飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

2020/10/02(金)10:09

ロボサムライ駆ける■第22回霊能師、落合レイモンの発言で、西日本議会は騒然となる。レイモンを助けょうとロボ侍主水。その前に、西日本護衛ロボ死二三郎が立ち、主水の左腕が切り落とされる。

ロボサムライ駆ける2011(247)

RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。 この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n2492db/21/ ロボサムライ駆ける■第22回霊能師、落合レイモンの発言で、西日本議会は騒然となる。レイモンを助けょうとロボ侍主水。その前に、西日本護衛ロボ死二三郎が立ち、主水の左腕が切り落とされる。 ロボサムライ駆ける■第22回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 「マンガ家になる塾」 youtube manga_training 「何、東日本のロボットが、人間の議場にいるじゃと」  ロボザムライを目がけて、いろいろなものが飛び交う。まるでレスリング会場だ。主水は思わず左腰に手を当てる。が、刀はそこにない。 「むっ、しまった」 (しまったのは、西日本の役人だが…)  むろん、主水はムラマサを抜くわけにはいかない。西日本に入るとき、関が原で刀は預けさせられている。  主水としては、立ち塞がる暴徒たちを当て身で倒していかねばならない。  但し、人間に傷を負わせるとこの西日本エリアでは重罪となる。  すばやくなぐりたおした人間が山となっている。レイモンのところへようやくたどりつく。  数十人の人間に囲まれているレイモンは、まるで団子だ。主水は一人一人をレイモンからはぎとっていく。ようやくレイモンの顔が見えた。 「レイモン閣下、ともかくこの場をお離れください」 「おお、夜叉丸に主水か、助けにきてくれたか。どうも私の言葉は人気がないようじゃのう」  レイモンは我と落ち着いている。 「主水、御前を連れて先に逃げてくれ」 「夜叉丸どのは……」 「私は、後ずめじゃ」 「こころえもうした」 「レイモン様、お体を持ち上げますぞ」 「わしの薬品混合タンクを忘れるなよ」  一言付け加えるレイモン。  主水は、レイモンの体を、薬品タンクつきで持ち上げ跳躍した。 「レイモンが逃げるぞ」数人がそれをとめようとする。 「待て、待て。おまえ達の相手は私だ」夜叉丸が名乗りをあげる。 「何物じゃ、お前は……」 「こおいうものじゃ……」  数人の議員があっと言うまに床に倒されていた。  その間に、主水は議席の背もたれの約十センチ幅の部分を、次々と跳びはねて、ようやく議会室外へ逃げ出していた。  いまや、議場は「レイモンを追え」の罵声に満ちている。パニック状態である。  ようやく議場外の回廊に出た。 が、そこに男がいる。まったく唐突にその男は現れていた。 蓬髪に、羽織りのロングコートで顔ははっきりわからぬ。 「レイモン、まて、売国奴め」  男はナイフを手にしている。レイモンにぶち当たってくる。どうしてこの議会に武器が…… 「いかん」  主水はナイフの前に自らの身を投げた。  が、その一瞬主水の持病が出た。 その時精神が空白となる。 主水の体は倒れる。 主水の体重は並の重さではない。 人間の三倍はあるのだ。  ナイフを突き出す男の腕ごと、主水の体で圧しつぶしていた。 「ぐわっ」男の腕はボキボキと折れ、気を失う。 「なんと、レイモンの護衛ロボットが人間を傷つけたぞ」  まわりの人々が走り寄る。  警備員がようやく気付き走ってくる。 「何だと」  人々は殺気立っている。 「待て、待ってくれ。この男はレイモン様を殺そうとしたのだ」  再び意識を取り戻した主水は叫んでいる。「うそを申すな。その証拠がどこにある」  口々に人は糾弾する。 「この男がナイフを…」  が、男のつぶれた手には肝心のナイフがない。 「レイモン様、ご助言を」  振り向いた主水。が、レイモンの姿も消えている。  呆然とする主水。 