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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

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ロボザムライ

2016.02.03
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カテゴリ:ロボザムライ
ロボサムライ駆ける■第58回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/


■第七章 血闘場(5-2)

「リキュール、何をしておるのじゃ」
 怒りの声が女に飛んでいる。

 リヒテンシュタイン博士は、自分の実験室で資料をまさぐっている我が娘を発見していた。
リヒテンシュタイン研究所は、博士がロボットでありながら、新しいタイプのロボットを研究していることで、世界でも有名であった。

「ま、まさか、お前、私の発見をロセンデールに…」
 少し考えていたリヒテンシュタイン博士だが言う。
「わかったぞ、今までロセンデールに情報を流しておったのは、お前だったのか。我が娘だとは気付かなかった」
「今頃、気が付いたのですか、お父様。まあ頭の古いタイプのロボットのお父様としては仕方がないですわね」
「何を言う…」
 階下での二人の大声の、ののしりあいを聞き付けて、登場するのはリキュールと双子ロボットであるマリアであった。
「いったい何があったの」
 研究室で睨み合っている二人のロボットに気付く。
「お父様。まあ、リキュールお姉様もどういうことなの」
「マリア、このお前の姉は裏切り者なんじゃ。ロセンデールに秘密を漏らしておったのじゃ」 博士は怒りにまかせて、リキュールを非難する。
「どうして、お姉様」
 マリアはリキュールに目を向けた。
「どうしてですかって、マリア、お前はあの主水とかいう東洋のロボットにううつを抜かしてしまって目が見えなくなってしまったのですか。今の世界をご覧なさい。早く世界を統一しなきゃあ、大変なことになってしまうのですよ」
 妹のマリアの方を向いてリキュールは毒ついた。
「それとロセンデールに秘密をしゃべることは関係があるのですか」
「この娘はロセンデールにたぶらかされおって。よし、今からロセンデールの家に行こう、お前は留守番だ、マリア」
「でも、私もいったほうが…」
「いい」
 それが、マリアが生きている二人を見た最後だった。二人は邸から出て行く。悲劇はこの後おこった。

 二人の遺体がロセンデール家から送り返されてきた。
 『当家に侵入しょうとして殺された』との添え書きつきで。

 ロセンデールが、リキュールとリヒテンシュタイン博士を殺したのか。それははっきりとはわからない。

 マリアは博士とリキュールの遺体を前に復讐を誓う。

「お姉様。いい、あなたの記憶を私の電子頭脳の一部に移植するわ。だから、私は今日からマリア=リキュール=リヒテンシュタインとなるわ。ロセンデール卿、覚えてらっしゃい。きっと父の恨み晴らして見せるわ」

「マリアどうした。なぜそんなに嘆き悲しんでいるんだ」
 主水がリヒテンシュタイン博士の屋敷を訪れていた。
「主水…、もっと早くきてくれれば……」
 主水の胸元で泣き崩れるマリアでった。
「お父様とお姉様が…、ロセンデールに滅ぼされたの」
「が、リキュール殿はロセンデール卿の…」

「そう、姉はロセンデールの愛人ロボットだった。でもこの状態よ」
「ルドルフ殿下に訴えれば…」
「だめよ。証拠がない。それに、ロセンデールはルドルフ殿下のお気に入りだもの」

「おのれ、ロセンデールめ、この恨みはらさいでか」

「復讐は、ロセンデールが他の国にいるときでないと…」

 が、主水とマリアは、とうとうロセンデールの屋敷まできてしまっていた。ロセンデールの館は中世の城を模して作られている。回りに堀が巡らされている。
「ロセンデール、姿を見せろ」

 主水は長い間叫んでいた。やがて、ロセンデールが城壁の上から姿を見せた。
「おや、これはこれは私の愛しいザムザを滅ぼした黄色いロボットではありませんか。それに黄色いロボットにくっついた裏切り者では…」

 ロセンデールの嘲りの言葉に、急にマリアが珍しく、癇癪を爆発させていた。
「ロセンデール、降りてらっしゃい。父と姉の敵…」

「おやおや、麗人マリア、どうかしたのですか。そんな怒りは体によくありませんよ。私があなたの博士と姉を殺したですと…。間違ってもらっては困ります。二人は、私のこの屋敷に不法侵入しようとしたのです。それ故、自動装置が働き、二人を焼き殺してしまったのです。事故ですよ。事故」

「ロセンデール、覚えていなさい。この敵、必ず打って見せます」
「おやおや、マリア。恐ろしい表情ですね。あなたの姉リキュールはいくら怒ったって、このようなお顔は見せませんでしたよ」

「止めなさい。私の姉を嘲るのは」
「主水よろしいですか。愛しい者を失ったものの痛みがわかったでしょう」

 ロセンデールの青い目に冷たい光が宿っていた。騒ぎを聞き付けてルドルフの親衛隊が駆けつけ、とりあえず収まったのであるが。ロセンデールは次々と刺客を二人の身を襲わせた。それ故、二人は神聖ゲルマン帝国より逃れたのである。

