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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

●(編集終了)●腐敗惑星● 1

●(編集終了)■腐敗惑星■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://w3.poporo.ne.jp/~manga/pages/
腐敗惑星(1)
 ミラーは闇の中を飛んでいた。宇宙連邦の辺境、腐敗惑星の上空だ。
 惑星は相もかわらずどろどろした色をしていた。そして、蠢いている。生命体が一部分生息しているなどとは、想像もつかない。
 ミラーはすでに惑星に降下してあったポッドを回収していた。このポッドから、この星の情報を得ているのだ。
 時々、惑星表面の腐肉によってポッド内部が侵食され情報を発しなくなる。それを発見し、収容し補修するのが、ミラーの仕事だった。
 他の仕事といえば、この星への侵入者を破壊するドリフィングゲートのメンテナンス。 ドリフィングゲートには光子ミサイルが装備されている。
 ミラーの現在唯一の話し相手は、この小型宇宙船のコンピュータ、ツランだけだった。このツランは女性のパ-ソナリティ設定にしてある。
「この星に本当に宝があるのかな、信じられないね、ツラン」
 コンピュータ、ツランは答える。「データがないんだららね。答えようがないじゃない。無理いうんじゃないよ。私はそれでなくても忙しいんだから。自分で考えなよ」
「まあいいさ、独り言だよ。さあフライトデッキへ帰り、ラフラタの顔でも拝むか、あの不機嫌な顔をな」
「よーく、言うよ。あなたも不機嫌な顔だよ、負けずおとらずね」
 腐敗の風が、ミラーの小型宇宙船の外を吹き荒れている。
 フライトデッキは降下ポッドを管理する惑星ステーション。惑星の周遊軌道に乗っている。がこのオートメーション化されたステーションには2名しか配属されていない。この星は重要視されていないのだ。 

 『我らは風民(フーミン)、歴史の表面にでることはない。が、我らは必ず、この星の歴史の変遷に居合わせる。連邦の監視機構の奴らは我らの存在すら、きずかぬ。が我らは生きている。存在している』
 形もなく、姿もみることのできぬ意識体がこの惑星上空部に生息していた。

《回収子ゲノン》
遠い旅だった。やっと恋人に会えるのだ。が、その恋人はもう過去のことは忘れている。なぜあの星に飛来してきたのか。そんなことすらも、ひょっとして昔の恋人であるゲノンのひとすら覚えていないのでは。ゲノンはぞくっと身震いした。そんなことはありえないはずだ。我々の種族は記憶をよりどころに生きている種族なのだ。それゆえに、回収子「ゲノン」の役割は大変なのだ。このあたりの宇宙の記憶を任務づけられた端子、コードネーム“レムリア”が、連絡をしてこないばかりか。どうやら形態変化を起こしたらしい。そういう報告が、「ノド」のドームに連絡が入ってきていたのだ。急遽、回収子が派遣されることになった。それがゲノンだった。

《回収子ゲノン》
「何という汚らしい星だ」
それがゲノンが腐敗惑星を見た印象だった。肌色か、人間体の血色、その肉色、どすぐろく腐った色が地表の上で、ぐるぐるまわって移動していた。まるで惑星自体が生物で、腐った肉の海がたゆとうているようだった。臭い感覚はゲノンにはなかったが、もしゲノンにそれがあるとしたなら、嘔吐していたろう。それほど遠くから見てもおぞましい星だった。本当にレムリアは、まだこの星で生き残っているのか。絶望がゲノンの心を占めた。

