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偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

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2012.05.06
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カテゴリ:和歌・俳句・詩

 昨夜は満月であったのですな。ベランダに出て見ると月が空高く皓々と光を放っていました。今月20日が金環食とのことですが、これは太陽が主役、月は脇役、文字通りの黒子ですな。
 しかし、和歌の世界にあっては、「雪月花」や「花鳥風月」にて月こそ主役、太陽はものの数ではないのでありますな。
 「寄物陳思」、物に寄せて思ひを陳べる歌というのは、相聞、騎旅などと共に、歌集の部立ての一つにて、万葉集にても既に見られるものであります。古来、日本人は月に寄せて多くの歌を詠んで来ました。

 月の歌あまたある中で、本日は万葉ではなく、西行の月の歌を書き出してみることと致します。桜と月の歌人、西行。西行一人に絞ってみても月の歌は数限りなくあります。拾い出しているだけで疲れてしまいますが、字数制限内で書き出せるだけ書き出してみることと致しましょう(笑)。

月影の・・.JPG
(2012年5月5日の月)

ゆくへなく 月に心の すみすみて
        果てはいかにか ならむとすらむ

なげけとて 月やはものを おもはする かこち顔なる わが涙かな

こととなく 君恋ひわたる 橋の()に あらそふものは 月の影のみ

弓張の 月に外れて 見し影の 優しかりしは いつか忘れむ

おもかげの 忘らるまじき 別れかな 名残りをひとの 月にとどめて

しきわたす 月のこほりを 疑ひて ひびの手まはる あぢのむら雲

影さえて まことに月の あかき夜は 心も空に 浮かれてぞすむ

心をば 見る人ごとに 苦しめて 何かは月の とりどころなる

さのみやは 袂に影を 宿すべき 弱し心よ 月な眺めそ

月に恥ぢて さし出でられぬ 心かな 眺むる袖に 影の宿れる

露けさは 憂き身の袖の 癖なるを 月見る咎に 負ふせつるかな

月の夜や 友とをなりて いづくにも 人しらざらむ 住みか教へよ

ひとりすむ 片山かげの 友なれや 嵐に晴るる 冬の夜の月

月ならで さし入る影の なきままに 暮るるうれしき 秋の山里

眺むるに 慰むことは なけれども 月を友にて 明かす頃かな

ひとりすむ 庵に月の さしこずは 何か山べの 友にならまし

あはれなる 心の奥を ()めゆけば 月ぞおもひの 根にはなりける

憂き世いとふ 山の奥にも したひきて
         月ぞ住みかの あはれをぞ知る

憂き身こそ いとひながらも あはれなれ
         月を眺めて 年の経ぬれば

世の中の 憂きをも知らで すむ月の
        影はわが身の 心地こそすれ

隠れなく 藻にすむ虫は 見ゆれども われから曇る 秋の夜の月

さらぬだに 浮かれてものを おもふ身の 心をさそふ 秋の夜の月

真木の屋に しぐれの音を 聞く袖に 月の洩り来て 宿りぬるかな

いつかわれ この世の空を 隔たらむ
        あはれあはれと 月をおもひて

いかでわれ 心の雲に 塵すゑで 見る甲斐ありて 月を眺めむ

眺めをりて 月の影にぞ 世をば見る
        すむもすまぬも さなりけりとは

雲はれて 身に憂へなき 人のみぞ さやかに月の 影は見るべき

来む世にも かかる月をし 見るべくは 命を惜しむ 人なからまし

この世にて 眺め馴れぬる 月なれば 迷はむ闇も 照らさざらめや

来む世には 心のうちに あらはさむ 飽かでやみぬる 月の光を

鷲の山 おもひやるこそ 遠けれど 心にすむは 有明の月

鷲の山 くもる心の なかりせば 誰も見るべき 有明の月

鷲の山 月を入りぬと 見る人は 暗きに迷ふ 心なりけり

鷲の山 誰かは月を 見ざるべき 心にかかる 雲しはれなば

悟りえし 心の月の あらはれて 鷲の高嶺に すむにぞありける

雲はるる 鷲のみ山の 月影を 心すみてや 君ながむらむ

分け入りし 雪のみ山の つもりには いちじるかりし 有明の月

見ればけに 心もそれに なりにけり 枯野のすすき 有明の月

あらはさぬ わが心をぞ 怨むべき 月やはうとき をばすての山

あま雲の 晴るるみ空の 月影に 恨みなぐさむ をばすての山