(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/






最終更新日  2016.02.03 18:15:54
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カテゴリ:ロボザムライ
ロボサムライ駆ける■第58回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■第七章 血闘場(5-2)

「リキュール、何をしておるのじゃ」
 怒りの声が女に飛んでいる。

 リヒテンシュタイン博士は、自分の実験室で資料をまさぐっている我が娘を発見していた。
リヒテンシュタイン研究所は、博士がロボットでありながら、新しいタイプのロボットを研究していることで、世界でも有名であった。

「ま、まさか、お前、私の発見をロセンデールに…」
 少し考えていたリヒテンシュタイン博士だが言う。
「わかったぞ、今までロセンデールに情報を流しておったのは、お前だったのか。我が娘だとは気付かなかった」
「今頃、気が付いたのですか、お父様。まあ頭の古いタイプのロボットのお父様としては仕方がないですわね」
「何を言う…」
 階下での二人の大声の、ののしりあいを聞き付けて、登場するのはリキュールと双子ロボットであるマリアであった。
「いったい何があったの」
 研究室で睨み合っている二人のロボットに気付く。
「お父様。まあ、リキュールお姉様もどういうことなの」
「マリア、このお前の姉は裏切り者なんじゃ。ロセンデールに秘密を漏らしておったのじゃ」 博士は怒りにまかせて、リキュールを非難する。
「どうして、お姉様」
 マリアはリキュールに目を向けた。
「どうしてですかって、マリア、お前はあの主水とかいう東洋のロボットにううつを抜かしてしまって目が見えなくなってしまったのですか。今の世界をご覧なさい。早く世界を統一しなきゃあ、大変なことになってしまうのですよ」
 妹のマリアの方を向いてリキュールは毒ついた。
「それとロセンデールに秘密をしゃべることは関係があるのですか」
「この娘はロセンデールにたぶらかされおって。よし、今からロセンデールの家に行こう、お前は留守番だ、マリア」
「でも、私もいったほうが…」
「いい」
 それが、マリアが生きている二人を見た最後だった。二人は邸から出て行く。悲劇はこの後おこった。

 二人の遺体がロセンデール家から送り返されてきた。
 『当家に侵入しょうとして殺された』との添え書きつきで。

 ロセンデールが、リキュールとリヒテンシュタイン博士を殺したのか。それははっきりとはわからない。

 マリアは博士とリキュールの遺体を前に復讐を誓う。

「お姉様。いい、あなたの記憶を私の電子頭脳の一部に移植するわ。だから、私は今日からマリア=リキュール=リヒテンシュタインとなるわ。ロセンデール卿、覚えてらっしゃい。きっと父の恨み晴らして見せるわ」

「マリアどうした。なぜそんなに嘆き悲しんでいるんだ」
 主水がリヒテンシュタイン博士の屋敷を訪れていた。
「主水…、もっと早くきてくれれば……」
 主水の胸元で泣き崩れるマリアでった。
「お父様とお姉様が…、ロセンデールに滅ぼされたの」
「が、リキュール殿はロセンデール卿の…」

「そう、姉はロセンデールの愛人ロボットだった。でもこの状態よ」
「ルドルフ殿下に訴えれば…」
「だめよ。証拠がない。それに、ロセンデールはルドルフ殿下のお気に入りだもの」

「おのれ、ロセンデールめ、この恨みはらさいでか」

「復讐は、ロセンデールが他の国にいるときでないと…」

 が、主水とマリアは、とうとうロセンデールの屋敷まできてしまっていた。ロセンデールの館は中世の城を模して作られている。回りに堀が巡らされている。
「ロセンデール、姿を見せろ」

 主水は長い間叫んでいた。やがて、ロセンデールが城壁の上から姿を見せた。
「おや、これはこれは私の愛しいザムザを滅ぼした黄色いロボットではありませんか。それに黄色いロボットにくっついた裏切り者では…」

 ロセンデールの嘲りの言葉に、急にマリアが珍しく、癇癪を爆発させていた。
「ロセンデール、降りてらっしゃい。父と姉の敵…」

「おやおや、麗人マリア、どうかしたのですか。そんな怒りは体によくありませんよ。私があなたの博士と姉を殺したですと…。間違ってもらっては困ります。二人は、私のこの屋敷に不法侵入しようとしたのです。それ故、自動装置が働き、二人を焼き殺してしまったのです。事故ですよ。事故」

「ロセンデール、覚えていなさい。この敵、必ず打って見せます」
「おやおや、マリア。恐ろしい表情ですね。あなたの姉リキュールはいくら怒ったって、このようなお顔は見せませんでしたよ」

