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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

腐敗惑星● (7)から

SF小説■腐敗惑星■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://w3.poporo.ne.jp/~manga/pages/

腐敗惑星(7)
 彼女は《静かの海》にある地下羊宮の中で成長した。彼女に対する学習は、この羊宮で
行われた。彼女のカプセルにコードが結ばれていて、データバンクの膨大な知識が毎日、
毎時間、彼女の頭の中に埋め込まれていった。 ある時、彼女を包んでいるカプセルが自
壊した。体がカプセルのセルから投げ出された。《静かの海》から膜を透過し、操作卓のあ
るフロアに降り立っている。大人になったのだ。 『記憶工房』そう書かれたコアの前に
たっていた。無数のコアがこの羊宮を守るように取り囲んでいる。このコアの前まで自ら
来てその内の一つに入る。ここに用意された機械は、過去、誰かが使っただった。新品で
はない。しかし、何年も使われていないようだった。
 CRTと操作卓がある。彼女が前に行くと繭がくるむように、椅子がでてきて彼女を座
らせた。自動的にCRTが蘇る。彼女の指が知らぬ間に操作卓に乗っている。
『生体コード』そうキーボードを押す。そのCRTから文字が出た。
『生存目的 不明』
『生命形態 不明』
 生命体コードからは何も分からない。ちなみに名前はどうなのだろう。何かの表示がで
た。
『トリニティ』
「これがあたしの名前なの」独りごちた。
「でも、トリニティってどういう意味なの」 彼女は再び、キーボードを操作する。
『不明』
 昔、彼女に生命を与えるために来たといった男のことを思い出していた。
「一体、あのおじさんは何者だったのだろう」 CRTにたずねる。
コード『ガルガンチュア』
 そのほかは相変わらず、一切不明だった。このコンピュータが答えたくないのか。それ
とも知らないのか。
「どっちなの、答えてよ」思わず彼女は声をだして叫んでいた。
「知らないのだ」コンピュータから、急に声がかえってきた。
「今の声は一体だれ」
「ワシか、ワシの名前はチャクラじゃ」CRT画面に疑似映像が出現し、それが応える。「あ
なたは、しゃべることができるの」
「今、しゃべることを思い出したのじゃ」
「この画面の名前なの、チャクラって」
「おばかさんじゃな。この地下の羊宮すべてをいうのじゃ」
「地下羊宮って」
「お前を保護している場所全体をいうのじゃ」「ええ、おじいさん、わかりやすく話してよ」
「わしはじいさんじゃないわい。チャクラというのじゃ」
「じゃ、チャクラのおじいさん、説明してよ」 キーボードをさわるトリニテイの前に、
男が出現した。
「チャクラじいさん、体があるの」
「わしにだって体くらいあるわい。といえ疑似肉体じゃがのう」
 保護者であるチャクラとトリニティの出会いだった

「ねえ」トリニティはチャクラに、今までに学習したことから、類推し尋ねてた。チャク
ラはトリニティとしゃべる時は、常に疑似肉体をあらわせていた。
「あたしにお父さん、お母さんはいるの」
「いない、お前は天外孤独じゃ」
「じゃあ、なぜ、あたしはここにいるの」
 チャクラは黙った。
 (ははあん、まだ、あたしにいえない何かがあるのね。あたしに言うと具合が悪いから
隠しているわね)トリニティはそう思った。

