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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

ガーディアンルポ01「最終列車」1から

■ガーディアンルポ01「最終列車」■第1回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/

■第1回 ■
サイトウはいつものローカル線に乗り込んだ。まだはっきりとは目がさめていない。い
つものことだ。頭がはっきりするまで一時間くらいかかるだろう。
サイトウの住んでいるX市からO市までは電車で約一時間半くらいの道のりだ。残念な
がらX市まで私鉄は通じていない。JRのローカル線F線に乗る他はない。
まさに、毎日山を通りトンネルを抜け、谷を渡りディゼール車はようやくO市にたどり
逆にありかたいこともある。ゆっくりと腰をかける事ができる。私鉄のラ″シュ時のよ
うな事は全然ない。その代り、列車の本数はとても少ないのだ。そのため、毎日乗り合わ
せる人達はかのずから決まってしまう。
その日も、S商事に勤めているイヌイと話をしながら列車へ乗る。イヌイのとなりにす
わった老婆もよく見る顔だ。サイトウは軽く会釈をする。
いつもなら、会社の事やら、SFの事やらとりとめのない話をし、時間をつぶすのだが、
今日は違った。限石事件がもっばら話題になっている。
「変な事を聞いたぞ」
イヌイが小声で言った。
「え、伺だね」
「ニ人の人間が限石から出てきたという話だ」
 「まさか。ひ、ひょっとして円盤では」
 サイトウはおどけて言った。
 昼の日中に、X市に隣接したM市山中に限石が落下したのだ。
 初夏の山中をディーゼル車は進んでいく。T駅に近づいたようだ。
 「サイトウ、見てみろ」
 イヌイがひじでつついた。窓から外をながめている。サイトウも同じように身をのりだ
す。ブラットホームに人が鈴なりになっているのだ。
 いつものT駅なら、この時刻ではせいぜい十名がいいところなのだが。
 それなのに今日は何んて事だ。百人近い人間がひしめいているのだ。
「何だろう」
「かそらくどこかの団体旅行だろうさ」
 しかし団体旅行にしては、彼らは手荷物を持ってはいない。小さな棒を手にしているだ
けだ。
 彼ら、そう文字通り彼らは何か一定の共通点があった。それにぎこちないところが感じ
られるのだ。現代に適応していない感じだ。
 彼らはー糸みだれぬ行動をしている。
 列車が止まるやいなや、その集団は分裂し、車輛へ乗り込んでくる。
 いつも乗っている人達はその数十人の集団に圧倒され、隅の方で小さくなっている。
 中へはいった彼らは前後左右の出入口の扉に一名ずつ立った。それから残りの人間は列
車内へと散らばる。彼らはすわろうともしない。
 車掌が通路を歩いてきた。不思議な行動の彼らに気がついたようだ。開いている席につ
くように頼んでいる。しかし彼らは押し黙っている。車掌も困り果てたようだ。
 この列車は二人ずつ向い合わせにすわる席だ。サイトウのとなりでは大学生が眠りこけ
ている。前の席のイヌイのとなりにはぱあさんがすわっている。
 イヌイはしきりに男達を観察している。
「おい、あまりそんなに見るなよ」
