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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

石の民「君は星星の船」■第3章 光二

SF小説■石の民「君は星星の船」■(1989年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://w3.poporo.ne.jp/~manga/pages/
■ 石の民「君は星星の船」(1989年作品)■
■ 第3章 光二

 第2宇宙サーゴン、ドーム都市。ドームはこの廃墟を思わせるサーゴン星の表面に異様
に目立っている。戦雲がさった星に、残ったわずかな構造物のひとつだった。
 光二はVグループのキッズの一人をホースからたたきおとしていた。乱戦だった。この
ドームの支配を大きなものにするために。
「おねえ」光二は叫んでいる。Vグループのキッズとの抗争だった。光二が横を見ると、
信じられない光景が光二の目に入ってきた。こんな事がありえるのか。まさかこんな事が。
信じられない。
 有沙がホースからずり落ちて、ゆっくりとまるでスローモションの様に地面に落ちて行
くのが光二の目に映っていたのだ。
 有沙。たったひとりの姉。その姉の体が落下していくのだった。
「有沙」その光二の声は、ドーム都市に反響するほどだった。地面におちた有沙の体はす
こしばかりはねあがり、再び地面でとまった。首が横に曲がり、赤いものがちびちった。
光二の生きててくれという願いは、むなしかった。確実に死んだだろう。子供の頃から、
死体を、山とみてきた光二にはそれがわかった。「おねえ」光二は地面に突進した。上空で
は、光二が地上にむかったのを機に、Vグループのキッズがあっというまにいなくなって
いた。Vグループのヘッド登が、この機に逃げろとの指示を与えたのだろう。Bグループ
が待ち伏せていたのだ。Vグループは不利だった。光二はホースをあやつり、地面に降り
立つ。いったい誰がおねえをころしたんだ。 光二は動かなくなった有沙の体に泣き崩れ、
それから、頭を持ち上げて泣き始めた。仲間のBグループの連中もいなくなっている。気
をつかったのか、それともVグループをおいかけていったのか。
 光二は17歳。かって生存していたという動物、豹のようなしなやかな体をした精悍な
男である。この男が生きている時代がこのように光二を変えてしまったのだろう。まだの
びざかりの170CMの体をもちあましていた。だが彼は、このフッコウドームの勢力を
2分するBグループキッズのヘッドである。
 姉、有沙、20歳。地下保護ステーションで、ロボットマザーの手によって、光二と有
沙は姉弟として育てられていた。
 地下保護ステーションはこの戦争前、両陣営が地上の組織や諸設備が潰滅した場合、何
年かたって地上にもどり、地上を復興するために作り上げた地中ステーションであった。 
各ステーションには精子と卵子が冷凍保存され、地上が生物の生存可能になつた場合、子
供を生産するようにセットアップされていた。子供の育児には「育児法」によって研修を
受けたロボットマザーがあたった。
 一人のロボットマザーはおおよそ5ー6人のキッズを育てる。がロボットマザーアリス
A203によって育てられ、生き残ったのは光二と有沙だけだった。
 この星サーゴンは不幸だった。大戦役後、別の星域から攻撃的な宇宙人ベースマンが飛
来してきたことだった。この星を手にいれようといた彼らベースマンは、大量の殺戮マシ
ーンを使い、地下ステーションを捜し当て、地下へ侵入してきた。この星の生物を完全抹
殺するために。
 この時、アリスA203は2人をかばい、傷付いた。この混乱の時以来、二人はアリス
A203にあっていない。
 後から来た星間連合より派遣の平和維持チームの手によって助けられた二人だった。
 アリスA203が混乱で行方不明になった今、光二の肉親といえば有沙だけだったのだ。 
フッコウドームは、この星が星間戦役から自力復興するために、星間連合から派遣された
平和チームが作り上げたドームである。
 地表は星間戦役による汚染から危険に満ち溢れていた。フッコウドームのキッズ平均年
令はひくく、約22歳だった。
 それ以上の大人は、前の大戦でほとんど死亡していた。地下の保護ステーションに避難
していた「子供たち(キッズ)」だけが助かっていたのだ。が、このVグループとBグルー
プとは地下生存ステーションを別にしていた。
 それゆえ、別陣営の子供たち(キッズ)とおもわれる。この星を復興しようと考えた平
和チームはそんなことを考慮せず、フッコウドームを各地の作り上げ、自由に子供たち(キ
ッズ)をほうりこんでいた。
 それゆえ、VグループキッズとBグループキッズの対立のネはふかかった。がフッコウ
ドームを管理する星間平和チームはこの生物の本能である抗争意識を管理する方法を、い
まだにみつけださずにいた。いやむしろ、かれらキッズの抗争を観察していたのかもしれ
ない。

