本日は若草読書会の新年会。
参加者は、智麻呂・恒郎女ご夫妻、凡鬼・景郎女ご夫妻、小万知さん、謙麻呂さん、和麻呂さん、槇麻呂さん、和郎女さん、千葉から参加の祥麻呂さん、東京から参加のりち女さん、それにけん家持の12名。
いつの頃よりか新年会の講話はヤカモチが担当して、万葉集に関連したお話をし、自作の歌や俳句を持ち寄るということが恒例となっている。その後は鍋を囲んで呑んだり、食ったりするというのもお決まりの形である。
今年は、凡鬼さんの要望もあって柿本人麻呂を取り上げることとし、その生涯や歌のいくつかを鑑賞するということとしました。
人麻呂は正史に登場せず、万葉集に掲載の歌やその歌に付された題詞・左注が唯一の文献資料ということで、生没年は勿論、死んだ場所・死に方なども諸説紛々でなかなかに面白い。1293歳の偐家持でさえ、その誕生の前後に亡くなっておられるので、面識は勿論なく、和歌史上燦然と輝く巨星であるにも拘わらず、実の処が判然としないのでありますな。ということで、適当にやって置きました(笑)。何しろ宴会と歌会の前座を勤める「お話」でありますので。
宴会の後は智麻呂・恒郎女ご夫妻を中心に讃美歌や懐かしいその他の歌を一緒に歌ったり、好き好きに談笑してくつろいだひと時を過ごしました。
歌会はいづれ取りまとめて河内温泉大学図書館の若草歌集に収納する予定でありますので、興味ある方は覗いて下さい(かなり先のことになるかと存じますが・・)。
また、和郎女さんが作品をお持ち下さり、参加者に配分しプレゼントして下さいましたが、それらを写真に収めましたので、いづれ本ブログでご紹介させて戴きます。智麻呂さんの新作絵画も「仕入れ」ましたので、これも近日中に公開予定です。
今回の目玉は、子供達に絵本や昔話の読み語り・読み聞かせの活動をされている景郎女さんが、その語りの一つを実演して下さったことでありました。彼女の活動のことは夙に承知して居りましたが、実際を耳にするのは初めてのことで、思わず引き込まれて聞き入ってしまいました。
彼女は野の花文庫をご自宅に開設し長年に渡って子供たちへの本の読み聞かせや人形劇を上演したりする傍ら、若いお母さん方に、子供達に本を読んであげましょう、というような指導・啓蒙活動を仲間とご一緒にされて来られたが、この程、大阪府高槻市の郷土史家の宇津木秀甫氏が収集された地元高槻の昔話や伝承をもとにして、これらの中から子供達に伝えたいお話やわらべ歌を、お仲間と一緒に、本にまとめるということをされました。語り口に工夫したり、方言を取り入れるなどして、子供達に語り聞かせるということを目的とした本である。
今日お聞かせいただいたお話もこの本の中のお話の一つなのであろう。子供達が目を輝かせて聞き入っている姿が彷彿としてくる、なかなか魅力的な語り口でありました。
(おはなしぱんぽ)
ご主人の凡鬼さんの俳句に「平凡を重ね非凡の文化の日」という秀句がありますが、地道に子供達に向けての活動を重ねて来られた景郎女さんにこそ相応しい句と言うべきだろう。一貫して揺るぎないその姿勢と活動には敬意のほかありませぬ。
(野の花文庫35周年記念誌)
彼女は短歌もお作りになられます。NHKの短歌コンクールでも先般は優秀作か何かそのようなものに選ばれるなどされたようですが、本日は彼女の短歌をご紹介してみることといたしましょう。
野の花文庫 (「弦」2010年No13所収) 腹ばいで読む子もいたり一冊に顔つきあわせ笑い合う子ら
早やチョンと子らに倣いて正座して絵本に見入る書架荒らし君は
初めてのママの読み聞かせタク君は前に陣取り「しずかにしろよ!」
ママの声ふるえているなタク君は身じろぎもせず母を見守る
ろうそくの灯りの中で素ばなしを聞く子ら翔けるかファンタジー世界
"おはなし"に聴き入る子らのドキドキが伝わりてくるその肩その眸
十人が十のマーシャをイメージ「絵みてるみたい!」フーと呟く
ガッコキライ!と言う子はゴザ運び幼の世話して緑陰図書の日
カゴとアミ持ちて文庫の部屋に来て飛び出してゆくバッタ残して
玄関に返却本の音ドサリ!空き地へ走る閑古鳥文庫
ピーピーと風に乗りくるエンドウ笛わたしも飛び出す文庫より野へ
三角の紙帽子かぶり『もりのなか』大人に見えぬ隠し道あり
『またもりへ』行きし子迎えて肩車
「とうさんもおまえみたいに笑ってみたい」
『三びきのがらがらどん』は一人かも幼児・少年・孰年期の人生
頭のしんの重さとれぬ憂いの日『ぼちぼちいこか』と蝸牛に囁く
咳・くしゃみ憚ることなく連発す『屁っぴり嫁さ』の「ヘヤ」に臥せいて
どうぞどうぞお入りなさい詰め合えばなんとかなるよ『てぶくろ』のいえ
出入り自由、小さなちいさな本のへや
「野の花文庫」は『てぶくろ』みたい
ゆっくりと野の花文庫の窓全開 たんぽぽ綿毛は何処へ飛び立つ
変移るもの変わらぬものありひなげしの丘に還りし『ちいさいおうち』