「止めなさい。私の姉を嘲るのは」
「主水よろしいですか。愛しい者を失ったものの痛みがわかったでしょう」

 ロセンデールの青い目に冷たい光が宿っていた。騒ぎを聞き付けてルドルフの親衛隊が駆けつけ、とりあえず収まったのであるが。ロセンデールは次々と刺客を二人の身を襲わせた。それ故、二人は神聖ゲルマン帝国より逃れたのである。

(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)
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最終更新日  2016.02.03 17:35:03
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2016.01.04
カテゴリ:ロボザムライ
ロボサムライ駆ける■第44回
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第五章 機械城(7)
 主水は乱戦にて、一人切り放されていた。
「主水、この攻撃が受けられるか」
 機械城城壁が前に動いた。
「何と」

城壁の一部が地上少しばかり浮き上がり、動き始めた。地下には
キャタピラが数基、装着されている。
 「主水、機械城がただの前衛基地と思うたか。この機械城は、動く
地上要塞よ」
 「ロセンデール卿め、敵ながらさすが」
 「主水、そこを動くな」
 主水の左右前後から、接合から切り離された城壁の一部が迫って
きた。圧し潰すつもりだ。
 「主水、我が城、機械城の人柱となれ」
 機械城城壁の一つ一つの石垣が、ばらばらにあり、浮き上がる。
そして花のように舞う、空に舞う石垣の上に、何人かのロボ忍が乗
っている。
「これは面容な」
「『石垣の舞い・天城陣』をお目にかける、土木殿、拙者、花村一
去じゃ」ロボ忍の頭が言った。
「我らが護衛しておる機械城。ちよっとゃ、そっとのことでは、破
られぬぞ、主水」
「主水、我らが天城陣敗れるか」
 ロボ忍たちの城府が、上水の頭上に自在に回っている。

上に向かい、叫ぶ主水であった。
主水のそばに、四方の城壁が緩々と追って来る。

「花村殿、破って見せようぞ」
「まずは、城壁で圧しつぷしてくれるわ」
 両手で壁を支える主水。瞬間、主水は双剣を足元に立てた。
両足でその双剣を挟み込む。竹馬の要領で乗る。
目に止まらぬ早さで回転し始める。地埃が起こる。
 数秒後、主水の姿は消えていた。
「くっ、主水め。地に潜りよった」
「ええい、捜せ」
 城石から地上に降り立つ忍者たち。掘り返された地上には埃まみ
れである。
「ぐわっ」
バタバタと倒れるロボ忍たち。地中から急に飛び出した
主水の刀が、ロボ忍をすべて切り離していた。
「見たか、地づりの剣」
 地中から土埃とともに、双剣を持ち、主水が現れていた。
「皆様のお命頂戴致す」
 地に倒れるロボ忍たちは。瞬時に切り刻まれている。
主水は片手拝みする。

花村だけが浮遊する減石に残っていた。
「県怯なり、主水。我が手下の敵」
 減石が主水の方へ飛び降りて来る。瞬時、主水は跳躍していた。
 上空で態勢を変える。剣先を下にして、花村の天頂目かけて落下
する。
「ぎゃっ」
 花村の体を、頭の笑中から胴体まで、主水の剣が貴いていた。
倒れている花村の側に、主水が近寄る。

「花村殿、徳川公の行方を教えてくださらぬか」
「ふふう、甘いのう、主水。俺が教えると思うのか」
 傷ついた花村は、側にいる主水の足をがっちり掴み込んだ。
「どうじゃ、私の電子心臓はやがて爆発しよう。貴様も道連れじゃ」
 主水は、自らの剣を、花村の死体から引き抜こうとしたが、外れ
ぬ。小刀も失っていた。花村を両手で叩くが動かぬ。
 最後の手段だった。主水は自らの右手で、しがみつかれている両
足を叩き折った。
 「くわっ」自らの足をそのまま残し、体を回転し逃れる。
 直後、花村の休は爆発する。傷だらけの主水が転がった後には、
花村の残滓が空から散らばり降りて来る。しばらくの間、動くもの
はなかった。
 二つの影が、主水の残った体を抱いた。
 「山本どの、すまぬ。知恵もすまぬ」

(続く)
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最終更新日  2016.01.04 18:02:26
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2016.01.03
カテゴリ:ロボザムライ
ロボサムライ駆ける■第41回
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■第五章 機械城(4)

 主水は愛剣ムラマサを片手に空母へとひた走る。

反乱ロボットの中である一群を見ている。
それは力士ロボットである。
空母甲板のうえ、主水は大音声でいいきかす。

「力士ロボットの皆様、申し上げる。拙者、早乙女主水でござる。左舷側に集まっていたたけぬか」
 先刻の剣闘士試合で大樹山を屠った主水だから、力士ロボットはいうことを聴く。
「早乙女様、集まりましたぞ。後はいかように」
「しこを踏んで下されい」
「しこですと、聞き間違いでは…」
 力士たちは戸惑いを隠せない。
「さよう、しこです」
 念を押した。