 光二は近ごろへんな夢を見る。がこの夢のことは誰にもいえやしない。こんな夢をはな
せば、へんな奴といわれるに違いない。
 『光二は荒野にたっている。この荒野はどの星の荒野ではない。ある男が急に現れる。
その男は光二のみたことのない服装をしている。
 そいつは光二の前に近付いて来る。そして言う。「光二、聖砲をくれ」「そうよ、光二」
今度は後ろからの声だ。後ろを振り返ろうとする。「だめ、ふりかえっちゃあ」有沙の声だ
った。光二は後ろを振り返ることがどうしてもできない。なぜなんだ、おねえ、おねえな
んだろう』

 「おーい光二、いこうぜ」アキヨシの声だった。遠くで響いている。目がさめる。汗で
ビッショリだった。光二はコアの窓を開く。外にはアキヨシがホースに乗っていた。
「光二、まだ、寝ていたのか」
 フッコウドームにはいくつかの生存基地(ベース)が作られていた。それは蜂の巣の用
に入り組んで作いた。コアとはその1細胞である。1コアに一人がすんでいる。
 ホースはこのフッコウドームに使われている乗り物である。小型の円盤である。一人も
しくは二人乗りで、大戦前に生存していたと思われる馬からの神経系が見事に機械に移植
されていた。乗り手のおもうがままにあやつれるのだ。体長は3M、ピーナツがたをして
居て、真ん中にくぼみがあり、そこにまたがることができるのだった。
「アキヨシ、悪いが今日、俺はアジトへでかけるのに気乗りがしない」
 アキヨシは困った顔をする。「またかよ、ヘッドのおまえがいなければBグループの士気
があがらんぜ」
「アキヨシ、わるいがな、仲間のキッズにうまくいっておいてくれ」
「このあたりのロボットの管理権はVグループにとられてしまうぜ」アキヨシはしつよう
に言う。その言葉は光二の頭に響いている。光二は気がのっていないのだ。光二は思わず
右手人差し指の指輪にさわっていた。姉のかたみの指輪。この指輪は、地下の生存ステー
ション・ゼータにいた時から姉がもっていたものだった。

 ベースマンの殺戮機械からの光線兵器がまわりの子供たちの体を貫く。体が焼き焦げる
匂いがした。生存ステーション・ゼータ。12年前だ。
「いたいよ」
「助けて」
悲鳴と泣き声、叫び声がステーションに満ちていた。
「光二、大丈夫」
「有沙ねえちゃん、逃げて、僕はもうだめだ」「何をいってるの、光二、しっかりしなさい。
マザー、マザーはどこなの」
「ここだよ」われた声が聞こえてきた。声帯が壊れたらしい。子供たちが倒れている。み
な、光二、有佐と一緒に育ったファミリーだった。
アリスA203は体の半分を吹き飛ばされていた。焼き焦げた機材の下敷きになっていた。
「光二、有沙、ふたりでおにげ。お前たちだけだよ、生き残ったのは。私はもう動けない。
ここは私がなんとか、時間をかせぐ」
「だって、マザー、一緒に逃げよう」光二が泣き声で言う。
「有佐、はやく、光二を連れて逃げるのよ。光二、有佐のいう事を聞くんだよ。子供たち、
私が育てた子供たちで、今まで生き残ってきたのはお前たちだけだ。生き残っておくれ、
私アリスA203のためにも。そして、いつか私のことを思い起こしておくれ。さあ、そ
のためにも逃げて生き延びるのよ」
二人は泣く泣く、アリスをおいてそのばを離れた。
「光二、後ろをみちゃあだめ」
「どうして、おねえちゃん」
爆発音が聞こえてきた。が、いかんせん、ふたりは子供だ。
高速で移動する殺戮機械が近寄ってくる。
「光二、早く」殺戮光線がまわりをないだ。光二は倒れる。
「光二」有佐が叫ぶ。光二は、恐怖で体を動かすことができないのだ。有佐は自分の体を
光二の体の上に投げ出していた。殺戮機械が光二たちに気がつく。光線がこちらをむく。
やられる、光二はそう思った。
目を思わずつぶった。が殺戮機械の方が吹き飛んでいた。光二はゆっくり目をあける。
「おねえちゃん、いったい」光二は有佐の指にあるものをみた。それがふたりの命を救っ
たのだ。「
おねえちゃん、それは」
「私にもわからない、知らないうちにあったの」