 車掌かいまだにすわるように男達に懇願している。意地になっているようだ。
 一転して、男達は開いている席にすわりだした。車掌はホツとした。
 イヌイはその瞬間、首肯したようだ。
 同一の行動だった。一斉に男達はすわった。しかし扉の前の男はその唾ま立って、ドア
をふさいでいる。
 駅長の笛が吹かれ、列車が動き始めた。
 線路の下を流れている川の幅が段々広くなっていく。川の中に突き出している岩にくだ
ける水しぶきが涼しさを感じさせる。
 ぞくぞくと続くトンネルを列車は通りすぎる。この山中のトンネルを総てすぎると唐突
に、開けたO平野へと出るのだ。
 トンネルに入り際、サイトウは何かしら不安にかられた。
 一つ、二つ、トンネルをすぎていく。
 三つ目のトンネルがサイトウにはやけに長く感じられた。長すぎる。いつもなら、こん
なに長く時間はかかりっこない。
 人々が騒ぎ始める。
「どうなっているんだ。事故か」
 しかし、列車はトyネルの中で停車しているわけではない。確かに前方へと動いてはい
るのだ。こんなに長いトンネルはこのF線にはないはずだった。
 車内アナウンスが聞こえてきた。
「少々、訟待ち下さい。ただいま原因を調べてかります」
 あわてて、車掌が前の方へ走っていった。
 携帯ラジオをイヤホーンで聞いていた男がつぶやいた。
「かかしい、急にラジオに雑音が・・・・:」
 車内灯が急に消え、サイトウはめまいを感じ、気を失なってしまった。
   サイトウか気かつくと、列車は見知らぬ平原を疾駆していた。
   「大丈夫か」イヌイがサイトウに話しかけた。
   「どうなっているんだ」
   「わからん、俺は少しだけ早く目をさましただけさ」
   本来なら、もうO市の町並が見えるはずなのだが。窓の外に広がっているのは赤茶けた
  平原なのだ。
   「これは一体全体」
   サイトウは二の句が告げなかった。あまりに異常な出来事なのだ。これは夢ではないか。
  サイトウは自らのほかをつねってみた。痛い。これは夢ではない。現実なのだ。
   陽が高くあがっている。空気が少し違うようだ。サイトウは窓から首を出して、今まで
  通りすぎてきたであろう線路を見ようと思った。
   窓が開かない。
   ざわめきがかこっていた。’しかし先刻T駅で乗り込んだ連中は少しも騒いでいない。
   車内アナウンスが響いてきた。
  『乗客諸君、我々はスペシャルコマンド部隊だ。我々はこの列車を支配下においた。我
  々の命令K従わない者は射殺する。くりかえす。射殺する。これ以後、我々の指示K従っ
てほしい。以上だ」
 騒ぎの中で、T駅からの男達が立ち上った。彼らはふところから銃の部品をとり出し、
組み上げた。
「静かにしろ」
 彼らは冷たい声で言った。各車両でも同じ事がかこっていた。
「ここはどこたんだ」
「だまれ」
 山並みが遠くみえる。ところどころに小さな岡と、潅木が散在する。
 T駅の次の駅Sでは、連絡電話をかけていた。
「列車がまだつきません」
「しかし列車は定刻に発車しtしたが」
「事故の報告は受けていない」
 F線と川をはさんで国道が走っている。
 駅員がS駅からT駅まで線路を観ながら車で駆けてみた。しかし列車の姿はどこにも発
見できなかった。ふと、彼は空を見上げた。空は円盤で満ち満ちていた。
(続く)