「トリニティ、お前はそろそろ外界へ出る時かもしれんのお。お前には成人式が必要なの
じゃ」ある日、おもいがけずにそう言われた。 (外へでるですって。いやだなあ。外へ
行かなくてすむように、どうごまかすかだわ)「でも、チャクラ、あたしはまだまだ学ぶこ
とがあるような気がする」
 チャクラは答えない。トリニティはチャクラのきげんを探ってみるため、やんわりと尋
ねる。
「外界に行って、そこで何をするの」
「お前の役割をはたすのじゃ」
(つまり、仕事を外でしろって事ね。嫌よ。しかくない。仕事なんて)
「どんな役割なの」
「お前は《禁断の実》をみつけなければならんのじゃ」
(禁断の実ですって、何、それって。勉強していないわよ。でも、何か大変なことがおこ
りそうね。あぶないわ)
 そのトリニティのおもいを気にせずにチャクラは続ける。
「《禁断の実》はワシ『チャクラ』の分断された体の一部なのじゃ。記憶容量ががっちりつ
まったメモリーバンクじゃ」
「という事は、チャクラの記憶容量は充分ではないというわけね」
(もう、今までの勉強でうんざりよ。これ以上の勉強なんて、必要ないわよ)
「その《禁断の実》は、はるか昔、世界がこうなる前には、ワシの体に組み込まれていた。
ある者がワシから盗み去ったのじゃ」
(盗んだですって。偉い、偉い。その人はほめたたえらえるるべきよ)
「ある者って、チャクラの敵なの」
「昔は友達じゃった。が、しかし今は敵じゃで」
「昔は友達?じゃ知りあいなのね。チャクラと同じ様な体をしているの。もしそうなら動
けないじゃない」
「彼らは動ける。それもかなりの高速で空間を移動できるのじゃ」
(ええっ、何ですって)
「彼らですって」
「そうじゃ、彼らの名前は戦闘16面体。おまけに彼らのボディはワシがプランニングし、
作りあげたのじゃ」
(きゃっ、戦闘16面体ですって。聞いただけで怖そう。いやだわ)
「どういう目的で、その彼らを作ったの」
「お前を守るためにじゃ」
「それが、あなたのもとを出ていったの。あたしを今でも守ってくれるのね」
 ふーん、安心と思ったトリニティだったが、チャクラの答えは想像とちがった。
「残念じゃが、トリニティ、今の彼らが、お前の成長をしれば…」トリニティはチャクラ
の答えを待つ。
 チャクラはしばらく考えていた。再びトリニティが尋ねる。
「戦闘16面体が、あたしにあえばどうなるの」 いいながらトリニティは、心臓がとまり
そうよ。
「お前を殺そうとするじゃろうて」チャクラは平然と答えた。トリニティは衝撃をうける。
(うわーん、何よ。どういう運命なのあたしは。悲惨だわ。これからのあたしはどうなる
の。そんなにあぶないところにでていけというの。そんなのないわよ)
 トリニティは、ここから、逃げ出そうと思った。

「チャクラったら、本当にこんな不細工なかっこうで外へ出ていけというの」今トリニテ
ィが着ている外出用の服は、学習機で学んだ古代の重い潜水服にそっくりだった。
「イヤよ、こんな装備。レディのかっこうじゃないわよ。チャクラってフアッションのセ
ンスはゼロじゃない」
「いいじゃないか、お前のフアッションセンスの方がおかしい。これは非常に安全なのじ
ゃ。実用的なのじゃ。お前の成人式のため特別にあつらえたのじゃぞ」
「重たい装備!なんで、ここにずっーといちゃいけないの」
「トリニティ、ききわけのない子じゃ。子供はいつか巣立つものじゃ」
「いいのよ、あたしは巣立たなくても」
「わがままを言ってはいかん。これは運命なのじゃ」
 運命。その言葉を聞いた時、トリニティは『君に命を預けにきた』と言った男を急に想
い出していた。
「あーあ、あたしって不幸な女だわ」
「トリニティ、不幸かどうか、お前の年令でわかるものじゃないぞ」
「わかるわよ。いやという程、この世界のことを学習機で勉強したんだから」
「学習機の授業など、過去の遺産にすぎん。現実はもっと厳しいぞ」
トリニティは今まで通ったことのない通路をあるかされていた。
「何、この通路」
「外へでるための通路じゃ。そこにエレベーターがあるじゃろ。それに乗り、表へでるの
じゃ」
エレベーターにトリニティが乗ると静かにしまった。
 内線電話でトリニティがしゃべる。
「悪いが、トリニティ、わしは表へいけないからの。お前一人でがんばるんじゃ」
「それで、チャクラ、いつ帰ればいいの」
「何をいっとるのじゃ、ここへは2度と帰れん。それは産道エレベーターじゃ。お前がで
ると自動的に破壊される。一方通行じゃよ」 チャクラは恐ろしい事を平然と言う。
「そんなのないわよ、チャクラ」


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