「これは、一体……」 「ロボザムライめ、おとなしく捕縛されよ」 「何をいうのじゃ」  主水は戦う姿勢をみせた。こうなれば戦わざるを得ない。 「こやつは我々人間に刃向かうつもりじゃぞ」 「死二三郎、狼藉者である。出番じゃ」 「ようし、我々も、究極兵器を使うのだ」  議会の護衛が大声でどなる。回廊にジャーンと音が響く。  廊下の床が割れ、そこから何かが急にが起き上がってきた。それは何と刀を持つ侍ロボットであった。  ドラキュラかおまえはと思う主水。侍ロボットは、かっと眼を開く。 「おおう、久しぶりで、わしの出番か。ありがたし」  声はかすれている。あまり、出番などないのであろう。  そのロボットは、ブルーの着物をきて、髪は、後ろは束ね、前は垂らしている。曇った虚無的な眼差しをしている。体の大きさは、主水と同等である。主水の方をゆーるりと見る。 「貴公か。人間の命令を聞かぬロボットなど、生きながらえる意味なし、死にそうらえ」  冷たい声音であった。  恐るべき雰囲気がそのロボットから発されている。  死二三郎は刀を構えるが、あることに気付く。 「うむ、貴公、東日本のロボザムライか」 「そうだといえばどうする」  ニヤリと笑う死二三郎。 「ふふう、相手にとって不足なし。お相手されよ」  主水に武器がないことに気付く。 「剣には剣でじゃ。剣を取られよ」  そのロボットは、自分がはい出てきた床の下の収蔵庫から剣を取り出し、主水にその剣を投げる。 「かたじけない」  主水は、剣を受け取ろうとした。主水に隙が生じている。  そう言った瞬間、相手は動く。 「ぐっ」  ごとりと何かがころがった。思わず、主水は右手で切り口を触る。 「ひきょうなり」  主水の左腕が見事に切り離されていた。 習練の早業である。 痛みの感覚が後から、主水を襲ってきた。 「ひきょうという言葉は俺にはない。勝負がすべてじゃ。次なる剣は貴公の首か、あるいは右腕か、どちらか決められい。そのように料理してくれよう」 この対峙する死二三郎は主水があったロポザムライの中で、一番の使い手だった。 「まて、死二三郎。そやつには聞きたいことがある。死に至らしめるな」  護衛がまわりから遠く離れて叫んでいる。誰も危険なところには近づきたくないのである。  死二三郎は、主水に視線を置きながら、護衛たちの方へ怒鳴っている。 「お言葉でございますが、ロボザムライにはロボザムライの義というものがござる。ここは義に免じていただきたい。剣の敵に助けられたとあっては、武士としての面目が潰れ申す。我が手で、このロボザムライ死に際をきれいにいたし申す」 「ならぬ、死二三郎。命令である。このロボザムライを助けよ、さがれ」  護衛は呼ばわった。 「死二三郎殿とやら、拙者も生き恥をさらしとうはない。どうか一刀のもとに貴殿の手で」 と主水はつぶやきながら、チャンスを見ている。 こやつには狂人の論理で立ち向かわねば。こやつは剣のことしか考えておらぬロボットだ。 「お覚悟されよ、そういえばお名前を聞いておらなんだな。何と申されるのだ」 「拙者、早乙女主水。徳川家直参旗本ロボット」 「おお、貴殿が噂に高い主水殿か。相手にとって不足はない。さらにお覚悟召されよ」 「死二三郎、待て」  護衛全員が叫ぶ。 切りかかろうとする死二三郎。  その一瞬、天井から電磁網が死二三郎の体を襲う。 電磁網は魚をとらえる投網のようなものである。 魚のかわりに、ロボットだ。 死二三郎は黒焦げになって倒れる。 議会護衛がいいことを聞かぬ死二三郎を処分したのだ。 「こやつは狂犬か」  護衛の一人が倒れている死二三郎の体を蹴る。 「いいや、狂犬より始末に悪い」 「だから申したであろう。気違いに刃物。ロボットに刃物と」  護衛同志の会話である。左腕を失った主水は、まだ戦う姿勢を見せていた。 「ええい、このロボットもからめとれい」 電磁網が天井から降りてくる。  電撃が主水の体を走る。 「いかん、わしも魚か」 主水の意識がフェイドアウトした。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 「マンガ家になる塾」 youtube manga_training

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る