 有沙は子供の頃から、この指輪を大切にしていた。幼い頃は指が細かったので首から下
げていた。大きくなって、光二が指にさしてやった。二人は血のつながりはない。光二は
有沙の指にはめながら、キスをした。ふたりはかんきわまっていた。血の契りであつた。「光
二、私達がゼータ生存ステーションで生き残ったように、二人はいつも一緒だよ」
「わかっているよ。姉さん、俺達はいつも一緒なんだ」

 あの時、光二は有沙の死体から指輪を抜き取っていた。騒ぎのあと、すぐ、平和チーム
がやってきた。光二は参考人として、拘留された。この部隊員が有沙の死体にさわろうと
する。光二は叫んでいた。「おねえの死体にさわるんじゃあねえ」平和チーム隊員はこの星
の人間ではない。だから、極めて事務的に処理する。バーナーで、彼女の死体を焼き切っ
ていた。姉、有沙の死体が燃え上がる前で、光二は泣き叫んでいた。
「おねえー、アリサー」

「おまえが最愛の姉をなくし悲しむのは、いいんだけれどね」あてつけがましく、アキヨ
シが言う。
「なんだよ、アキヨシ、文句でもあるのか」 光二はこのアキヨシがおねえにちょっかい
をだしていると聞いていいた。
「今、我々Bグループがどうなっているのかわかっているのだろうな」詰問調だ。
「アキヨシよ、ヘッドは俺だぜ。俺の言葉が法律なんだ」光二の言葉は怒りをふくんでい
る。「わかったよ、おまえがボスだよ」アキヨシはホースをドームの中央に去っていく。
 光二はコアで少し考えていたあと、ホースに乗って外にでた。気分をまぎらわすためだ。
といって、Bグループの仲間のキッズと顔を合わせる気にはならない。ドームの中を目的
なく飛んでいた。ふと気付くと、あの場所だった。光二はそこに降り立つ。

