飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

2008/01/29(火)01:27

■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第16回

トリニテイ・イン・腐敗惑星(63)

■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第16回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ 第16回(第12章) 「女よ、お前は寂寥王(せきりょうおう)の分身なのか」 その突然出現した異物は言った。メタリックな戦闘16面体だつた。  さわるとスパッと切れそうと、トリニティは思った。こいつが戦闘16面体なの。 「寂寥王ならば、かわいそうだが、お前を殺さねばならぬ。我々は寂寥王が現れる事を認めるわけにはいかん」 16面体の声はエコーがかかっている。何人かがしゃべっている感じだ。 (チャクラと違って扱いにくそうな奴) 「我々がいま、この腐敗惑星を支配している。お前のような生命体を認めるわけにいかん。かわいそうだが、死んでもらおう」 「せきりょうおうなんてしらないわよ。おまけに、ここを支配ですって。なぜ、あたしがあなたにころされなきゃいけないの。相手をみて 言ってよ。チャクラから聞いていたけど、あなた、絶対変よ」  が、抗議も聞かず、恐ろしいスピードで、戦闘16面体はトリニティの側にちかづいてきた。 その時、腐肉の地中から生物はずぶずぶと出現した。腐肉の地中から全身をあらわしていた。 全長10mはある“イモムシ”の様だった。関節が所々にある。側面に窓があり、模様のようにキラキ ラ輝いていた。 「どうして、次々と知らない人があらわれるよ、あたしは禁断の実をさがしているだけな んだから。チャクラ、助けて」トリニティは泣きながら叫んでいた。 「何!禁断の実だと」2つの生物が同時に叫んだ。 戦闘16面体は、現れた生物に叫ぶ。 「お前は何だ、ゴーストトレイン、死んだのではなかったか」 メタリックな戦闘16面体が、地中から出現した生物に言った。 「あなた、ひさしぶりね。戦闘16面体。あなたこそ、まだ生きていたの」 そう言いながら、 「この子は我々にまかせろ。寂寥王かもしれないからな」 戦闘16面体がゴーストトレインの方を向いて言った。 「あなたこそ、この子から手をひきなさい」 「ヘイヘイ、二人ともなによ。あたしを無視して、あたしを巡ってけんかしないでよ」 「トリニティ、いい、私の命令に従いなさい」ゴーストトレインは言った。 「そんな事言ったって」 (いやな奴だわ。強引よ、今あったばかりなのに) 「考えているひまはないでしょう。この戦闘16面体はあなたを殺そうとしているのよ」  ゴーストトレインの胴体の一部が開き、触手がトリニティの体をつかんでいた。 「きゃっ、何をするの。無理やりに連れていかないで」 「いい、私のいう事をききなさい、あなたを助けてあげようというのよ。それに禁断の実 のある場所につれていってあげる」 「何ですって、あなた、禁断の実のありかを知っているの」 腹の中でトリニティは叫んでいた。 「どうやら、この中は安全みたいね」 「そうよ」体の中から声がしてトリニティに聞こえた。  戦闘16面体が、ゴーストトレインを阻止しょうとする。 ゴーストトレインの内壁には窓の様なところがあり、今の様子はそこから一部始終が見えた。 「まて、そやつは寂寥王かもしれんのだぞ、この星を滅ぼし、またこの世界を滅ぼそうと している」 「どうしても、つれてゆくというなら、お前を先に倒す」  戦闘16面体の側面から、攻撃用の突起物が出現していた。 「すごい、どっちが強いの。ともかく、期待して、見物しょうっと」 トリニティは暢気なことをいった。 「私をあなたが倒せるかしらねぇ、戦闘16面体」  ゴーストトレインの尾部が急にはねあがり、 戦闘16面体の体がひとなぎした。先制攻撃のパンチだ。今までいた空間から戦闘16面体はふきと ばされる。 「うわっ、やるじゃない。見直したわ」 「きさま」戦闘16面体は発光した。突起物の1本が急激にのび、ゴーストトレインの横壁にさ さる。パシッと大きな音がして、その部分が黒コゲとなる。 「いやだっ、がんばってよ、あたしがついてるから」  ゴーストトレインの体全体が身震いした。 「いいか、今のは警告だ。その女を我々に渡せ」 「いやだ。あたしを渡さないでお願いだから」  叫ぶ、トリニティだった。 「いやだわ、私を傷つけた以上、しかえしをさせてもらおうわ」  ゴーストトレインの数箇所の関節部分から、白い粘液が戦闘16面体に吹きかけられる。 「くそっ、きさま、何をする。動けない」  16面体は、白い繭になって地表に落ちる。 「ああっ、いいきみよ」 「さあ、今のうちよ」ゴーストトレインは地中に潜ろうとする。 「ええっ、この腐肉の中を進むの、考えただけで気持ちが悪いわ。まって、どこにあたし をつれていくつもり」 トリニティは叫んだ。 「決まっているでしょう、禁断の実のある場所 じゃないの」 「それなら、いい、ここなら安全、らくちんだから。ああ、よかった」 (続く) 1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/

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