もう…何がなんだか日記

来客があるので朝から必死こいて部屋を片付けた。
日頃汚くしているツケだがね。
…ひじゅにですが何か？


【花婿の父によるご挨拶】


え～、え～、ゴホンゴホン
ただいまご紹介に預かりました、康太の父の山田幹太でございます。

え～、
本日はお日柄も良く

え～

とにかく目出度いと！
さあ、皆さん乾杯といきましょう！




え？
これじゃ短過ぎるかね？




え～…

まあ、ワシも家内を亡くして久しいですが、
康太は長男で、しかも一人っ子で、
男手ひとつで一生懸命育ててきました。
観光遊覧船スワン号を康太に引き継ぐことが唯一の夢でした。

スワンというと、幼児用のオマルを連想するお客さんが時々おられますけん、
ワシの父親が命名した時は洒落た名前だと誇らしかったもんです。
メルヘンだがね！って思ったんだがね。

そのメルヘンを是非とも息子に継いでほしかったです。
息子の息子、息子の息子の息子、息子の息子の息子の息子…と
長く長～く続いていってほしかった…

なのに、康太は京都で丁稚奉公。
しかも婿養子で山田の姓も捨てるときたもんだ。
そら、今更文句言っても詮無いけん、承諾はしたがね。
でも、でも、ワシの本当の気持ちは…




え？
話題を変えろ？




え～…

まあ、ともかくも、今日は目出度い。
こんなに目出度い日はないと言えましょう。

思えば息子の康太は何ひとつ満足に出来ない男でした。
決して決してワシに似たわけじゃありません。
ほんでも、めぐみちゃんに対する気持ちだけは一途でした。
だけん、その思いを貫いてほしくて、スサノオだなんて煽ててやっちょったら
コイツはバカだけん、すっかりその気になって…

まあ、今日遂にその思いが叶ったけん、目出度いが。




え？
相手はめぐみちゃんじゃなくて、のぞみちゃんだって？
わわわ分かっちょるがね。




え～…
というわけで、いつの間にかクシナダヒメが別人に代わっとったんだがね。
ワシはビックリしたがね。
しかも、もっと美人を捕まえたんなら大したもんだけん、同じ顔だがね。

けど、本物のクシナダヒメは若くして女将をしちょって、なかなか見込みがあるがね。
元クシナダヒメは康太を取られて悔しいのか、花嫁を差し置いて自分が主役顔だがね。
やっぱ、康太の選択は正しかったが。
ワシは、ワシだけは、お前を支持するぞ康太！




え？
ヒロインめぐみちゃんに文句を言うと命がない？
ゴホンゴホン




え～…
ほんでも、これで京都の老舗呉服店“いち條”が息子のもんになると思うと
さすがワシの息子だがね！と誇らしい思いでイッパイです。

ワシも腰が悪いけん、近いうちに船長を引退しなきゃならんけん、
その際は京都に呼んでもらって、若夫婦と住みたいと思っちょります。
毎日お座敷遊びして楽しく余生を過ごすのが今のワシの夢ですけん。
本当に本当に、ようやったな、康太！


え～…
まあ、初枝さんが大変な病気に罹っちょって、
のぞみちゃんの祖母でもあるし、ワシの初恋の人でもあるけん、心配だが。
本当はこげな祝いなんぞやっちょる場合じゃないかもしれんけん…

ほんでも朝ドラでは、ヒロインの結婚は山場だけん
披露宴のシーンだけに一週間も二週間も当ててた作品もあったっちゅうのに
何で、こげに小さい扱いなんかいね？




え？
真のヒロインはめぐみちゃん一人で、のぞみちゃんは脇役だって？
で、康太はめぐみちゃんの払い下げだって？




ゴホンゴホン

ほんでも、ワシはワシの息子を褒めてやりたいし、
心から祝ってやりたいと思っちょります。

ワシの息子はヘタレかもしれんけん、医者にだってヘタレはおる。
人の祝い事の席で家族が嫌がる治療法をゴリ押ししちょるヤツよりは、
七五三みたいなワシの息子の方が立派だと言ってやりたいがね。




え？
そろそろ終わりにしろって？




え～…
次は花嫁の父親の挨拶だけん、KYなヘルン先生は
「この方にご挨拶願いましょう」だなんて、
どこぞの要人でも呼んだかのような紹介の言葉を準備しちょるがね。
松江のトム・クルーズだけん、やっぱワシとは扱いが違うんかね？

え～…
忠君の挨拶はワシはもう把握しちょるけん。
まずは自分語りに決まっちょるがね。

で、メインは
康太&のぞみちゃんへの祝福の言葉でなく、初江さんに治療を勧めること。
ちゅうか、苦しみを恐れ静かに余生を過ごしたいと切なる願いを持つ年寄りに
「生きろ！生きろ！」とハッパをかけることなんだがね。

あれ程反対しちょったのに、石橋さんに唆されて、
一瞬の間にすっかりその気になっちょるんだがね。
頭悪い奴だがね。

でもって最終的には石橋&めぐみマンセーだがね。



ワシは…
ほんでもワシは…
ワシの息子の康太を祝福してやりたいと思っちょります。
ようやったな、康太！
お前は三国一の花婿だがね！

これが康太の青春物語だがね！

以上で、ご挨拶を終わります。
上手く纏められたかね。
ワシって天才かも？だがね。



だんだん。







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☆やっくんち☆

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