■ガーディアンルポ01「最終列車」■第2回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/

■第2回 ■
トレインジャックを果したスペシャルコマンド部隊の隊長は、クルスという名前だ。クルスは、各コマンドに命令を下していた。彼は三十才台の頑強な男だ。
「車掌は車掌室に閉じ込めました」
「よし」
「運転手は我々の命令を忠実に実行しています」
「よし、基地までこの速さで二時間の距離だ々。時間はあまりない」
「タルス隊長、連絡を基地にとってよろしいでしょうか」
「いかん。まだ速絡はとる痙。ROWの円盤機に発見されたらおしまいだ」
「了解」
「捜索の方は進んでいるか」
「はい、現在、第て第二車両の調査を終えた段階であります。まだJとROWは発見されていません」
「よし、ひきつづき行なえ」
 サイトウの通路をはさんだ向い側の男が落ちつかない様子だ。いらいらしている。四十才くらいだろうか。男は隣りに小さな女の子を坐らせていた。かわいい。子供は眠りについている。
 サイトウ達が乗っている第四車両ヘスペシャルコマンドがやってきた。
 先刻の落ちつきのたい男が立ち上がり、後部へ走ろうとした。幼ない女の子の手をにぎりしめている。スペシャルコマンドが男をつかまえようとした。
 男は女の子をスペシャルコマンドヘ投げつけ、通路を駆けだす。
乗客はただあっけにとられて見ている。
 コマンドがレイ=ガンを構えた。背中に命中した。
が男はひるまず、後部の扉にたどりついた。扉の所にいたスペシャルコマンドが、彼を押しとどめようとした。
 放電音がした。
 彼がはがいじめにしたスペシャルコマンドが黒こげになり、車両の連結板の上に倒れた。男が電気ショヅクをコyンドに与えたのだ。
 男は列車の窓を開け、片手を上空へとさしあげた。スペシャルコマンドが、列車全体にはりめぐらしていた「バリヤー」が一時的にやぶられた。
 男の手の先から光線が発せられた。
同時に車両からコマンドの数丁のレイガンが発射される。
男の体の三分の一が真黒になり、やがて消え去った。
 残りの体の部分はくずれてきて、ぐにゃとした偽足風の手足に変ぼうしつつある。
 叫び声をあげ、気を失う女性も出てくる。
 男が投げ出した女の子を、スペシヤル=コマンドが介抱している。
「J、J、しっかりして下さい」
「J、あなたがいなければ、我々はどうなるというんです」
 サイトウはイヌイにささやいた。
「どういうことだろう。これは」
 イヌイはもの知り顔で言った。
「こりゃ、あんた。我々はスペオペの世界にはいりこんだようですぞ」
「スペオペですって、なら私はキャプテンフユーチャー―がいい」
「冗談をいっている場合ではないのですぞ、サイトウさん」
 二人の目の前を死体が運ぱれていく。肉片の端がペタ″とサイトウの顔にふれた。
「うわっ」
 サイトウは、その死体のに訟いと、触感でとびあがり、えづき始めた。
前の席の80歳くらいのばあさんはいやな顔をして、文句を言った。
「今の若い衆はいくじが々いのか。死体くらいでどうした。大東亜戦争の時の大爆撃に比べたら何の事はありやせん」
 サイトウはまだえずいている。スペシヤル=コマンド達は乗客の調査を再開する。ガイガーカウンターのような機械を一人一人に直接押しあてている。
 時折、かん高い反応音があがる。その人をスペシヤル=コマンドは最後尾の車両へと連行していく。
 サイトウの番たった。おどおどしている。
 恐怖の瞬間がすぎる。大丈夫だった。しかしイヌイは抗っていた。
「伺、何をするんだ、君達は。人権無視もはなはだしいぞ。その機械は何だ」
「敵と味方を区別するためさ。釦前も見たろう、さっきの男の姿を」
「さっきの男は、一体何者だ」
「ROW星人さ」
「ROW星人だって」
 その時、機械が音をあげた。サイトウの隣にすわっていた大学生の体が反応したのだ。
「こいつらのことさ」
 急スペシヤル=コマンドが大学生にレイ=ガンをぶちこんだ。
 激しいショックで大学生の体が一瞬の内に変化していた。きっきの男と同じような体に々った。
 サイトウは腰を抜かさんぱかりだった。
 イヌイも歯をがちがち々らし始めた。
 ばあさんだけは落ちついている。口の中で念仏のようにつぶやいている。
「大東亜戦争、大東亜戦争……」
 サイトウはなりふりかまわず、便所へ走った。口をゆすいだ折りに、いつももっている禁煙ガムの包みを落としてしまった。何とはなしに目を洗面所の隅にうつすと、変な機械が置かれていた。
 隊長クルスは、隊員から、Jが無事保護されたことを聞き、喜んでいた。
 しかし彼は男が死に際に列車の外へ光線を放ったことを聞き、愕然とした。
 (しまった。仲間に連絡されたぞ。この不安定な時空間にかける敵の勢力はほとんどない。しかし加勢を呼んだとすれば、事態は急を要する)
「鍛後尾の車両に、ROWの手先を集めました」
 部下の隊員が報告した。
「よし、最後尾の車両を切り離し、消滅させろ」
 後部の方から爆発音が聞こえ、振動が響いてきた。
「伺だ、伺だ、今度は何だ」
 いささか、やけくそ気味にサイトウは言った。
「今度は爆弾らしいぞ。後の車両が爆発したようだぞ」イヌイが言った。
 それを聞いて、ぱあさんは再び念仏を唱える。
「大東亜戦争、大東亜戦争……」
「ちっ今度はスペオペから戦争ものか」
「いや、どうやら、また、スペオペにもどったみたいだぞ」
車窓から外を痙がめていたイヌイが大声で叫んだ。

