偐万葉田舎家持歌集

2021/10/01(金)22:58

墓参・韓藍の花

万葉(82)

​​​​​​ ​今日は、月例の墓参。  今まで気が付かなかったが、我が家の墓の近くのお墓に立派なケイトウの花が​咲いていました。 ​​ (墓地に咲くケイトウの花)  ケイトウは鶏頭で、ニワトリのトサカに似ていることからの呼称であり、鶏頭草、鶏冠草などとも表記する。  この花は古来から日本にある花ではあるが、万葉集などでは「韓藍(からあゐ)」と呼ばれているから、韓の国(古代の朝鮮、中国)からやって来た外来の植物である。  万葉の頃は、韓藍という呼称が示すように、舶来の珍重すべきエキゾチックな花であったのだろう。 ​​ (同上)  その墓前に供えてある花にもケイトウの花が混じっていたから、ケイトウはこのお墓に眠る人が生前こよなく愛した花であったのか、それともお墓を守っているお方が好きな花であるというに過ぎないのかなどと想像したり。  まあ、何にしても、墓石よりも草丈が高く、立派に育って、いかにも目立って咲いているのでありました。  万葉の歌でも、恋心を顔に出して目立ってしまうことの比喩としてこの花のことを詠っているものがある。 ​​ (同上)  ケイトウの万葉歌を記して置きましょう。 ​我がやどに 韓藍(からあゐ)蒔(ま)き生(おほ)ほし 枯れぬれど 懲りずてまたも 蒔(ま)かむとそ思(おも)ふ                               (山部赤人 万葉集巻3-384)​(我が家の庭に鶏頭を蒔き育てたけれど枯れてしまった。しかし、懲りずにまた種を蒔こうと思う。)​秋さらば 移しもせむと 我が蒔(ま)きし 韓藍(からあゐ)の花を 誰(たれ)か摘みけむ                               (万葉集巻7-1362)​(秋になったら移し染めにもしようと、私が蒔いた鶏頭の花を、誰が摘んでしまったのか。)​恋ふる日の 日(け)長くしあれば 我が園の 韓藍(からあゐ)の花の 色に出(い)でにけり                                  (万葉集巻10-2278)​(恋しく思う日々が長くあったので、我が家の庭の鶏頭の花のように顔色に出てしまいました。)​隠​(こも)りには 恋ひて死ぬとも み園生(そのふ)の 韓藍(からあゐ)の花の 色に出(い)でめやも                                (万葉集巻11-2784)(人知れず恋い死にすることがあっても、お庭に生えている鶏頭の花のように、色に出したりしましょうか。)​​​​ 前二首は、男性の歌で、韓藍の花を女性に喩えている歌である。  山部赤人さんは、春には女性をスミレに喩えて「一夜寝にける」と詠んだけれど、秋には「鶏頭の花」に喩えて「もう一度恋を仕掛けよう。」と詠んでいる。まさに懲りぬ人である(笑)。  二首目のそれは、恋人を横取りされてしまった男の歌ですな。  後二首は、女性の歌でしょうか。  恋心を顔色に出してしまいました、という歌と、顔色には出しません、という歌であるが、どちらも切ない自身の恋心を相手に訴えかけている歌であるから、歌の意は同じである。  まあ、何れの歌も、墓参に関連付けて取り上げるには、いささか不適切な歌でありました(笑)。  さて、墓参の際の恒例の「門前の言葉」であるが、これは1日の朝ということでもあった所為か、前月の墓参の時の掲示のままでありましたので、撮影はせず、でありました。 ​​ (今日の墓地からの眺め)  朝のうちは台風の影響もあってか、上の写真のように、雲の多い空。  午後になって雲の切れ間が大きくなり、日差しも。  時折、強い風が北から吹いて、午後の銀輪散歩で恩智川沿いを北方向に走っている時などは、いつもより強くペダルを踏むも、風の抵抗で速度はかなり減殺されました。まあ、これは朝の墓参とは関係のない話。  墓地の一番高い位置にあるシンボルツリーのクスノキ。左半分が枯れ始めていることは、以前の記事で紹介しましたが、更にそれが顕著になって来ている気がします。 ​​ (今日のクスノキ)  道の辺の民家の庭先にあるナツメの木の実が茶色に色づいているのを撮影しましたが、帰宅してPCに取り込んでみると、ピンボケ。実に焦点が合っていなかったようで、没に。  帰途、そのお宅の前を通ると、奥さんがナツメの枝を高枝ハサミで剪定して居られました。お声がけすると「枝に棘があるので、迷惑になってもいけないので、伸びすぎたのを摘んでいます。」とのこと。そうか、ナツメには棘があったのか、と今頃気づいた次第。  また、もう少し自宅寄りの位置にある大きな池の土手にオキザリスの花が群れ咲いていたので、撮影。 ​​ (オキザリス・ボーウィ)  学名がOxalis bowiei。  和名は、セイヨウカタバミまたはハナカタバミとのこと。  園芸種が野生化して土手に群生するようになったのでしょう。  在来のムラサキカタバミより花も大きく、色も濃いのでよく目立つ。  カタバミと呼ばずオキザリスなどと呼ぶ点などは、万葉の頃、ケイトウを韓藍と呼んだのと同じ感覚であるのかもしれない。  ジョロウグモの写真も撮りましたが、これは虫カテゴリの記事用に取って置くこととし、当記事には掲載しないこととします。  ジョロウグモは女郎蜘蛛というのが普通であるが、上臈蜘蛛が語源だという説もある。  韓藍も、「み園生の」とあるように、貴族の邸宅の庭である「園・苑」に咲く花であり、庶民の庭や野に咲く花ではない。  従って、それが比喩される女性も韓風に装った官女や貴族の女性であるから、上臈で、上臈蜘蛛と相通じる。よって、この記事にその写真を掲載しても違和感がないのでは、などと考えもしましたが、それはヤカモチ的屁理屈に過ぎず、一般の理解、感覚とは遊離したものであるだろうと、思いとどまったという次第。 ​​​​<参考>万葉関連の過去記事は​コチラ​。​​​​​     墓参関連の過去記事は​コチラ​。​

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る