(2)
 一角獣は、長い時間、舞おうと思った。その行為が償いにあるかもしれないと思ったからだ。その行為以外に感情を表す方法がなかつた。涙もでなかった。はぎ取られてしまった人間としての感情。心の動きは決して戻ることはないだろう。
 筋肉がはためく。血流が彼の体を巡る、波打つ。充分な酸素が必要だつた。この星はあまりに寂しい。彼の体を充分に動かすにたるだけの酸素がなきに等しい。
 昔の元とうりの自分の姿を思い起こそうとする。が、残念。記憶がないのだ。誰かにははぎ取られた、そんんな気がした。
 『僕は一体何者だったのだろう。今の僕は一角獣だ。悲しさを紛らわせるために踊るんだ、一角獣にすぎない事を忘れようとして。それもこの放棄された星の上でただ一匹だけだ。なぜなんだ。寂しいよう』
 彼は興奮していた。顔には何かが濡らしている。
『何、これ、生暖かいよ。いやだよ。血だよ』いましがた、彼の鋭い角が屠った相手の血だった事にきづく。
 『僕の踊りは死の舞踊だったんだ。任務はこの呪われた星の腐った生物を殺戮することだ』彼は急に自分の任務にきずく。
『でも、一体だれが僕にこの役割を』いっそう疑問が深まる。。
 腐敗の肉は一角獣の足まで及んでいた。少し動くと足がずぶっと沈んだ。目の前で爆発が起こる。何やら、分からぬ生物の内蔵が膨れ上がり破裂したようだった。臭気が立ちのぼり地平線は真っすぐには見えない。歪んで見えた。
 彼の頭の中に、急にイメージが広がっていた。記憶がもどったのか。それとも。
(禁断の実を発見し、彼女がそれを食べたなら、そう、王が発生するかもしれん)
『一体、何なの、このイメージは。禁断の実だって、それに、彼女だって。何なの』
 この意識の流れは。彼は一層激しく体を動かす。目の前の腐敗物へ体ごと、身をぶつけるユニコーンだった。

 ある日、特別な奴が彼の前に姿を表している。そやつは、親しげに話しかけてくる。
「目覚めよ、レムリア。私だよ。思い出してくれ。私は回収子ゲノンだ。覚えていないのか」
 その物体は、必死だった。自分のことをわからそうとして。
「レムリアだと、それが僕の名前だというのか」
「思い出せ、お前が何者なのか。そしてなぜこの惑星にいるのか。この腐敗惑星にいるのか。一角獣は雌雄同体だから、覚えてはいまいがな。君は我々を裏切り、寂寥王の愛人になったんだ」悲しそうな声だった。なにが悲しいのか、一角獣にはわからない。
 『僕が愛人だと、どういうことかい』
「この腐敗惑星で何故、お前だけが、腐敗しない。それがおかしいとはおもわないのか」「なぜというんだ」
「寂寥王の残留思念が、君の体に働いているのだ。寂寥王の分身を守るために、変身させられた」
「何の話かわからない」
 この生物はそうわめいている。どうやら、これは声ではなく、彼の意識の流れの中に直接語りかけてくる。心の中にはいってきたのだ。
「助けに来たんだよ。さあレムリア。私と一緒に帰ろう。お願いだ」
しかし、彼は答えるかわりに、その生物を屠ろうとした。
「レムリア、君は私を殺そうとするのか」
「かわいそうな、レムリア。君の体は霊体なんだ」その回収子ゲノンの最後の意識だった。『僕のことをばかにする奴は、生かしてはおけない。それに、この腐敗惑星では、どうせ長くは生きていられない』

(3)
 風族は、この惑星のいかなる場所にも存在した。風族は意識体である。この星に偶然呼び集められ、この場で殺された者たちの残留思念である。すべての生命体が風族になれるわけではない。ある一定の基準があるようだ。だが、どの生物の意識が風族とされ、またされないのか、決定者の姿を見たものはいない。決定者の存在を感じたこともない。がしかし、確かにその存在はあると考えられていた。風族たちはときおり、地表近くにまでおりていくことがある。この星の地表の臭気をふきとばさなければならないのだ。この星の地表はすべて、くさった肉なのだ。ドロドロとしたいやらしい臭いと破裂音がする。ガスが立ちのぼってくるのが地表だった。
 風族たちは時折、想像することがある。かってはあの屍肉が我々だったのだと。考えるだけでおぞけをふるう。が腐敗菌を運ぶのは彼ら、風族なのだ。
 腐肉は、表面からずっーと地中奥深くまで続いているという。次々から、次へと上空からいろいろな生物が降ってきて、屍肉となっていくのだ。
 この星は、いわば宇宙のサルガッソー海だ。

■腐敗惑星■
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