「ご命令とあらば」
 首をかしげながら、力士ロボットが一斉に、しこを踏んだ。
 パランスが崩れている空母ライオンは、甲板上のロボット力士のしこの振動で、左舷側に重さが集中してくる。
 続いて、舷側まで走り、主水は海面に向かって叫んでいた。

「サイ魚法師、私だ。主水だ。お主たちが海中におるのはわかっておる。助けを所望じゃ」 ぐらぐらと振動する空母ライオンの横に、小型の潜水艦が浮上する。サイ魚法師の新しい潜水艦だった。
「やはりおったか、法師。同じロボット同志、ここは助けてくれぬか」

「おう、生きておったか、主水。申しで断る、と言いたいところだが、先日ロセンデールから追い出されたわしじゃ。それゆえ、意趣返しじゃ。主水、協力してやろう」
 サイ魚法師はつるりと顔をなで笑った。
「かたじけない、さすがはその名も高いサイ魚法師じゃ、有り難い」

「おい、主水、褒めるのもいいかげんにいたせ。早くしないとシュトルフの聖騎士団がやってこようぞ」
「わかった。右舷側からサイ魚の攻撃をお願いもうそう」

「あいわかった。まっておれ。特製のサイ魚軍団攻撃を加えてやるわ」
 サイ魚法師の潜水艦の後には数万匹のサイ魚の群れがひしめいている。

「ライオン」の右舷に水しぶきがあがる。
 サイ魚の大群が魚雷のように空母を攻撃しはじめた。

このサイ魚は鉄を食う魚である。 バイオ空母「ライオン」の船底は食い尽くされる。
バイオ空母だけに、鑑底は柔らかいのだ。

加えて力士ロボットの働きぶりである。ライオンは沈み始めた。
「ロセンデール卿、ロセンデール卿はどこだ」主水は叫んでいた。艦橋のラダーを駆け上がっていた。
「ロセンデール卿降りてこい。勝負じゃ」
 そのとき、急速に降下してくるバイオコプターが一機ある。
「いかん、逃げろ」
 主水は、反乱ロボットに向かい叫ぶ。
 
何体かの力士ロボットが被弾し、数体倒れる。
バイオコプターからの一連射が甲板上を縫った。

「これが私の挨拶状がわりです。主水くん、機械城で待っておりますぞ。ふっふっ」
 バイオコプターの窓から、ロセンデールの顔が浮かびあがって、にやりと笑った。

(続く)
ロボサムライ駆ける第五章 ■ロボサムライ駆ける■
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最終更新日  2016.01.03 09:24:44
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2008.05.26
カテゴリ:ロボザムライ

[ ロボザムライ駆ける ]
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(10)
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第七章 血闘場
   (10)
 マリア=リキュールはロセンデールの首をくわえて逃亡後、行方不明となる。
 ヨーロッパのいずこかに住んでいるといわれている。
 びゅんびゅんの鉄は、マリア=リキュールから受けた傷がもとで現在療養中である。
 知恵は、外国のロボット奴隷解放運動で活躍しているらしい。
 サイ魚法師は、太平洋岸を現在荒らし回っていると風の便りに聞いている。
 足毛布博士は、京都の研究所で、侍ロボット改良版を製作中と聞く。早乙女主水にそっくりで、主水2というネーミングらしい。
 落合レイモンと夜叉丸は、まだ西日本エリアに残って、古代都市研究を行っている。
 現在でも古代都市のことは日本国内では秘密となっている。
 水野と斎藤は、みはしらさまの指示にしたがい、ロボット奴隷制をいやいやながら廃止した。
 生き残った、クルトフとシュトルフ率いる聖騎士団は、飛行船「飛天」「高千穂」に乗せられ、インド洋上でヨーロッパ連合の船に乗り移り、帰っていった。
 ロセンデールは、みはしらさまが言ったたように復活したと風のうわさに聞く。
 徳川公国のお主(かみ)と早乙女主水は、東京エリアの徳川公国にまだ住んでいる。
 主水は自分の病気を直そうと必死である。
 
■ロボサムライ駆ける完■


■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(10)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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最終更新日  2008.06.19 11:54:05
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■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(9)
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■第七章 血闘場(9)