(続く)

ガーディアンルポ01「最終列車」■第3回
(1979年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/

■第3回■
「何だって」
「見ろ」
サイトウはイヌイの指さす方を見た。
円盤だった。
まっ青空にアダムスキー型の円盤が一機出現していたのだ。
列車の右側を並んで飛行していたが、やがて消え去った。
「いよいよ、真打ち登場か」
サイトウはふてくされて、どうにでもたれという感じだった。
円盤は再びディーゼル機関車の前方に出現した。
ディーゼル機関車に乗っていた隊員はハンドミサイルを発射した。
円盤はハンドリミサイルを見てとり、列車から、かなりの距離を置いた。その一瞬、隊
員は自らの体を円盤に向けて発進させた。
「隊長、基地へ連絡させて下さい」
「いかん。今基地のポジションを知られるのはまずい」
 タルスは部下の要求を受けいれなかった。
 発射時間まであまり時間はない。そしていまだ基地の位置は知られたくはなかった。自ら
の力で道を切り開くしか痙い。
 また轟音が響いてきた。今度は前方からだった。
 円盤の残骸は粉々になりながら、列車左手の平原に落下してきた。地響きがして、大き
な火柱があがった。
「もういやだ、いやだ。元の世界へ返して来れ」
 誰かが立ちあがり、側に立っているスペシャルコマンドにだきついた。
 スペシャルコマンドは、今、円盤に体当たりした仲間の冥福を祈っていた。彼らは人
間ミサイルでもあったのだ。
Jと呼ばれた女の子の意識はまだもどってきてはいない。
Jは彼らスペシャルコマンドにとっては、人類の全生命と同義語だった。Jの存在は地球の存在と
同一だった。
Jを守るためにスペシャルコマンドの一員が先程、侵略者ROWの円盤に体当たりし、
死んだのだった。
「まだJの意識はもどらないのか」
「はい」
看護をしている隊員がいった。
「一体、奴らはJにどんな処置を施したのだ」
Jは他惑星連合と地球の連合をにぎる重要人物なのだ。Jがいなければ、他惑星との連携
もなくなると考えなければならない。
22世紀、地球連邦はその勢力をあまねく銀河に拡めつつあった。
人類が最初にROWと遭遇したのはレム皇威であった。
ROWは強大な星間帝国で、銀河にかける地球連邦の勢力を漸次駆逐していった。
ついに二ー九六年、地球をめぐる大決戦となった。
地球は他惑星の援助を期待していた。そして、
 外惑星威で戦闘中の歴戦の勇士「ダーム将軍」の帰還を待ち望んでいた。
しかし、ROWの勢力は目前に追っていた。
地球連邦総督府の絶対防衛圏のバリヤーを破って突入してきたROWの円盤機軍団に連邦空
間戦闘機団はひとたまりもなかった。
 思いあまった連邦総督府は、地球の精神的主導者Jを説出させることKした。秘密裡に
他惑星に一時遊離させ、亡命政府を作り、残存勢力でゲリラ戦を開始しよウとしたのだ。
 百歳を越えるJの肉体は宇宙旅行に持ちこたえようがなく、九歳の女の子の体にJの人
格が移植された。
 安全を計るため、他時空間を設定し、多数の脱出用ロケット発射基地が短期間に準備さ
れた。
 しかし、その甲斐もなくJがROWの突撃隊により誘拐されてしまったのだ。
 Jを乗せたROWの円盤機は連邦軍の追撃を受け、一九七九年、日本のM市へ不時着し
た。
 ROWのパイ・ットはM市からO市へJを移動させようとした。O市にはROWの出先
機関がある。そこでゆっくりと、Jから地球連邦の残存勢力について探り出そうとしてい
たのだ。
 一方、ROWの円盤の失踪時点をキャッチした連邦軍はクルスを隊長とし、六十名の訓
練されたスペシャルコマンドを1979年へ送り込んだ。
「ウ″ー、サイトウさん、御覧なさい」
「え、どうせ、また余りよくない話でしょう」
「恐らく、悪い話でしょう々」
 馬のいななき、駆ける音かすぐそこまで聞こえてくる。車窓の横を騎馬武者が駆け抜け
る。
 血のりのついた胴太刀をかぎしている。
 上空に再び、円盤機が出現した。天童遠の軍勢に加勢するつもりらしい。
 スペシャルコマンドの一人がドアを開け自ら、ミサイルとなって円盤機に向かってい
く。先刻のように円盤機の不意をつけない。すぐに人間ミサイルをすり抜け、光線を放っ
た。彼は爆発した。
 さらに円盤機は列車の上空に飛来し、一条の光線を放ち、直ちに離脱した。
 光線は列車の洗面所にしかけられたバリヤー発生機を破壊してしまった。
 雄叫びをあげて、騎馬団がつっこんできた。
 バリヤーが消えた今、矢は車体の木製部や車両の連結幌の部分に突きささる。
 窓ガラスが、突き破られ、抜き身の刀身がサイトウの目の前に突き出された。
「うわっ」サイトウは叫び、飛びのいた。サイトウは残念ながら勇敢な男ではない。
 が、イヌイはスペシャルコマンドから手渡された鉄棒で、その刀を撃した。電気が
その棒から放電された。刀を持っていた男は感電死した。
 スペシャルコマンドと乗客は善戦していた。
 レイ・ガンを恐れもせず、突撃してくる騎馬はスペシャル=コマンドにとって驚異であ
った。
 馬から列車にとびつき、一人の武士が列車の天蓋へあがっていく。ディーゼル機関車の
方へ向かっていく。
 機関車の運転席がバリヤーがなくなった今、無防備のため一番危険な部署となった。y
スペシャルコマンドの隊員が防備にあたっているが軍団から統々とくりだされる矢には手
がつけられない状態であった。
サイトウは列車の座席で縮まっていたが、イヌイは先刻、うばいとった剣を右手にして、
襲いかかってくる騎馬団と戦っていた。サイトウは激戦中、イヌイに声をかける。
「慣れたものだね」
イヌイは、ドフから入ってくる者、窓から入ってくる奴を投げとばし、突き倒し、切り
つけ、切りかかり、大活躍たった。
「イヌイ、あんた、そんな剣術どこで習った」サイトウは疑問に思いタヅネル。
「江戸の千葉道場」
「何‥、あんたは一体、何者なんだ」

(続く)

ガーディアンルポ01「最終列車」■第4回
(1979年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
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■ガーディアンルポ01「最終列車」■第4回■


