつもこの本の背表紙が、私の目を捉えて離さなかった。

私が遂に勇気を出して買って以来、この本は、ぷつりと各書店から姿を消した。
それはまるでゲイリーが、私に自分の身を預けた事で、成仏出来たかの様にー。

この本は、正しく想像通りのものだった。
ゲイリーと私の、何と相似している事か。

続けて買った、ノーマン・メイラーの「死刑執行人の歌」も、ゲイリーと私が、あらゆる点で、似た人間なのを証明していたー時には、ぞっとする程に。

この本を読み終えた日の朝方、私は夢を見た。
オーケストラの楽団が、何かを演奏していた。
その曲は、耳では聴こえなかった。
どこか、もっと高い、天上の世界で演奏されている。
曲は聴こえないが、その曲は、私の感覚が掴む事が出来た。
知っている曲だ、知っているー。

楽団を正面に見て、最前列の一番右側で、ゲイリーがバイオリンを弾いていた。
いたずらっ気なゲイリーは、演奏に集中せず、私に瞳で秋波を送ってくる。
心の中で、私は言った。

「ダメよ、ゲイリー。私には彼がいる事、分かっているでしょう。ちゃんと、演奏に集中しなさい。」

私は、ゲイリーを演奏に集中させる為に、わざと目をつぶった。
最初はしぶりながら、やがてゲイリーは、演奏に熱を込め始めた。

私はその決して聴こえない、至上の演奏に聞き入った。

そして、唐突に目を覚ました。
頭の中で、あの曲が何だったのか、必死に考えた。
クラシックの名曲だ。
曲調は分かる。
だが、題名が思い出せない。

数日後、たまたま私は、クリスチャンが経営してる喫茶店で、マスターに尋ねた。
こんな感じの、クラシックの曲、題名なんだっけ?

マスターは、さらっと答えた。
「ああ、それは{喜びの歌}」だね。

その場では何とか堪えたが、家に帰って涙が止まらなかった。
南弟子屈で、バスの中に住んでいた頃の話しだ。

今から10年以上前。
死ぬ時は、この本を墓の中に抱いて持って行きたい。
そう思った。

今は、私が死んだ後、この本は誰かが大事に所蔵してくれる事を望んでいる。
ゲイリーの痛みを分かる誰か。
そして、ゲイリーの兄弟の、フランク・ジュニアと、マイケルの痛みを。


ゲイリーの死刑が確定し、それが止められない事と知った時、また、ゲイリーが実際に
死刑にされた時の心情を、マイケルは痛々しい程に綴っている。

マイケルの心と、私に、犬猫は保健所へやって、あなたは、普通に結婚して、幸せな人生を生きるべきだと、常に言われている私の心を、言葉にすると、この様になる。

今、愛する誰かが決められた通りに、死んで行こうとしている。
正に、法律に乗っ取って、殺されようとしている。
私はこれから先ずっと、自分の愛する者を公然と殺した社会の中で、それを止めようと抗わなかった人々の中で、その人たちとすれ違い、言葉を交わし、生きて行かなくてはならない。
私は、その世間の中で、周りの人間を憎むか、それとも何とか折り合いをつけて生きて行くか、とにかくどちらかを選択しなければならない。

肉親を躊躇もなく殺害した、世界で生きて行くと言う事は、肉親を躊躇もなく殺害した、個人をと対峙して生きるよりも、遥かに重い、絶望なのだ。

結局私は、勿論マイケルの書いたこの本を読む前から、いつか「崩壊」を迎えた時に、こういう状況に自分が置かれる事を理解していた。

「崩壊」が来たら、-少なくとも私がそれを覚悟した時代は、インターネットはなかったし、今の動物愛護団体で、日本で知られている所と言ったら、千葉の藤田さんくらいしかいなかったー動けなくなった私の事は、身内や国が面倒見てくれるだろう。

そして、反対に我が肉親そのものである、文字通り血を流して守って来た子供たちは、かつてのアウシュビッツを小さくまとめたに過ぎない施設の中で、ガスか、何かによって、殺されている。

私は保護され、人間の悪法と、無慈悲の前には、何の力もない犬と猫は、逆に処刑を受けている。
一体、そんな世界の中で、私はその後、社会を憎まずに生きて行けるだろうか?
報復を企てずに何にすがって生きれるだろう。
そんな社会を、愛する事も、受け入れる事も、折り合いをつける事も、私には出来ない。
私には正義感と、何よりも強い子供達への愛がある。

だから、崩壊の時が来たら、一緒に死ぬのだと。
運が良ければ、それまでに、社会を変えられるかも知れない。
私は最後まで、夢は諦めない性格だ。

そうして、いつか必ず来る、崩壊を前に、努力しながら北海道まで来た。
ここで、この厳寒の地で、移住してから7年頑張った。




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本記事は、FC2ブログに一度拠点を移し、そこがオリジナルに今はなっています。
コメントは、認証制ですが、受け付け等もそちらで行っていますので、宜しくお願い致します。

また、FC2のブログの背景である、高いネットとバラ線で囲われた空間は、犬猫問わず、人間もかつては偏見や暴力によって閉じ込められた、自由を奪われた虚無の場所です。
今もそこで暮らすものが、その囲いの中から、どんな風に外が見えるのか、見ているのかー

囲いの中から、当ブログを通して外の世界と空を眺め、改めて、そこから出る事を許されないのがどんな思いなのかを、考え、感じて下さい。

FC2版 「倫理の進化」

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Last updated  2012.11.30 01:47:13



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