2008/02/10(日)10:32
スカーレットレター
『The Scarlet Letter(朱紅文字)』 2004年 韓国
監督/脚本:ピョン・ヒョク
出演:ハン・ソッキュ(ギフン)、イ・ウンジュ(カヒ)、ソン・ヒョナ(キョンヒ)
オム・ジウォン(スヒョン)、キム・ジングン(ミョンシク)
* * * * * * *
「愛してたら、許されるんですか?」
冒頭に、“イ・ウンジュ2005年2月22日永眠”という文が掲げられるので
この作品の後で彼女は自ら命を絶ったのだ…という事実を抜きにして、
まっさらな気持ちで観賞することは、もはや不可能となってしまいました。
(それとも日本版だけかしら?)
彼女の役どころはジャズシンガー。
ステージで歌う姿は何とも言えない美しさと色気を感じます。
歌声も素敵です。
まさに、このシーンこそ、彼女の遺作にふさわしいかと思います。
その先の展開は賛否両論かも。
【注意】 以下、ネタバレ含みます―
それから、アダムとエバに関する聖書の記述が続きます。
神から禁じられた“善悪の知識の木”の実を最初に食べたのは女で、
女から勧められ男も食べた…という部分です。(創世記3章6節)
これって実際には、
女はサタンの誘惑に負けてしまったけれど
男は理性で判断して、神を離れ独立の道を歩む決定を下した…ということなのですけど
この作品においては、
男女間の誘惑、男と女の資質の違い…等が表されているかなあ、と思います。
勿論、それに伴う所謂“罪”がテーマにもなっています。
殺人に始まって、中絶、不倫、同性愛、嘘、裏切り、憎悪、傲慢、自殺…等々。
久し振りのハン・ソッキュ主演作に、まず最初に思ったのは
「ソッキュッシ、若い!」でした(笑)
私的にはソッキュッシといえば中年の哀愁でしたから>ぉ
車を飛ばしながらオペラに合わせて歌う姿は、
(ま、ソッキュッシのことですから声も良いし、カワイイと言えるのですけど・笑)
ひとりの男性として見た場合、非常に能天気かつ傲慢な印象があります。
それに、やたらと髪をかき上げる仕草が多いんですが、これまた
“イイ気になってるバカな男”そのままで(笑)
そんな彼@ギフンの職業は刑事。
担当するのは聖母マリア像で撲殺された写真館主の事件。
犯人と疑われるのは被害者の妻で、最初は地味に見えたんですが
なかなか妖艶でミステリアスな女性だということが段々分かってきます。
彼女は夫に内緒で何度も中絶をしていたらしいし、愛人の影も見えてきます。
ギフン自身も不倫愛の真っ只中にあります。
妊娠中の妻スヒョンは以前、彼に内緒で中絶をしています。
愛人カヒもまた妊娠が判明します。
こんな風に、事件とギフンの私生活とがシンクロして行く…
という意図は分かるのですが…
イマイチ迫ってこなかったな(^^;)
事件は、どんでん返しがあるのですけど…どんでん返しと言うほど意外でもないです>ぇ
それに、その直前のギフン自身の上に起きる出来事の方がインパクトが強過ぎて
事件の方は蛇足とさえ感じられてしまう程。
事件の真相は、その出来事におけるギフンの立場と重なるものではあるのですけど、
これまたイマイチ迫ってこなかったな(^^;)
では、何が見どころかというと、そのギフンが経験する出来事に他ならないです。
ちょっと唐突で、ギャグ一歩手前って感じで、
そこだけ浮いてる気もしないでもないんですが…でも、有り得ないことではないし…
その後に続く状況はシリアスとしか言いようがないです。
最初はカヒが意図的に起こしたことかと思っちゃいました。
ギフンと朝を迎えること…彼女がずっと夢見てきたことが、叶ったわけですから。
究極の状況の中で、ギフンは怒ったり焦ったり罵ったり…醜態を晒しますが
最後にはカヒに子供のようにすがるのです。
母親のように彼を抱きしめるカヒは、その数日間で、
ギフンとの結婚生活を一生分経験することが出来た…とさえ言えると思うのです。
でも、途中で彼女も取り乱すシーンがあるので、やはり事故だったのでしょうね。
…って、あんな極限状態に自らを置くほど、さすがのカヒも狂ってはいなかったでしょう。
その時には、まだ。
『スカーレットレター』というタイトルは、勿論
ナサニエル・ホーソーンの小説(邦題『緋文字』)から取られています。
姦通の罪を犯し、“A”(Adulteryの頭文字)の赤い文字を縫い付けた服を着た女性の物語。
自分の子供には真珠(パール)と名付けたい。
それは『緋文字』の主人公の子供の名前だから。
というカヒの台詞があります。
こちらに登場する“文字”は愛の言葉であり、不倫関係の証明でもあるという
イコールのような相反するような、皮肉なアイテムです。
“スカーレット”は文字通り血の色も表しているのでしょう。
罪の色とも言えるのかもしれませんが。
血にまみれたギフンの裸体が目に焼きついて離れません。
ソッキュッシは出演作ごとに、お尻を披露してくれますが>ぉ
今回はサービスショットというより>ぇ
血の色を引き立たせるキャンバスのようになっています。
結局のところ、この作品で一番描きたかったものは、真っ赤な血の海…
ではないかとさえ思えます。
ていうか、その中でのた打ち回る愚かな人間の姿かも
プライドも尊厳も、地位も名誉も、知性も…いえ正気さえも脱ぎ捨てて
剥き出しの身体を真っ赤に染め、悪臭を放つ様子なのかも。
それは、あのような状況に追い込まれなくても人間は日々曝け出している姿なんですよね。
ただ、自分もその中にいるから目立って見えないだけで…。
ラストでスヒョンは指輪を外し、息絶えたカヒの指には指輪が光っています。
最初から、こうなっていれば悲劇は起こらなかったのに…。
それで幸福であったかどうかは分からないけど。
女性を誘惑することに喜びを見出して傲慢になっていたギフンですが、
実は木の実を差し出したのはスヒョンの方であったのですね。
でも、そんなスヒョンはカヒに差し出された木の実を食べていたのでした。
作品選びに慎重なハン・ソッキュの出演作としても、
イ・ウンジュの遺作としても、
ちょっとイマイチの出来だったかなあ…
でも、レスリー・チャンの遺作よりは胸を張れる作品かも>こら
とはいえ、どちらも
亡くなった本人とシンクロするシーンがあるというのは、どういうわけなんでしょう?
この先、この作品がどんな評価を得ていくのかは分からないけれど
存在している限り、イ・ウンジュの死を背負い続けていかなければならないのでしょうね。
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