『それは、私が解決しよう』
 空洞にいる人々の心に心柱の声が響き渡った。
「おお、心柱さまがしゃべられるぞ」
 居並ぶ人々は、古代都市にいる全員が耳を傾ける。
 クルトフ、シュタイフの聖騎士団。
 山本の率いる反乱ロボット。
 水野、斎藤の率いる西日本都市連合軍。
 徳川空軍、徳川旗本ロボット、早乙女主水。 徳川公、落合レイモン、夜叉丸、足毛布博士等である。
『水野、斎藤、反乱ロボットを接収すること相成らぬ。
 また反乱ロボットの皆、よく聞いてくれ。足毛布一族、われらをこの千年にもわたって守ってくれたのじゃ。それゆえ、憎むこと合いならん。また、夜叉丸はわしがレイモンつかわせた霊人間なのじゃ。
 足毛布博士、落合レイモンは、このわしとともにこの古代都市を再開発、研究せよ。
 徳川公は、早乙女主水と東京へもどり、東日本の内政を改めよ。
 それから、クルトフ、シュタイフ、二人はルドルフとロセンデールに告げよ。私が解放された以上、日本への神聖ゲルマン帝国の侵入は、たやすくないぞとな。以上だ』
「おおーっ、さすがは心柱、みはしら様じゃ」 喚起の声と、失望の声があがっていた。が、いまや、みはしらさまにしたがう他はないのだ。
 足毛布博士の屋敷で、最初にしゃべっていたのは、霊人間 夜叉丸であった。
「主水、わしの手元に戻ってきてくれるか」 足毛布博士が頼むように、主水に言う。
「が、博士、幾ら生みの親とはいえ、拙者は義に生きとうございます」
 思わぬ答えに足毛布はたじろぐ。
「義とは?」
 足毛布は不思議なものを見るような目をした。
「徳川公のおつかえして、日本につくすことです」
 キッパリと言った。
「おお、よういうた。主水。足毛布博士、主水をお預かり申す」
 徳川公廣が、博士に礼をした。そうそうにここから主水を連れ出すつもりだ。
 が、博士は主水にたいして罵詈雑言をはく。「主水よ、私を裏切る気か。お前を作り、ここまで育てた私をな」
「博士、それは…」
「よいか、誰がお前、主水をあのNASAの空軍基地から助け出してやったと思うのだ。よいか、お前のために私は防御レーザーにより傷を負ったのだ、わかるか主水。自らの息子よりもお前のことを愛していたのだぞ。それをお前は裏切り、あまつさえ、この西日本から出ていこうとするのか。これをこれを裏切りと呼ばずして何と呼ぶのだ」
 足毛布博士の怒りは治まりそうになかった。「主水、これを見よ」
 足毛布はふところから、たばこを出して大地へ捨てた。
「…」
「今、捨てたのはお前のロボットストレス対処用の薬が入ったタバコじゃ。よいかもう二度と手には入らぬ。材料はアメリカ製じゃからな。これが親である私に対する裏切りに対する復讐の一つだ。これからも油断するなよ。生みの親を捨てたお前に災難が降りかかろうぞ」
「主水、気にするな」
 徳川公がやさしく声をかける。
「お前は正しいのだ」
『主水よ…』
 みはしらさまが、主水に話しかけた。
『忘れものじゃ。返してくれぬか』
「はっ…」
 主水はどきまぎする。
『そのクサナギの剣どじゃ、しばらくは用はなかろう』
 主水はまだその剣を握り締めたままだった。「しばらくですと」
『そうじゃ、その剣を再び使うときは、運命の七つ星すべてそろった時じゃ』
「運命の七つ星。それは一体…」
『主水、それは…、お前の運命じゃ。いずれわかるときがあろう』
 恨めしげに眺める足毛布を背にしながら、主水は徳川空軍の飛行船に乗った。
「だんな、だんな…」
 話しかけるものがある。鉄だった。下半身は吹き飛び、担架に乗せられている。
「あっしは、もうだめでさ。手も足もでませんや」
「鉄、お前…」
「えっ、だんな、どういたしました」
「そんなシャレを言ったから大丈夫だろう。 手ぐらいでようよ。足がないぐらいでな」「だんなも人が悪いや」
 それを受けて
「これ、鉄、俺は人ではない。ロボザムライ早乙女主水じゃ」
「決まったね、ダンナ」
 少しは元気を取り戻した主水である。
 飛行船は、地下空洞から上空へ飛び上がって行く。

(続く)

■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(9)
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最終更新日  2008.06.19 11:52:21
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■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(8)
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第七章 血闘場(8)