思わず、イヌイはしまったという顔をして
「いや、剣豪小説を読んだり、映画を見たりしてさ」
天井の上を誰かが歩いていく音が聞こえた。
「上を歩いていったぞ」
 サイトウが叫んだ。
「何上をだと、いかん」
 イヌイは通路に入ってきている武士を切り崩しながら、ドフヘ向かった。
 外から矢が射かけられる。イヌイは刀で矢を振り払い天蓋へと登っていく。
 一本の矢が、イヌイの背を貫いた。思わずイヌイはのけぞり、列車からころげ訟もそう
になる。が気を伺とかとり直し、機関車の方へ進む。矢を自らの力で抜き取る。
 天蓋の上はいわぱ攻撃目標とされる率が高い。次々と射手は矢を放つ。
 必死で駆け抜け、イヌイは先を行く武士に追い着いた。
「待て」
 呼びとめられた武士はイヌイの方を振り返った。イヌイの顔をぐっとにらみ、刀をかま
える。
[ワシは維神天膳じゃ、おぬしは」
「私はイヌイエイイチだ」
 二人は天蓋の上で切りむすび始めた。
 天童軍団の一人、中島活之助は、勇敢にもただ一騎、機関車を追い抜くと、前方へ廻り
こみ、槍を構えて、突進していく。スペシャルコマンド隊員は誰ひとりとしてこの事に
気かついていない。
 声を張りあげ、活之助は動く鉄のかたまりの真正面へ突進する。い々なきが聞こえ、血
しぶきがあがる。
 機関車が急停止した。
 その瞬間、運転席へ騎馬兵の槍がハ方から突きこまれた。
 急停止した時、列車の上にいたイヌイは振動で足をすべらした。刀を落とし、両手でへ
りにぶらさがった。ゆっくりと刀を手にした維神が目をギラつかせ、近ずいてくる。
 大東亜戦争のぱあさんが遠くから石をなげた。石は維神の顔に命中し、一瞬のスキがで
きた。その瞬間をにかさす列車の上にイヌイははい上がった。スペゾ″ルリコマンドの一
人がイヌイヘ刀を痙げた。
 列車が止まったので、武士団は勝どきをあげていたが、天蓋の上の二人に気がつき、戦
闘をやめた。軍団一の使い手維神天膳と異形の者との戦い。全員の目が天蓋の上に集中し
た。
 しかし勝負は一瞬に決まった。
 額から血を流し、イヌイめがけ維神は切りこんだ。イヌイは刀を受け取りざま、勢いを
かって上段から振りかとした。
 維神は袈裟がけにされ、動きを一瞬止めた。やがて、つっと前のめりになり、肩口から
血を吹き上がらせながら、列車から落ちた。
 返り血をあびてイヌイは、一瞬フラついたが、刀をかざし、勝ち名のりをあげた。
「イヌイェイイチ、維神天膳を撃ち取った」
 列車の全員から歓声があがった。敵の軍団からも賞讃の声があがっている。
 天童が単騎で、列車のすぐ側まで駆けてきた。天蓋上のイヌイに話しかける。
「どりしゃ、私の家来にならんか。手だれの維神を倒すとはなかなかの剛の者よ」
 イヌイは天童に言った。
「殿、私には生涯、これと定めた主君が御座います」
「ほほ、残念な事じゃ、して、その幸運な御主君の御姓名は」
フゾェイ殿で御座います」
「滋英殿、はて、あ!り聞かぬ名じゃの」
 重ねて、イヌイは言った。
「殿、か願いが御座います」
「伺じゃ、申してみい」
「どうぞ、軍勢を釦引きあげ下さい。私達には殿と争う理由はまったくございません」
 天童は首をかしげた。
「うむ、そり言われてみれぱ」
 天童達にかけられたROWの思念が、この戦闘の興奮で消去されかかっていた。イヌイ
の目が鋭く天童民江がれている。まるで魔術師の目のよりだ。
 軍団の中にも不信の声があがっていた。
 そう言われてみれぱ、天童達は々ぜ、こんなところにいて、彼ら異形の者達と戦ってい
るのかわからなかった。
 それにこのあたりは見かけない風景だった。
「イヌイ、ここは伺という所じゃ。ついぞ見かけぬが」
「ルート○七という所でございます」
「聞かぬのか、そんな名は」
 天童は少し考えていた。やがて、決心したようだ。
「わかった。どりやらワシらは伺かのまやかしにあったらしい。引き上げより」
「ありがとりございます。この御恩、イヌイ生涯、忘れませぬ」
「うむ、さらばじゃ」
騎馬軍団は旗を翻し、去っていった。彼らは出現したのと同じ場所で消滅した。
 安堵の吐息が列車の方々でかこった。サイトウは列車からとび出て、傷ついたイスイの
偏に駆け寄った。手を叩きながら、


