2008/10/28(火)08:17
宇宙から還りし王(山稜王改題)第27回
■宇宙から還りし王(山稜王改題)第27回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 「マンガ家になる塾」ドリル
「ポール、だめなんだ、艇が操船不可能だ」
ナノウが泣き出していた。
「ワイラー、ワイラー、俺達を助けろ」
返事がかえってこない。
「くそっ、本船との連絡もできんぞ」
探査艇は、ホール内へすべり込むようにすいこまれていく。光点
に近づく。
光の中心は木だった。いや木にみえるだけだろう。先刻から聞こ
えている音源はこの木のようだった。
がそいつは木に似ているだけで地球上の植物とはまったく異なっ
たものだ。そいつは急に限石くらいの大きさに膨張した。探査艇は
その木に着艇する。
「こいつは何だ」
そのあと、ナノウとポールの絶叫が本船のモニターから流れた。
「ポール、ナノウ、応答しろ」
「だめです。連絡できません」
「信号もとぎれました」
「ワイラー船長、アンバサダー号もホールの方へ流されつつありま
す」
「何だと、誰がエンジンを始動しろと言った」
「違います。何かわけのわからぬ力に船が引き寄せられているので
す」
「くそっ、奴らの仕わざか」
医療班のパト=オブライェンは救助艇に忍び込んでいた。
もういやだ。なぜ30年間も地球をはなれる決心をしたのだろう。
それにさっきのワイラーのしゃべりを聞けば、我々は実験材料じゃ
ないか。タンホイザーゲイトが人類に対してどんな反応をするかの。
俺は逃げてやるぞ。
オブライェンは救助艇の発射ボタンを押す。
が救助艇は、急速にカーブを描き、ホールの方へ吸い寄せられて
いった。
ワシリーはスイッチを押そうとした。
「船長、そのスイッチは自爆スイッチです」
オペレーターのジャービスが止めようとした。
「わかっている」冷たくワシリーは言った。
「なぜですか」不審な顔でジャービスは止める。
「奴らに地球の情報を与えないためにだ」
「奴らですって」
ジャービスは船長の右腕を押さえていたのだが、ワシリーは左腕
のひじをつかって自爆スイッチを押した。
衝撃が船体を襲う。
ネイサンはショックで気を失しなっていた。ようやく目ざめる。
いったいアンバサダー号になにが起ったのか、ネイサンは理解して
いなかった。先刻まで話をしていたマーガレットの姿がなかった。
それ以上に驚いた事に、船内に誰の姿もないのだ。急いでコック
ピットに入り、船内の生命反応を見る。ただ一つだけだった。ネイ
サンの反応だ。
船は自動的に動いている。タンホイザーゲイトのホールヘ向かい
直進していた。
もうホールは目の前だ。衝撃が再びあり、ネイサンは床にたたき
つけられた。アンバサダー号もタンホイザーゲイトのホールをくぐ
ったのだ。
ネイサンは自分の体がアンバサダー号をつきぬけて、空間の中に
浮んでいるのに気づく。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 「マンガ家になる塾」ドリル