 光二が有沙が死んでいた場所にたたずんでいるのを上空から見ている二人がいた。Vグ
ループキッズのハーマンとローレルだった。
「あいつがいったとうりだな」背が高いハーマンが言う。
「またとない、チャンスじゃないか。あいつはひとりだぜ」にきび面で、だるまのような
ローレルがいった。
「おまけに考え事をしているぜ」
「よーし、いこう、ハーマン」
「めにものみせてくれる」ハーマンがほくそえんだ。
 光二は急に後ろから捕まれ、上空につりあげられる。光二はあらがう。姉の事を考えて
いて、注意力がそがれていたのだ。
「光二さんよ、我々におとなしく、ついてきてもらおうか」えらく背の高い奴がいってい
た。
「くそっ。おまえ達は」光二の足元は、地上10mの空気なのだ。
「いわずとしれたVグループのキッズよ」
「Bグループのヘッド光二を捕まえたと、あっちゃあ、大手柄なわけさ。おっと、光二よ、
あまりあばれると、俺たちの手から、地面へ落ちるぜ。ちょうどおまえのあねきみたいに
な」にきび面がいう。
「くそう、おまえか有沙を殺したのは、」
「おいおい、人違いだぜ、俺はおまえのアネキなど、殺しちゃいない」
「じゃ、おまえか」高い奴にいう。
「知らないぜ、光二、少なくとも、俺たちじゃないぜ」
「おい、ちょっとだまらそうか、これほど暴れられると、体をもちにくいからな」ローレ
ルがハーマンに同意を求めた。
「そうだな、連れて行きやすくするか」Vグループのキッズは話しあっていた。「やめろ」
光二はさけんでいた。ローレルは腰のベルトにはさんであった電撃銃を取り出す。光二の
体に当てる。「ぐう」光二は気絶していた。二人は光二を一度地上に降ろす。
ローレルとハーマンはホースの後ろに光二の体をしばりつけようとしていた。
突然、一人の男が出現していた。
「だれだ、おまえは」ローレルが男にきずき、声をあげる。
「光二の味方か」
「Vグループのキッズじゃないな」
「それに平和チームの者でもないな」
「なんだ、こいつの格好は」
「仮装行列かい」
「ここは舞台じゃないんだ。関係のない奴はひっこんでろ」これだけ、ローレルとハーマ
ンがいっても男は無言だ
 男は光二の様子を探って入る。
「ちっ、気持ちのは悪い奴だぜ。おい、速く。アジトまでかえろうぜ」
「そうだな、Bグループの邪魔がはいらないうちに」 二人は気を失っている光二をホー
スの後ろに乗せて飛び上がろうとしていた。
 その時、静かにしていたその男が、目にもとまらむ早さで、Vグループのローレルとハ
ーマンの間に割り込んで、ホースの操縦管を持つ二人の手を、男は両手でおさえていた。
「何、何をしやがるんだ。てめえ」
「やはり、Bグループのキッズか、おまえは」男は何もいわない。
「そうかい、それじゃ、御相手しなきゃな」「悪いことはいわない。私の相手になるな。私
はその光二に用があるんだ」男が初めて声をだした。男の顔は、過去が尋常ではなかった
事をあらわしている。
「光二に用があるだと」二人は顔をみあわす。「ふふっ、残念ながら、我々もこの光二に用
がある。俺達が先客だ。ものには順番がある。おっさん、そのくらいの事はわかっている
だろうが」
「順番だよ、次には光二を渡してやるさ」
「ああ、もし生きてういればの話しだがな」二人は笑う
「私はそんなに待つ訳にはいかん」
男の目は遠くを見るような眼だった。ローレルはこの男のマリーンブルーの眼を見て、ぞ
っとした。
「おまえはドームへの来訪者だな」
「俺たちはこのドームでは少しは知られた名前なんだ、Vグループといってな」
「我々にさからおうというのは、ここの法律を破っているのと同じさ」
「残念ながら、私にも法律がある。そのわたしの法律にしたがって光二をもらっていく」
「どうやら、このお客人は俺たちに、喧嘩をうっているようだぜ。どうするハーマン」
「それならば、歓待しないってほうはないな、ローレル」
「あとで泣いてもだめだぜ」二人は男にとびかかっていく。
 数秒後、二人の方が大地にころがっていた。「光二、起きろ」光二の意識が戻ってきた。
「うん、いったい、あんたは」
 が光二はこの男の顔を見て驚いた。光二の夢に出てくる男だったのだ。光二は倒れてい
る二人をみる。
「どうやら、俺を助けてくれたらしいな。礼を言う」光二は大地にころがっているVグル
ープをける。