 「すごい。君はまったく主人公さ。本当にどこで剣を習ったんだい。前にはそんな事は聞
かなかったよ」
「それがね……」
 イヌイが話しかけようとした時、スペシャルコマンドの一人が血相を変えて、飛んで
きた。
「チーフ、大変です」
イヌイが否定する。
「チーフ? あなたは何か間違いを……」
「申し訳ありません。非常事態なのです。隊長が危篤状態です」
「何、クルスが」
 その言葉でイヌイは表情を変えた。
彼は今までの自分を、その時投げ捨てたように見えた。
 サイトウは必死で叫びかけた。
「何だ、イヌイ、イヌイ」
 イヌイは答えなかった。だまって前の方へ歩いていった。サイトウは追いかけようとし
たが、彼の背中はそれを拒否しているように見えた。
 サイトウはあきらめ、扉を開け席K戻ろうとした。
 戸口Kあのばあさんが立ってサイトウをにらんでいた。
「サイトウさんとかいったね。私の眼はごまかされないよ。私はあなたが何者か知ってい
るよ!」
 サイトウは答えず、手にしていた電磁棒で老婆の頭を一撃した。老婆は叫び声をあげる
暇もなかった。
「誰かに話して訟くべきだった々」
 サイトウは老婆の死体に向かって言った。


 最先端の車両で、イヌイは俄作り述べ簡易ベットに横だわっているタルスを見守った。
「す、すみません、チーフ」
 苦しい息の下からクルスはイヌイに話しかけようとした。
 横から一人の隊員が口を出した。
「タルス隊長は、運転席でがんばってかられたのですが、急停車の時、槍ぶすまにあい・:
……」
「あ々たの正体を最期まで隠してかきたかった。しかし、私が傷ついた今、Jペシ″ル0
コマンドの指揮をとれるのはあなたしかいない」
クルスはふるえる声で言った。
「わかった。タルス、後の事は心配するな。かならずJを基地まで連れていき、地球を説
出させてみせる」
「た、頼みます。先輩のあなたなら、安心してまかせられます。ただ・::・」
 タルスは目をつぶった。
「タルス、タルス、しっかりしろ」
タルスは答えなかった。
イヌイにとってタルスは愛すべき部下であり、リュテナン地球連邦大学の後輩であった。
イヌイは二ー九六年からこの一九七九年までタイムジャンプを行ない、現地調査員の長
  として働いていたのである。
イヌイは、スペシャル=コマンドの一人に質問をした。
「Jの容態はどうだ」
[一時、意識をとりもどされたのですが、今は眠ってかられます」
「よし、基地についてから、治療を受けてもら釦う」
「電車の方はどうだ」
「いつでも、動ける状態にあります」
「よし、出発しょう。一刻も猶予はならん」
「チーフ、一つかうかがいしたいのですが」
「伺だ」
「ROWはなぜ大勢でこの列車を襲ってこないのでしょう」
「この「ルート○七の時空間」は非常に不安定だ。あまり、一度に多量の異物が出入りすると、
その異物質は自壊する恐れがある。ROWはそれを恐れているのだ」
「それでは我身のルート○七への出入りは」
「我4r t!j球人だ。その上、ここは地球上の時空間だ。ROWはこの時空間では異物なの
だ。長時間、大量の、高エネルギー物質は存在できない」
「そのために、彼らは」
「そうだ。この地球上の物体なら、地球の歴史流からひっぱり込むことかできるのだ」
「また、ROWは歴史流から我々を妨害する物体を投入できるわけですね」
「我々に時間はあまり残されていない。それにこれから先、異重時限流の橋を渡らねぱな
らない」
 急に風が吹いてきた。
「うん、天候がかかしくなってきた痙」
 風は段々勢いを増してくる。空が暗くなる。
「くそっ、ROWのしわざかもしれん。構わず出発だ」イヌイは命令する。
 列車はガタ″と揺れて、動き出し、次第に速度をあげた。
 運転席Kいたスペシャルコマンドが叫んだ。
「竜巻です。竜巻がやってきます」
「ROWめ、今度は、どうやら列車妨害に天候をあやつって」
 風は急速に強さを増し、まっすぐに竜巻は進んでくる。
 唇をかんで考え込んでいるイヌイにスペシャルコマンドの一人が声をかけた。
「失礼ですが、我々にあの竜巻をかまかせ下さい」
「何だって」
「恐らく、あの竜巻は、ROWが訟こしたエネルギー流だと思います。我々の破壊時のエ
ネルギーをもってすれば相殺できると信じます」
「自らを犠牲にして竜巻を消滅させようというのだな」
 イヌイは隊員の顔をじっとながめる。
「そうです。我々は人間ミサイル、爆弾です。もう「船」の発射時間までわずかのはずです。我々が死んでもJが脱出で
きる攻ら幸せです」船にはJ
を乗せなければならない。地球人類の鍵が。