くまもなき 月の光を 眺むれば まづをばすての 山ぞ恋ひしき

をばすては 信濃ならねど いづくにも
        月すむ峰の 名にこそありけれ

花におく 露に宿りし 影よりも 枯野の月は あはれなりけり

冬枯れの すさまじげなる 山里に 月のすむこそ あはれなりけれ

霜さゆる 庭の木の葉を 踏み分けて 月は見るやと とふ人もがな

いづくとて あはれならずは なけれども
         荒れたる宿ぞ 月はさびしき

山おろしの 月に木の葉を 吹きかけて 光にまがふ 影を見るかな

山深み まきの葉わくる 月影は はげしきものの すごきなりけり

神路山(かみぢやま) 月さやかなる 誓ひありて (あめ)が下をば 照らすなりけり

これや見し 昔すみけむ 跡ならし 蓬が露に 月の宿れる

月すみし 宿も昔の 宿ならで わが身もあらぬ わが身なりけり

雲の上や ふるき都に なりにけり すむらむ月の 影は変らで

何ごとも 変りのみゆく 世の中に 同じ影にて すめる月かな

涙のみ かきくらさるる 旅なれや さやかに見よと 月は澄めども

眺めつつ 月に心ぞ 老いにける 今いくたびか 春にあふべき

山の端に かくるる月を 眺むれば われも心の 西に入るかな

闇はれて 心の空に すむ月は 西の山べや 近くなるらむ

月影の・・ (2).JPG(同上)

 ざっと57首列挙できました。さて、皆さまのお心に共鳴音を響かせた歌はどれでありましたでしょうか。
<参考>元永元年(1118年)佐藤義清誕生。
    保延 6年(1140年)出家。法名円位、西行と号す。
    保元元年(1156年)鳥羽院崩御、保元の乱。
    治承 4年(1180年)6月福原遷都。8月頼朝挙兵。
    建久元年(1190年)2月16日河内の弘川寺にて入寂。

 






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最終更新日  2014.07.13 20:45:19
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Re:月見れば・・(05/06)   ビッグジョン7777 さん
共鳴音の響いた歌

《何ごとも 変りのみゆく 世の中に 同じ影にて すめる月かな》

昨夜9時過ぎ、空を見上げると満月
でもいつもと何か違う感じがしました。

カミさんは月がいびつに見えるという。
目の方がどうかしたんじゃないの(笑)

今朝のラジオで、昨夜の月はスーパームーンであった、といってました。

スーパームーンとは、通常の満月より大きく明るい満月のことだそうですが・・・。
(2012.05.06 21:18:02)

ビッグジョン7777さんへ   けん家持 さん
 共鳴音の響いた歌は、
何ごとも 変りのみゆく 世の中に 同じ影にて すめる月かな
でありましたか。

照る月の 影は変らね 常ならぬ 人はそれぞれ 思ひあるらむ (偐家持)

 そうでしたか、昨夜の月はスーパームーンでありましたか。道理で近視の小生にもよく見えたのですな。常よりも白く大きく見えたような気がしたのでカメラを向けてみる気になったのですが、小生の安直なコンパクトカメラでは上の写真が精一杯でありました。しかし、急に大きくなるのではなく徐々に大きくなったのでしょうから、毎日見ていたら気付く筈もなく、また、そうでなくとも14パーセント程度大きくなったからと言って、それに気付く筈もなければ、やはり「そんな気がした」というのが、正しい処でしょうね。
 山の端に昇ったばかりなど、地上のものとの比較で起こる錯覚で、中天にある時よりも大きく見える、その錯覚による「大きさ認識」の誤差はきっと14パーセントよりもずっと大きいでしょうから、スーパームーと雖もさほどのこともない大きさの変化でしょうな(笑)。
 先月いつぞやのブログ記事で、西行の月の歌は「秋」まで残して置く、というよなことを書いた記憶がありますが、その舌の根も乾かぬうちに、月の歌を記事にしてしまいました(笑)。これも昨夜の月が白っぽく明る過ぎた所為であります。 (2012.05.06 22:45:24)

Re:月見れば・・(05/06)   英坊3 さん
おはようございます。西行法師の歌との出会いでムズムズと
歌ごころが騒ぎます。歌は奥を極わめずとも・美辞麗句でなくとも心で詠むと屁理屈をつけてる自己満足の輩です。句のなかで共鳴音の句を?ですが・・「こととなく・・月の影」ですかね。橋つながりでの 戯れ歌ですが一句・・