 男は言った。「私がだれだかしらなくてもいい。それより、光二、聖砲をわたしてくれ。
私にとって重要なものなのだ」
「聖砲だと」やはり、夢と同じ事をいいやがる。
「そうだ。私は聖砲を持っている男を探して、いろんな世界を渡ってきたのだ。君がどの
世界にいるのかわからなかったのでな」光二は一瞬、時間が泊まっているような気がした。
今、この男のいったことは何なのだ。まったく意味がわからない。今度は光二が質問をす
る番だ。
「一度あんたに現実に会えたら、きこうと思っていたんだ。あんたは最近俺の夢に頻繁に
でてくる。あんたは、夢の中でも聖砲をさがしている。それはわかった。が俺は聖砲なぞ
もっちゃいないぞ」
男はにやっと笑う。「君は知らないだけさ。君の指にある」
「指だって」おもわず光二は左手で、右の指輪を押さえていた。
「まさかこの指輪が聖砲というのではないだろうな」
「それだ」男は冷淡に言う。
「あんた、いったい、誰なんだ。それにいったい、聖砲って」
「光二、君はこの事件にかかわるべきではない。これは我々の世界の事件なのだ」
「そういう一方的な言い方はないだろう」
「君は聞いても、理解できないだろう」
「あんたが聖砲という、この指輪は、姉のかたみなんだ。みずしらずのあんたに渡すわけ
にはいかん。あんたは何者なんだ」
「石の壁の祭司だ」
「いしのかべ、さいし。どういう意味だ」
「だから行っただろう。この事件は君の想像力をはるかにこえている」
「お前さんねえ  」光二は少し考えている。「私の名前はアルクだ」
「アルク、事情をはなしちゃくれないか。それもできるだけわかりやすく。あんたは俺の
命の恩人というわけだ。お礼をしなきゃいけない。俺は人に借りをつくるのがきらいなん
だ」
「このフォトを見てくれ」アルクは写真を差し出す。
「こりゃ、なんだ、えらく古ぼけた写真だなあ」
 が光二はこのフォトを見た瞬間、大声をあげていた。
「姉さん、これは有沙の写真だ」
 アルクもびっくりし、反論する。
「違う、私の娘ミニヨンだ」
「あんたが間違えているぜ、これは姉さんだ」 光二はアルクのさしだしたフォトを握り
締めている。手がふるえていた。いったい、なぜ、この男は有沙の写真を持っているんだ。 
そういえば光二は有沙の写真は一枚も持ってはいない。
「とにかく、光二よ、私の話を聞いてくれ。私の娘ミニヨンが石の男に心を奪われたのだ」
「というと」
「石の男の心底に、ミニヨンが取り入れられてしまったのだ」
「心底にとらわれる」
「人間が心の中にとらわれるって。それに『いしのおとこ』とはなになんだ」
「石の男とは我々の信仰の対象なのだ。この男が、我々の世界を作っていると考えられて
いる」
「それじゃ、ミニヨンが中にいるのは名誉な事ではないのか」
「それと、ミニヨンの件とは異なる。彼女は一人の女の子だ。その子が創造者の心に入る
とは、不浄な事なのだ」
「俺たちの世界の価値観とは異なるようだな」「そうだ。君は理解できまいが、とにかく、
彼女を助けるためには、君のもっている聖砲が必要なんだ」
ここでいろいろ言ってもしょうがない。とにかくミニヨンとやらにあってみる事だ。
有沙である可能性もなきにしもあらずだ。光二はある決心をした。
「OK、あんたの言うことはわかった」
「おお、わかってくれたか」
「この指輪はあげてもよい。がそのかわり」「そのかわり」男は身構えた。
「あんたのいう別の世界に連れて行ってくれ」「それはだめだ」男は不安になる。この若者
は何を考えているのだ。
「つまり、あんたのいうミニヨンに会いたいのだ」
「私の娘ミニヨンに」どういうことだ。ミニヨンに会いたいだと。
「そうだ。俺は自分の姉だと考えている。あって納得したいのだ」
「たしかに、そのほうが納得できるだろう。ただし、石の男に勝ったらの話しだが。つま
り、石の男と戦わねば、ミニヨンにはあえんぞ」よし、うまくいっている。とにかく聖砲
が必要なのだ。アルクは思う。
「戦いだと、のぞむところだ」光二の血が騒いだ。別の世界で戦えるだと。
「光二、私の体につかまれ」この若者の気がかわらないうちにとアルクは思った。我々の
世界に連れていってしまえば。どうせ、聖砲さえあれば、何とかなるだろう。
「あんたの世界に連れて言ってくれるのか」「そうだ。君もそうすれば、納得するだろう」
「それはあんたも同じだろうよ、アルク」そうだ、俺は納得したいのだ。光二は思った。