「よいか、反乱ロボットの諸君。今回は大目に見よう。首謀者を出せば全員を許そう」水野が言った。
「そうだ、その通りだ」斎藤が続けた。
「貴様たちも我々人間がいなければどうにもならんのだぞ」
 斎藤は憎々しげに言う。
 主水は反乱ロボットたちを助けようと
「いかん、ロボット旗本の方々、存分にお味方くだされい」
 主水は、飛行船で到着して傍観していた徳川空軍・旗本に言った。
「主水、止めるのじゃ」
 徳川公があわてて制した。
「なぜでございます。お上」
「よいか、我々は西日本を征服するのが目的ではない。我々東日本と西日本は政治体制が異なる。この制度、壊すこと、相成らぬ」
 徳川公のきつい怒りの言葉であった。
「さようでございます。さすがは徳川公」
 水野が喜んで言う。
「主水殿、お恨みもうす」
 山本が言った。
「主水のおじさん、肝心のとき、役にたたないねー」
 知恵がいう。首をうなだれる主水。
 反乱ロボットは、西日本都市連合政府軍によって収容されそうとなる。反乱ロボットは、軍に収容されるため動きはじめる。
(続く)
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最終更新日  2008.06.19 11:50:48
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■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(7)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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     (7)
「反乱ロボットの諸君も鉾を納めていただきたい」
 反乱ロボットの方へ向き直り、徳川公は語り掛ける。
「なぜだ」
「君たちの目的は自らの身分制度打破であろう。ゲルマン帝国との戦いが目的ではないはずだ。今のままではゲルマン帝国との戦いになってしまう」
 徳川公はじゅんじゅんと諭した。
「それでは足毛布博士を我々に渡していただこう」
「何と」
「足毛布博士を血祭りに上げる」
 反乱ロボットたちは言った。
「そうだ。そうしなければ我々の憤りは吐けぬ。何のために多くの仲間が死んでいったことか」
 足毛布博士が、他の人々の群れから押し出されてきた。
「足毛布博士に手を出すこと、拙者が許さぬ」 主水は叫んでいる。
「主水殿、どうなされた」
 皆が驚いている。
「貴公、我々を裏切るおつもりか」
「お許し下され、皆々様。やはり、足毛布博士は父でございます」
 悲しげに主水は言う。
「が、主水殿。我々反乱ロボットの目的の一つは、足毛布博士の処刑ですぞ」
「そうだよ、主水のおじさん。おいらたち子供ロボットが偉い目にあったのもみんなこの男のせいなんだよー」
 知恵が言う。
「もうよい、主水。私をおとなしく反乱ロボットたちに渡せ。そうしないとお前の命も危ない」
 足毛布博士は言う。
 その様子を見ているレイモンは隣にいる夜叉丸に小声でささやく。
『博士も役者よのう。夜叉丸、まあ様子を見ておれい。面白いことが起こるぞ』
「それは、一体」
 主水が反乱ロボットに押さえられている。足毛布博士を跪かせ、数人のロボットが刀を元上げる。
 足毛布博士は頭を項垂れている。
 刀を降り下げようとする。が、一瞬後、体が動かなくなる。
「これはどうしたことだ」
「どけ、私が変わる」
 何人ものロボットが、続々と足毛布博士の首を撥ねようとするが、それができない。
 体が固定してしまう。
 足毛布博士がゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと反乱ロボットに向かう。慢心の笑みが浮かんでいる。それも皮肉な笑みだ。
「よいかロボットの諸君。私は君たちの父なのだ。父は子供のICチップに最終指令をコマンドしてあるのだ。私を殺さぬようにな。このコマンドは君らの心の奥深くに埋め込まれている。誰も気付かぬ。またいかなるロボット工学博士でも、そのコマンドは解除することができぬのだ」
「足毛布博士、流石よのう」
 水野が叫んでいた。西日本都市連合のロボット軍隊がいつのまにか、古代都市の大空洞に結集していた。


