町のホルモン屋さん 山田ホルモンの若旦那

2008/02/22(金)23:47

相反するココロとカラダ。

若旦那の日記(105)

仕入れは今のところ社長の役目である。牛をもらう頭数が増えると、私も月に何度か呼び出しを受ける。『明日は一緒に仕入に来い!』 いつもはやんわりと、『明日(ネットの)発送が少ないなら、仕入に行かんか?』と疑問系だが、今回は問答無用っといった感じである。 仕入の手伝いをあらかた終え、1人で車の帰り道。角を曲がりいつも通る電車の踏み切りが遠目に見えた。目の錯覚か、おじさんが踏み切り棒をベンチプレスのように頭に持ち上げる光景が見えた。 車が踏み切りに近付くにつれ状況がつかめてきた。線路内に軽トラックが入り込んでいるのが見えたのだ。 けたたましく鳴る警鐘音。右往左往するおじさん。踏切りの向こう岸で何か叫んでいるスーツ姿の女性。 私は車から飛び降り踏切り棒を折りながら、軽トラックを引っ張りだした。ニュートラルになっていたのが幸いで、車はなんなく線路内から脱出。程なくして普通電車と特急電車が交わるように現われては消えていった。 間一髪の救出だった。私は折った踏切り棒を道路の端へやりふと我に返った。私が軽トラックを確認したとき、既に軽トラックの後続車が3台ほどあったのだが、誰も車から降りなかった。 私は自分を英雄視してるのではなく、また車から降りなかった人たちを非難しているわけではない。逆に何故私は車から降りたのか?角を曲がったとき、踏切が閉まってどれくらい経過したのかを把握していなかったにも関わらず。もしかしたら既に電車が近付いていて、軽トラックごと巻き込まれていたかもしれない。 人は私を見てバカと呼ぶだろう。傍観者でいれば怪我をするリスクも背負わず、落ち着いて難を逃れればいい。「ええカッコせんでもいいやん。自分が悪いんやけ。向こうが怪我を負っても、あんたまで怪我せんでもよかろうに…」心の底ではそうおもっていた。 踏切が開いた。私は車に乗り込み線路を渡った。そして車を端に停め、もう一度車から降りた。へし折った踏切り棒の処理を考えなくてはならない。軽トラックのおじさんは踏切りの前でさっき私がへし折った踏切り棒を片付けていた。向こう岸で大きな声で叫んでいたスーツ姿の女性が携帯を片手におじさんと話している。恐らく鉄道会社にでも電話するのだろう。 私は踏切りの向こう側で行われている光景を人事のように見ながら、何故か車に乗り込んでいた。私はもうこの場に必要ではない。そんな私もまた傍観者であった。

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