 二人は異なる時間と空間を撥ねていた。

 V団のアジトだった。たくさんのキッズがいる。今、ヘッドの登はいないようだった。
大吾がいた。大吾は180CMの大男。ワンダリングキッズの一人だった。他のドームの
ヘッドの紹介状をもって登の所へ来た。登の団にワラジをぬいでいるというわけだ。ある
特技でメシを食っている。
 このフッコウドームのキッズは、近くにある鉱山で掘り出される貴金属を食いぶちとし
ていた。この鉱山は平和チームの監督監視下にあるのだが、何人かの作業ロボットが金儲
けのため、ひそかに登たちキッズのところへ貴金属をもってきていた。登のVグループと
光二のBグループはこのロボットの作業員の裏支配をめぐって争っているのだ。
「おい、お前、いい根性しているじゃないか」Vグループのキースが言う。キースは金髪
で細面の顔は残酷なイメージを、会う人にあたえる。
「ど、どいいうことですか」ロボット作業員Z113が、答えていた。
「内緒で、ブツを光二のグループへ流しているときいたぜ」
「そ、そんなこと絶対にありません。ロボットは嘘つかない」
「じゃ、お前はロボットじゃないな。ロボットじゃなきゃ用がない。おい、大吾、おしお
きだぜ。ほかのロボットらもよくみておくんだな」キースが大吾に命令する。キースはこ
のグループのNo2だ。
「や、やめてください。私は悪くない」Z113は目をレッド色にしていた。
大吾はZ113のボディをしめあげた。ハイチタンの体がミシときしむ。
「わ、わかりました。もう、しません。やめさせてください。光二が悪いのです」
「おい、大吾、もういいぜ」が、キースの言葉にかかわらず、大吾の動きはとまらない。「お
い。大吾、やめな」キースが青くなる。「大吾」他のキッズも騒ぎ出す。「やめろ、大吾」
 瞬間、アジトは機械の破片が吹き荒れていた。ロボットZ113の体が爆発したのだ。
「おい、何て奴だ」
「うわっ、か、怪物だ」仲間のロボットたちはさんをみだして、アジトから逃げ出した。「や
りすぎだぜ、大吾」キースは大吾をなじる。これだから、ワンダリングキッズは困る。組
織って奴がわかっていない。
「すまん」が、大吾の顔はあやまっているようには見えない。むしろ自分の力を楽しんで
いるようにみえた。とにかく、わかりにくい表情なのだ。
「おい、大吾、お前、その棺桶どこから見付け出してきたんだ」キースはこの気まずい雰
囲気を変えようとする。大吾は背中に石棺を背負ったままなのだ。
「ああ、このドームへの途中の道でな」大吾はぶっきらぼうに答える。
「じゃまにならないのか」他のキッズが尋ねる。
「ああじゃまにならん」大吾が答える。
「ほっとけよ、大吾の棺には大切なものがはいっているんだから」
興味をもったひとりが大吾に言う「中をみせなよ」
「何か、金めのものがはいっているわけか」「いいだろう、みせろよ」棺かつぎの大吾は歯
を剥き出して、そいつに怒った。
「わ、わかったよ、お前の棺にはちかずかないよ」
「おいおい、やめておけよ。大吾の力は今見た所だろう」キースが止めた。
が、その日の晩、棺かつぎの大吾のふたを、内緒であけた奴がいる。しかし、首の骨がお
られていた。その目は棺桶の中を見て見開かれていたのだ。
大吾はこの棺を見付けた以上、早く、元の世界へ帰らねばならなかった。待っている人が
いるのだ。
大吾はこの石棺を探して、アルクと同じ様に、星を、世界を渡り歩いていた。

F小説■石の民■(1989年作品)
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