 竜巻は近くの潅木や、樹木をなぎ倒し、巻きあげながら、恐るべきスピードで肉迫して
きた。
 隊員は列車の窓をあけ、ねらいを定め、自らを発進させた。
 竜巻の中心部で爆発がかこったようだった。しかしあいかわらず同じテンポで近ずいて
くる。別の隊員が出撃していく。さらに別の隊員が。
 乗客はもうあきらめかけていた。列車ごと竜巻にまきこまれるのではないかと。
 スペシャルコマンドは次々と死んでゆく。もう少しで橋だというのに。
 その時、竜巻の速度か急激にかちた。
「何とか、橋までたどりつけそりだぞ」
 竜巻の速度は徐々にかちてきている。
 列車はどうやら危機を脱したようだった。
 列車はついに異時限流の橋にたどりついた。この超合金で作られた橋。この
橋の下二百m下を流れているのは、しかし水ではない。
 橋の下の下は、時間流が流れているのだ。
 全地球の歴史の流れが幾重にも重なり、ありとあらゆる時間がからまり溶け合い流れて
いる。
この橋を渡り切れば「船」の発射基地なのだ。

■1979年ベトナム戦の最中
 シュート中尉はペトナム上空で、北ベトナム軍相手に戦っている最中だった。機体がガ
タンと揺れ、急にあたりの光景か一変したのに驚いた。
 彼ら三機の編隊はROWの円盤にとらえられたのだ。彼らの頭脳に、列剰隠敵という思
念が送りこまれた。
 列車に向かい双胴のプロペラ機は攻撃を開始した。
 シュート中尉は急降下を行ない、列車上空を通りすぎる刹那、中央胴体下のJポンソン
に装備されている四丁の七・六二ミリ機銃の発射レバーを押した。手答えがあった。
「チーフ、飛行機です」
「伺だと、くそっ、コイン機だ。おまけに三機もか」
「爆弾を装着しているよりです」
 列車がかしいだ。
 ロックウエルOV-10プロンコ攻撃機の一連射て、車両の一部が被弾した。列車が燃え
あがる。
 ブロンコは再度、攻撃にかかろりとする。
「反撃してこないな。よし今度は爆弾をかとすぞ、マロリー少尉」
 彼はプロンコ攻撃機僚機を呼び出した。
「か前は列車の前をねらえ」
「了解」
「しかし、中尉、この川は一体どうしたんでしょうね。何ともいえたい色ですね」
 後席のマクルーア曹長かシュート中尉に言った。彼らは異次元に飛ばされた事にはきずいていない。
「七色に変化して光を反射しているぞ」
「観察はあとにしろ」
「列車から何か発射されました。うわっ」
 一機が人間爆弾で吹き飛ばされ、時限流へ突っこんでいった。
彼らは第一次大戦下のソンムヘ落下した。
「くそっ、チャーリーの機がやられた。いくぞマロリー少尉」
「チーフ、一機体が前へ旋回しました」
「くそっ奴ら近よりすぎた」
「人間ミサイルを使えば爆風で列車か橋から落下するぞ」
 第二波攻撃が列車を襲った。
 二人の人間ミサイル、コマンドが発進した。肉弾攻撃では、操縦不能を目的に。
 一人のスペシ″ルリコマンドは一様とすれ違いざま、ヘリのコックピットめがけ手にしていた
電磁棒を投げ込んだ。
 電磁棒は前席のシュート中尉の体を貫いた。
 コイン機は、地上からの攻撃を受け易いので、後席の副操縦士が操縦できるダブル操縦
装置が施されている。後席のマクルーア曹長は、爆弾を列車に投下した。ねらいは少しは
ずれ、最後尾の車両か通りすぎたレールに命中し、橋のその部分が消え去った。最後部の
車両が猛火に包まれた。
 マロリー少尉のコイン機は超合金の橋げたに爆弾を命中させ、上空へと急上昇を行なっ
た。そこへ追撃してきたものは。
「わっ、人間ですぜ。人間が飛びあがってくる」
 後席の軍曹がわめく。
「いや、人間じゃない。サイポーグだ」
 そのサイボーグは列車に装着されていた消火器を、コックピットめがけ放った。
 コイン機は操縦不能となり、時限流に突っこんでいった。
 コマンドは時限流への落下を見届け自爆した。
「列車を止めろ、止めるんだ」


 イヌイはどなった。
 急プレーキがかかる。うめき声をあげながら列車は停止した。先程のyロリー機の爆弾
で、前方K続く橋がなくたっている。
「くそっ、もり少しといりところで」
 もう発射基地の姿がはっきり見えている。「船」がシルバーに輝き、立っている。
 足下二百m下には、まだ、七色に輝く時間流かうずまく。
「基地からの助けは」
「だめだ、向こうからは、は手か出せない」
列車は橋の上で立ち往生していた。時間はいたずらにすぎてゆく。ロケ″ト発射まで時
間はあまりない。
スペシャル=コマンドたちが数人話しあっていたが、その内の一人がイヌイのそぱへや
って来た。
「チーフ、提案があります」
「うん、言ってみろ」
「車両Kできるだけ人をつめこんでしまうのです。恐らく二両あれば、生存者を助けられ
るでしょう。機関車を入れて三輛、伺とか我々のジェット噴射で五十m程動かしてみせま
す」
「現在、君達は伺名残っているんだ」
「五名です」
「列車に15名乗り込んで、残ったのはわずか五名か」
イヌイは考え込む。
「Jのために命を捧げてくれるんだね」
「我はコマンドです。Jを助けるために、命を投げ出すより、訓練されて
きた事はあなたも御存知のはずです」
「そうだ」
イヌイは思わず涙ぐんだ。
いずこからとも知れず、誘拐されて、未来に連れてこられ、サイボーグ手術を受けた入
々。Jを助けるためのみに存在する人間ミサイル。一度発進したら爆発するまで飛び続け
ねばならない。
「やってくれるか、Jのために」