(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(6&7)
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最終更新日  2008.06.18 23:45:40
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■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(6)
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     (6)
地下大空洞に声が響き渡っている。
「皆、剣を下げよ。これ以上の戦いは無用だ。シュトルフ、全員に命じろ」意外なことにクルトフが命令していた。
「しかし、クルトフ様」
 シュトルフが抗弁しようとする。
「だまれ、シュトルフ。ロセンデール様がなくなった今、これ以上は無用だ。我々はもう空母も機械城もないのだぞ」
「そうです。公式には日本と神聖ゲルマン帝国は交戦していないのです」徳川公が言葉を継いだ。
「我々としては心柱が目覚められた現在、わざわざことを荒立てる必要はない」
 斎藤も一言加える。
「それゆえ、我々は武装を解除します。よろしいな、シュタイフくん」
「はっ。クルトフさま」
シュタイフは渋々命令に従う。聖騎士団は、武器を下げた。
シュタイフの胸の内にはにがいものが込み上げてきた。
『ロセンデール殿下、お許しください。私はあなたをお守りできませんでした。このクルトフめは、一三人の諸公のうちの誰かから、ロセンデール殿下を滅ぼすために遣わされたに違いないのです。その証拠を握ることはできませんでした。殿下、この敵は必ず…』
(続く)
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最終更新日  2008.06.18 23:44:15
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■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)
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 (5)
 主水は過去を思い出していた。三年前、主水は大帝の前に膝を屈していた。
「そちが早乙女主水か。日本からの留学ロボットか」
 ルドルフが尋ねた。
「さようでございます」
 側には心配そうな顔をした、マリアが佇んでいた。
「本来ならば、黄色いロボットなど会いたくはないのだがのう」
 ルドルフ大帝は主水を見下すようにしゃべった。ルドルフは黄金のいすに座っている。ここはベルリン、ルドルフの宮殿、謁見の間である。
 霊戦争後、ヨーロッパの大国となったのは、ルドルフ大帝率いる神聖ゲルマン帝国である。このルドルフの宮殿は、ヨーロッパ各国から贈られた美術工芸品で一杯だという。美的センスにおいてはヨーロッパ一だと思われていて、本人にもそう思っている耽美王である。財宝には眼がないのだ。
「おまけに、そちはこのリヒテンシュタイン卿の娘マリア=リヒテンシュタインを嫁に迎えたいというのか」
 黙って膝を曲げているだけの主水である。「これ主水とやら、返事をせぬか」
 宮殿の誰かが声を掛けた。
「さようでございます、殿下。ぜひともマリア=リヒテンシュタイン嬢を我が嫁に」
「が、貴公知っておろう。マリアはビスマルク公の息子ザムザと婚約しておるのだぞ」
 主水はルドルフを見上げた。
「それも充分承知しております」
 主水はキッとして答える。
「ほほう、充分だと。どれくらい充分なのかな。では、マリアを掛けて、ザムザ=ビスマルクと対決するかな」
 ルドルフは主水の胸を内を探るように尋ねた。
「……」
「どうじゃ。返事をせい」
 その時、宮殿に急ぎ走り込んできたロボットがある。
「大帝、こやつが何と言おうと決闘させて下さい」
 金髪で、力強い顎、冷徹な青い眼、鷲鼻、おまけに二メートル二〇はある巨身。ザムザ=ビスマルクである。
「この東洋の黄色い猿ロボットに、むざむざ婚約者を盗まれたとあっては我が家の名誉にかかわります。大帝、どうか決闘をお許し下さい」
 息せききって言うザムザであった。
「どうじゃな、主水。もし、この決闘の申し出を受けなければ、東洋の卑怯者として貴公の名は長く残るであろうよ」
 ルドルフはひじ掛けに手を当て、足を組み、ゆっくりと言った。主水をけしかけているのだ。
「主水、決闘だ」
「主水、どうか、私のために決闘しないで。卑怯者と言われてもいいではないの。あなたがいなくなることが恐い」
 側にたたずんているマリアが嘆いていた。「決闘しないというならば、私がマリアを殺すぞ」
 ザムザがマリアを抱き抱えていた。ゆっくりと剣を抜く。
「これ、ザムザ。大帝の前であるぞ。何をしでかすザムザ。恋の嫉妬に目が眩んだか」
「いえ大帝、失礼をお許し下さい。ヨーロッパロボットが、この東洋ロボットに辱めを受けたこと、許しがたいのです」
「決闘せざるをえないな、ザムザ」
 主水がザムザの方をキッとにらみつけ、ゆっくり言った。

 決闘場所は、ベルリンから離れた田舎の都市、ハイデルベルグである。決闘の町として有名であった。
 決闘場には、多数の観客が詰め掛けていた。スタジアムの真ん中で二人は対峙しているのである。正式な決闘のため、ルドルフ大帝が役人を遣わしていた。
 東洋のロボットを見ようと、人々は詰め掛けていたのである。二人の一挙一動にスタジアムから歓声が上がっている。空は決闘日和に、雲ひとつなく晴れ上がり、マイン川からの澄み切った風が二人の体をなでていた。
 二人は長い間睨み合っている。
「主水、容赦はしないぞ」
「ご同様だ。ザムザ」
 叫ぶやいなや両者は中央に躍り出た。
 最初のひとたちが、主水の額を切った。
「おおっ…」
 という叫び声が観客から上がる。
「ふん、口ほどにもないのう、主水」
「あっ」
 マリアが眼をつぶってしまった。
「マリア、眼をつぶるな、お前の愛しい主水が我輩の手で倒れるのを見ろ」
 勝ち誇るザムザ。瞬間、ザムザにすきが生じる。それを見逃す主水ではない。
「と-つ」
 その慢心の笑みの顔真ん中を主水のムラマサは突き抜いていた。
「うわっ…」
 観客のさざめきが主水の耳にも届いた。スタジアムは総立ちである。その時、スタジアムに何かが侵入してきた。
「ザムザ君」
 大きな悲鳴が、主水の後から聞こえた。
「この黄色いロボットめが、私の愛しいザムザを…」
 主水は、剣を、ザムザの顔から引き抜き、声の主の方へ振り返った。
 白馬に乗ったやさ男が、にくしみの青い目で、主水を睨んでいる。怒りのオーラがそのあたりに満ち満ちていた。男はゆっくりと馬から降り、ザムザの体を抱き上げ、ほおずりした。
「ザムザ、さぞつらかったろう」
 そして、再び、主水の方を向いた。
「主水とやら、今度は私が相手だ」
 まわりの観衆から、宮廷人々が止めに入った。
「お止めください、ロセンデール様。これは正式の決闘なのです」
「いや、ならん。この黄色いロボットに一太刀打ち付けねば…」
「存分にされよ。受けて立ちましょう」
「何をほざく」
 それが初めての出会いであった。
    ◆
「リキュール、何をしておるのじゃ」
 怒りの声が女に飛んでいる。
 リヒテンシュタイン博士は、自分の実験室で資料をまさぐっている我が娘を発見していた。リヒテンシュタイン研究所は、博士がロボットでありながら、新しいタイプのロボットを研究していることで、世界でも有名であった。
「ま、まさか、お前、私の発見をロセンデールに…」
 少し考えていたリヒテンシュタイン博士だが言う。
「わかったぞ、今までロセンデールに情報を流しておったのは、お前だったのか。我が娘だとは気付かなかった」
「今頃、気が付いたのですか、お父様。まあ頭の古いタイプのロボットのお父様としては仕方がないですわね」
「何を言う…」
 階下での二人の大声の、ののしりあいを聞き付けて、登場するのはリキュールと双子ロボットであるマリアであった。
「いったい何があったの」
 研究室で睨み合っている二人のロボットに気付く。
「お父様。まあ、リキュールお姉様もどういうことなの」
「マリア、このお前の姉は裏切り者なんじゃ。ロセンデールに秘密を漏らしておったのじゃ」 博士は怒りにまかせて、リキュールを非難する。
「どうして、お姉様」
 マリアはリキュールに目を向けた。
「どうしてですかって、マリア、お前はあの主水とかいう東洋のロボットにううつを抜かしてしまって目が見えなくなってしまったのですか。今の世界をご覧なさい。早く世界を統一しなきゃあ、大変なことになってしまうのですよ」
 妹のマリアの方を向いてリキュールは毒ついた。
「それとロセンデールに秘密をしゃべることは関係があるのですか」
「この娘はロセンデールにたぶらかされおって。よし、今からロセンデールの家に行こう、お前は留守番だ、マリア」
「でも、私もいったほうが…」
「いい」
 それが、マリアが生きている二人を見た最後だった。二人は邸から出て行く。悲劇はこの後おこった。