 「くればしを 恋いを背おいて わたるしも

        足を見すれば  箸の橋かな」

 えへっ・・私の場合は「恋い」でなく「鯉」ですよ。 (2012.05.07 06:12:02)

英坊3さんへ   けん家持 さん
英坊3さん
おはようございます。
貴兄の◎歌は「こととなく君恋ひわたる橋の上にあらそふものは月の影のみ」でありますか。
 この歌は、西行とは親しかった西住が高野山の西行の草庵に訪れた際に、二人一緒に奥の院の橋の上で月を眺めたことの喜びを詠んで、都に帰った西住に贈ったものです。
西住の返歌は、

思ひやる 心は見えて 橋の上に あらそひけりな 月の影のみ

です。
万葉歌でもそうですが、和歌の世界では男同士でも「恋」という言葉を使い、まるで恋人に贈るような歌を詠んでいますな。
 まあ、偐万葉の世界にあっては、恋でも鯉でもいいし、橋でも箸でもいいのではあります(笑)。

>くればしを 恋いを背おいて わたるしも 足を見すれば 箸の橋かな

 例の公園の割り箸で作られた橋の歌ですね。反り橋は南船北馬の華南地方の呉の橋。呉橋に対する言葉は「唐橋」ですから、小生は唐橋を渡りましょうかね(笑)。

唐橋に あらそひかねて 瀬田の月 恋のわりなき 橋渡るらむ (偐家持)

「わりなき仲」とは男女のどうにも抑えきれない親密な関係を言いますが、「わりなし」という言葉は色々な意味があり、こういう言葉は、和歌の持つ「曖昧性」「意味の多重性」には似合いのものとも言えますな(笑)。今回は、割り箸(わりのある橋<箸>)に対する、割のない箸<わりない橋>という駄洒落でも使ってみました。 
(2012.05.07 09:21:49)

Re:こんにちは~。  月見れば・・(05/06)   ひろろdec さん
月を恋うるうたがこんなに..◎◎ノ
素敵ですね。^^
夜、二階のカーテンを締めるとき、決まって東西の森の上の空を見上げ月を確認するのが習慣になっています~♪。
自らはひかりを発っせずとも ひときわ大きく輝いて何て美しいんだろうと..
スーパームーン!!の名のとおり 素敵な写真ですね☆
(2012.05.08 10:34:40)

Re:月見れば・・(05/06)   小万知 さん
GWの最後、夜空が冴えてひときわ大きな満月がうかんでいましたね。優しく近くまで降りてきてくれたのかと思うほどでした。
月の光は様々なことを浄化してくれるような働きもしてくれるのではないでしょうか?
心響かせてくれた歌がいくつもあるのですが、中でも、
おもかげの 忘らるまじき 別れかな 名残をひとの 月にとどめて  です。
先に天に召された友のことなど思い出させてくれます。 (2012.05.08 15:39:22)

ひろろdecさんへ   けん家持 さん
 月見れば千々にものこそ思はるれ、とは言え、まあ、よくも西行さん、月を見て色々とものを思われたものであります(笑)。毎夜、東西の森の上の空を見上げて月を確認するのがならいとのこと、なかなかによき習慣であります。小生なんぞは、一体「月」に一度でも「月」を見ればいい方かも知れませぬ。
 太陽は毎日、見るという意識なくとも目に飛び込んで来る否応のない力を持った光ですが、月の光はさりげなくあって、意識しないと目に入って来ないようであります。

(2012.05.10 14:19:49)

小万知さんへ   けん家持 さん
 近頃の街の中は夜も明る過ぎて、いよいよ月の光の存在感が薄れてしまったようです。「星明かり」は勿論、「月明かり」も死語となってしまいそうな気がいたしますな。

奥山に 入りてこそなれ 月明かり 徒に照る 近頃の月

僕らの感覚を鋭敏にするためには、時には、純粋に月の明かりだけの夜を味わってみることも必要かも知れませんね。さすれば心も少しは浄化されるような気にもなるのかも。
>おもかげの 忘らるまじき 別れかな 名残をひとの 月にとどめて 
 この歌がお心に響きましたか。ちょっと、調べてみないとよくは分りませんが、感じから言って、鳥羽上皇が亡くなられた時の歌ではなかったかと思いますが、さてどうでしょう。月影は亡き人を思い出させたり、分れた恋人や遠くに離れている人を思い出させたりもするもののようです。
(2012.05.10 14:45:41)

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