飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

2012/02/03(金)11:09

「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回

「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説(26)

「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」   第6回   人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。 その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、 漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。 今日がその日だ。         「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」 ふっと滝は鼻で笑いながらいう。 しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。 ゆっくりと、滝が口を開いた。 「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のと ころまで案内してもらおうか」 「わからないんのだ。覚えていないのだ」 僕はあわてて、ごまかそうとする。 「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」 「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」  滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。 短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。 が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。 「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」 「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」 「僕は、、一体、誰だ、、、」 「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」 世の中がまるで180度回転したみたいだ。 僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。 もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと 僕の背中に照準あわせているのだ。 涙岩へは小一時間ほどかかった。 悪路だった。 村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。 滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。 この頑丈さは。何者なのだ。 それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。 「まて、日待クン」 滝は、道の徒切れていて、僕を止める。 山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、 そこに人の気配がした、 樹木のそばに隠れる。 涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。 村人以外の人が、かなりいるようだ。 あきらかに、村の人口よりは多い。 気づかれないように、そっと草陰から眺める。 涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。  人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。 「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」  それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし 大声で叫んだ。 「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」  どこからともなく突然、爆音がきこえた。 夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプター が5機、飛来してくる。 「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」   「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。 その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。 何てことだ。 彼女だった。 (続く)●090921改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」

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