 二人の遺体がロセンデール家から送り返されてきた。
 『当家に侵入しょうとして殺された』との添え書きつきで。

 ロセンデールが、リキュールとリヒテンシュタイン博士を殺したのか。それははっきりとはわからない。

 マリアは博士とリキュールの遺体を前に復讐を誓う。
「お姉様。いい、あなたの記憶を私の電子頭脳の一部に移植するわ。だから、私は今日からマリア=リキュール=リヒテンシュタインとなるわ。ロセンデール卿、覚えてらっしゃい。きっと父の恨み晴らして見せるわ」
「マリアどうした。なぜそんなに嘆き悲しんでいるんだ」
 主水がリヒテンシュタイン博士の屋敷を訪れていた。
「主水…、もっと早くきてくれれば……」
 主水の胸元で泣き崩れるマリアでった。
「お父様とお姉様が…、ロセンデールに滅ぼされたの」
「が、リキュール殿はロセンデール卿の…」「そう、姉はロセンデールの愛人ロボットだった。でもこの状態よ」
「ルドルフ殿下に訴えれば…」
「だめよ。証拠がない。それに、ロセンデールはルドルフ殿下のお気に入りだもの」
「おのれ、ロセンデールめ、この恨みはらさいでか」
「復讐は、ロセンデールが他の国にいるときでないと…」
 が、主水とマリアは、とうとうロセンデールの屋敷まできてしまっていた。ロセンデールの館は中世の城を模して作られている。回りに堀が巡らされている。
「ロセンデール、姿を見せろ」
 主水は長い間叫んでいた。やがて、ロセンデールが城壁の上から姿を見せた。
「おや、これはこれは私の愛しいザムザを滅ぼした黄色いロボットではありませんか。それに黄色いロボットにくっついた裏切り者では…」
 ロセンデールの嘲りの言葉に、急にマリアが珍しく、癇癪を爆発させていた。
「ロセンデール、降りてらっしゃい。父と姉の敵…」
「おやおや、麗人マリア、どうかしたのですか。そんな怒りは体によくありませんよ。私があなたの博士と姉を殺したですと…。間違ってもらっては困ります。二人は、私のこの屋敷に不法侵入しようとしたのです。それ故、自動装置が働き、二人を焼き殺してしまったのです。事故ですよ。事故」
「ロセンデール、覚えていなさい。この敵、必ず打って見せます」
「おやおや、マリア。恐ろしい表情ですね。あなたの姉リキュールはいくら怒ったって、このようなお顔は見せませんでしたよ」
「止めなさい。私の姉を嘲るのは」
「主水よろしいですか。愛しい者を失ったものの痛みがわかったでしょう」
 ロセンデールの青い目に冷たい光が宿っていた。騒ぎを聞き付けてルドルフの親衛隊が駆けつけ、とりあえず収まったのであるが。ロセンデールは次々と刺客を二人の身を襲わせた。それ故、二人は神聖ゲルマン帝国より逃れたのである。

(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)
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最終更新日  2008.06.17 09:16:21
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