厳冬期(?)の瑞牆山
2012年1月9日晴れ瑞牆山(2230m)は東京の比較的近くにある日本100名山だ。岩がそそり立つ容貌魁偉な山容である。「みずがき」とは神社の周りに巡らせる垣根を意味するっそうで、古くから信仰の対象になっていたそうな。大きな垣根であることよ。身近な100名山はいつしか、登ってしまってあったが、なぜか瑞牆山だけは残っていた。伸吉さんも同類とのことで、今回、瑞牆山に行く企画を立てて下さったので、飛びついた。5時過ぎに大泉学園を4人で出た車に、西武新宿線近駅で拾ってもらった。4名中2名とは初対面だった。伸吉さんとは大菩薩北尾根と妙義、高校の先生のイト―さんとは、妙義でご一緒。車は初対面の眞理子さんのバンで、終始、彼女が勇ましい運転をしてくださった。つい1週間前に走った中央高速をひた走り。須玉ICで下りて、北上、増富鉱泉を通過して瑞牆山登山口の駐車場に8:10に着いた。そばの瑞牆山荘はしまっていた。8:35、出発。最初は雪がまばらで、のどかな白樺林の中を行く。途中、暑さのために衣類調整。伸吉さんの歩くペースは私に合っていて、歩きやすい。小屋の直下の水場の水が凍っている。イト―先生が高校生のようにはしゃぐ。9:25、富士見平小屋着。前庭にきれいなトイレ棟があった。ここは瑞牆山と金峰山の分岐点で、富士山も望める。ちょっと昔話;私は高校2年の時に女子4名で奥秩父縦走を予定してここでテントを張った。なぜそういうことになったのか、今にして思うとよくわからないのだが、その晩、台風になってしまった。雨風にたたかれながら“どうせ下山よ”、と、やけくそで皆でお菓子を食べまくっていると、小屋番のおじさんがやってきて、“ただでよいので小屋に入りなさい”と、言って下さった。ありがたく、お言葉に甘えさせていただいた。多分2泊させていただいただいた。台風が行き過ぎてしまうと絶好の好天となり、女子高校生4名は気を取り直して縦走を再開したのだった。小屋番の方は、“30分に1回休んで、ゆっくり歩きなさい”と、さとすように教えてくれた。穏やか出やサッシい方だと思った。途中、埼玉県の観光宣伝映画の被写体にされたり、エピソードの多い山行だった。おじさんのことと恩を忘れることはなかったが、富士見平小屋を再訪する機会はなかった。昔と変わらないたたずまいに、懐かしくなって小屋の中に入ると、中年のご夫婦が入口の右手の管理人室で炬燵に入っていられた。“なつかしくて、入ってきました”と、ご夫妻に挨拶。おじさん(相川さん)は、韮崎高校山岳部OBで、37年前から11年間、学生時代を含めて小屋番をし、2年間に定年になって、小屋番を再開されたそうだ。私たちを泊めて下さった方の話になったが、相川さんではなく、“藤原さん”ということがわかった。しかし、藤原さんは、その1年半後に交通事故死されてしまったということで、その死を悼んだ。その後、まずい小屋番が続いて、不幸な事件が起こった。私は報道された犯人の写真が、親切にしてくださったおじさんでないことを知り、胸をなでおろしたことを覚えている。小屋は営業をしていなかった時期もあったが、現在は観光協会が営業し、相川さんご夫妻が必要に応じて小屋番に入られるらしい。長話をしてしまい、皆を待たせてしまった。おじさんは、見送りがてら、“雪は少ないので、アイゼンは不要だろう”とのコメント。9:40 富士見平小屋出発。小屋の左から針葉樹林の林に入っていく。左手の木立の間から、天鳥川の谷をはさんで見事な岩をいくつも屹立させた瑞牆山の稜線が見れる。“あれを縦走したら面白いそうだけれど、実際は一つも登れないかな”と、伸吉氏。しばらく樹林帯の中を進むと、小川山へ行くルートを右の深い樹林の中へわける。天鳥川へ下りて、源頭部を渡るとベンチのある広場があり、一休み。脇に、真ん中で立ち割られたような大岩があった。そこからしばらく沢沿いに歩く。沢の水は氷瀑となり、こちこちに凍っている。一部に階段もある。やがて、右岸の急坂の登山道に取りつく。原生林の中の岩の間を小人になったように縫っていくような場所もあった。左手前方に、壮大な大ヤスリ岩が見えてきた。日を浴びてそびえている。樹氷が青空に白い桜のように輝く。小春日和のような好天で、帽子を取った伸吉さんの頭から盛大に湯気が立っていた。頂上は大ヤスリ岩と頂上の大岩との間を裏側から回って登る。私達を追いぬいていった70歳台と思われる男性が下りてくるのにすれ違う(!)。そこで反対側の釜瀬川からのルートと合流する。直下に登りにくい岩があって、補助紐が下がっていた。12:10 瑞牆山山頂(2230m)。ちょっとすべりやすそうな岩の山頂だ。360度の大展望。慎重に写真を撮りまくる。北西の八ヶ岳は上の方に雲がかかっている。私は来週は八ケ岳だ。南西は茅が岳。南東は累々たる岩の向こうに奥秩父連山、金峰の五丈岩がくっきり。大ヤスリ岩は見る角度によって様々な形になって、面白い。釜瀬川側から登ってきたらしい登山者も数名いたが、ほとんどの時間、貸し切り状態だった。風をよけてランチを取る。12:50 山頂を後にする。15:07 富士見平小屋着。相川さんに挨拶に行くと、“金峰山に登った宿泊客がまだ戻らずに、自分たちも下山できない”とのこと。ちょうど、その時に戻ってきた模様。ドリンクを買おうとしたら、ビールも凍ってしまうそうで、あまり品を置いていず、濃いブドウジュースを買った(おいしかった)。相川さんの予言通り、アイゼンは使わなかった。15:30 小屋を後にする。途中、樹間から山頂部が見える場所が あった。16:00 駐車場着。伸吉さんが所属会に計画書に出した時間と ぴったり同じだった。(今回、ご一緒してくださったメンバー)増富の湯で温泉につかる。泉質は「含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」だそうで、濃い黄土色で濁っている。25℃の湯につかってから35℃の湯につかると、いつまでも入っていられて、疲れが洗い流されるようで、気持ち良かった。韮崎に行く途中、141号の国道沿いにソバ屋(La soba)があり、入る。伊勢丹に卸しているらしい。思わぬおいしいそばだった。ナマスなどの漬物の食べ放題もありがたかった。20時半帰着した。