 乗客たちは車両につめこまれた。
「一体、奴ら何をしようというのだ」
「橋が吹き飛ばされたようだぜ」
「それじゃ、俺達は動けないわけか」
「もう、いいかげんに助けてくれ」
「何回も死んだような気がするよ」
「釦い、みてみろ、奴らを」
「体を列車の要所、要所に結びつけているぞ」
「ゴー」
イヌイの声がひびいた。
コマンド全員、発進する。ジェット噴射が始まる。
コマンドの体から血が吹き出している。
しかし、列車はまだ動かない。
一気に飛び出し、そして一瞬に、彼らは体を列車から離さねばならない。
 動いた。列車が動き始めた。
 全員がショ″クを感じた。ガタッという音がした。
 ドシンという音と共に落下した。
そのまま列車は基地K向かい慣性の法則で、突進していた。
 基地の車止めに列車は激突し、全員、投げだされた。乗客達すぐ列車から飛び出し、空
を見上げた。
列車が無事に到着したのを確かめたスペシャル=コマンドが空中で自爆していっ
た。
それはJを祝福する花火、祝砲のようでもあった。ズーン、ズーンと、
確かにそれは十五回なった。
人々は伺もしゃべらず、それをながめていた。
サイトウは誰にも聞こえ々い程、小さな声でつぶやいた。
「勇敢な地球人よ、さようなら」


 Jを乗せた「船」は蒼穹の彼方へと旅立っていく。列車の乗客は見送っていた。
「どうか助かってくれJ。そして未来の地球を復活させてくれ」
 そんな願いがこもっていた。
 希望を打ちくだく円盤が、空の片隅に突如出現した。
 円盤はJを乗せたロケ″トを追撃していく。
乗客の目の前で、防戦むなしく船は爆発を起こして、粉々に吹き飛んだ。
一瞬の出来事だった。人々は痙すすべもなかった。
「Jが」
 と叫ぶなり、発射基地の隊員の中にはくずれかちる者もいた。
他の人々はただただあっけにとられている。
   一九七九年から連れてこられた人々は、地球の未来K思いをはせていた。
『Jがいなければ、未来の地球はROWに完全に支配されるのか」
サイトウはイヌイをなぐさめようとした。
「あtたはベストを尽くしたんだ。そうだろう」
イヌイは、立ちすくんで体を震わせていた。サイトウはそれかイヌイのあまりの悲しみ
のためだろりと思った。しかしそうではなかった。
彼は笑っていた。


サイトウは、彼が落胆のゆえに気が狂ったのではないかと危む。
「どうしたんだ、イヌイ」
「ははっ、すまない。サイトウ。私はついに遣り遂げたんだよ、この作戦をね」
「この作戦?」
「そう、おとり作戦をね」 ’
「それじゃ、あのJは」
「偽物だ。これは地球連邦上層部の一部のものしか知らない。Jは別ルートで地球を説出した」
イヌイは笑い続ける。人々は驚きつつも、ほっとした様子だ。
「別のルートだって」
イヌイは少し考えて、小声で言った。

「ああ、君ならしゃべってもいいだろう。ロワタウエル宇宙港から小型輸送船イーグル号
で々。大周遊コースをとってオメガヘ向かっているはずだ」

 サイトウもイヌイの笑いにつられて、笑い始めた。いや、そう見えるだろう。しかしサ
イトウが笑っているのには、別の意味があったからだ。
 あのJが偽物だと判明し、さらにJの脱出ルートもわかったからだ。
サイトウは頭の中に埋め込まれた特別通信機でひそかに本部へ連絡をとった。
 サイトウが列車内でなぜ、ROW探査機に感応しなかったか。
それはサイトウの体が地球人のもので、その体に、ROWの意識が移植されていたからだ。
「ところで、僕の隣にいたばあさんを知らないかい。姿が見えないようだが」
「あ、あの大東亜戦争のぱあさんかい。騎馬団に襲われた時、槍に突かれて死んだよ」
「そうか」
「知り合いかい」
「いや、私のいい相棒だったんだよ、彼女は」
ただちに乗客をもとの時代に帰すための準備が始められた。

ガーディアンルポ1終わり(ガーディアンルポ2に続く)









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