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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

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源義経黄金伝説2015年版

2017.08.14
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源義経黄金伝説■第4回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

第1章

永暦元年(一一六〇)今年42歳となった西行は、北面の武士当時、同僚であった平清盛を訪れている。
京都六波羅かいわいは、まるで平家の城塞都市である。平家親戚一同が甍を並べ
、藤原氏をはじめとしての貴族を睥睨している。平家にとって武力は力で
あった。
 清盛と話す西行から、奥座敷の方に、幼児と母親がかすかに見える。

(なにか、面白い話か、あるいは、わたしを陥れる奸計か。
くえぬからのう、清盛は、、)

こう考えていた折り、大きな陰が現れている。
今、飛び鳥を落とす勢いの男が、仁王がごとく立っている。
「おひさしゅうござる。西行法師殿、巷の噂、ご高名聞いておる。これがあ
の北面の武士、当時の佐藤殿とはのう」

 今42歳同年の清盛は、若い頃、詩上手の西行に色々な恋歌を代作してもら
ったことを思い出して、恥じらい、頭を掻いている。
「いやいや、北面の武士と言えば、あの文覚殿も」
文覚も同じ頃、北面の武士である。
「いやはや、困ったものよのう、あの男にも」

「今は、確か」
「そうじゃ、あの性格。、、よせばいいものを、後白河法皇にけちをつけ、
伊豆に流されておる」
文覚は摂津渡辺党の武士である。

「あの若妻をなで切りにしてからは、一層人となりが代わりよったな」
話を切り出してきた。背後から若い女御が、和子を清盛の腕にさしだしてい
る。
「のう、西行殿。古き馴染みの貴公じゃから、こと相談じゃ。この幼子、ど
う思う」
「おお、なかなか賢そうな顔たちをしておられますなあ。清盛殿がお子か」

「いや、違う。この常盤ときわの子供だ、名は牛若と言う」
「おう、源義朝がお子か」 
西行は驚いている。

(政敵の子供ではないか。それをこのように慈しんでいるとは。清盛とは拘
らぬ男よな。それとも性格が桁外れなのか)西行の理解を超えていることは
確かなのだ。

「そうじゃ、牛若の後世こうせい、よろしくお願い願えまいか。西行殿
も確か仏門に入られて、あちらこちらの寺にも顔がきこうが。それに将来は北
の仏教王国で、僧侶としての命をまっとうさせてくれまいか」

「北の…」
 西行は、少しばかり青ざめる。

「言わずともよい。貴公が奥州の藤原氏とは、浅からぬ縁あるを知らぬもの
はない」にやりとしながら、清盛は言う。西行は恐れた。

西行が奥州の秀衡とかなり昵懇な関係があり、京都の情報を流していること
を知れば、いくら清盛といえども黙っているはずはない。西行は冷や汗をか
いている。
「……」

「それゆえ、行く行くは、平泉へお送りいただけまいか。おそらくは、藤原
秀衡殿にとって、荷ではないはず」

しゃあしゃあと清盛は言う。西行の思いなど気にしていないようだ。
「清盛殿、源氏が子を、散り散りに……」
「西行殿、俺も人の子よ。母上からの注文が多少のう」

 相国平清盛は、頭を掻いていた。
母上、つまり池禅尼いけのぜんにである。清盛も母には頭があがらぬ。池禅尼が、牛若があまりにかわゆく死んだ孫に似ているため助けをこうたらしい。

が、相国平清盛は、北面の武士の同僚だった折りから、食えぬ男、また何や
ら他の企みがあるかもしれぬが、この話、西行にとっていい話かもしれない。
あとあと、牛若の事は交渉材料として使えるかもしれぬ。ここは、乗せられみるか。あるいは、平泉にとっても好材料かもしれぬ。ここは清盛の話を聞いてお
くか。

この時が、西行と源義経のえにしの始まりとなった。

平清盛はゼニの大将だった。平家の経済基盤のひとつは日宋貿易である。奥州の金を輸出し、宋の銭を輸入した。宋の銭の流入は日本の新しい経済基盤をつくろうとしていた。むろん、ここには平泉第の吉次がからんでいるのはいうまでもない。無論、西行もまた。

新しい経済機構が発達しょうとしていいる。新しい職業もまた始まろうとして
いる。日本の社会が揺れ動いているのだ。

続く2014改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所






最終更新日  2017.08.14 19:29:15
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源義経黄金伝説■第3回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

第1章 一一八六年 鎌倉八幡宮
    1 
 文治二年(1186)四月八日のことである。 鎌倉八幡宮の境内、音曲が響いてくる。
「京一番の舞い手じゃそうじゃ」そこに向かう雑色ぞうしきが仲間と声高に話していた。相方がこれも声高に答えた。

「おまけに義経が愛妾とな」
「それが御台所様のたっての願いで、八幡宮で舞うことを頼朝様がお許しになられたのそうじゃ」
「大姫様にもお見せになるというな」
「おう、ここじゃが。この混み様はどうじゃ」

鎌倉の御家人たちもまた、この静の白拍子の舞を見ようと、八幡宮に集まって来ている。
大姫は頼朝と御台所・北条政子の娘であり、木曽義仲の子供である許婚を頼朝の命令で切り殺されたところでもあり、気鬱になっていた。

去年文治元年(1185)三月平家は壇ノ浦で滅亡している。その立役者が義経。その愛妾が話題の人、静。平家を滅ぼした源氏の大祝賀会である。その舞
台にある女が登場するのを、人々はいまか今かと待ち兼ねて、ざわついている。

 季は春。舞台に、観客席に桜の花びらがヒラヒラと散ってきて風情を催させる。

その時、どよめきが起こった。

 人々の好奇心が一点に集中し、先刻までのどよめきが、嘘のように静まっている。舞台のうえにあでやかな人形があらわれた。

 舞殿まいどのの上、ひとりの男装の白拍子が舞おうとしている。
 頼朝から追われている源義経の愛妾静その人であった。この時、この境内の目はすべて静に注目している。
 衣装は立烏帽子に水干と白い袴をつけ、腰には太刀より小振りな鞘巻をはいている。
 静は、あのやさしげな義経の眼を思っている。きっと母親の常盤様そっくりなのだろう。思考が途切れる。騒がしさ。ひといきれ。

 静の母親の磯禅師は今、側にはしり寄って執拗に繰り返す。
「和子を救いたくば、よいか、静、頼朝様の前での舞は、お前の恭順の意を表すものにするのです。くれぐれもこの母が、どれほどの願いを方々にしたか思ってくだされ。わかってくだされ。よいな、静」涙ながら叫んでいる。

 が、静にも誇りはあった。

 母の磯禅師は白拍子の創始者だった。その二代目が静。義経からの寵愛を一身に集めた女性が静である。京一番といわれた踊り手。それが、たとえ、義経が頼朝に追われようと…。
 静は母の思わぬところで、別の生き物の心を持った。

要塞都市、鎌倉の若宮大路。路の両側に普請された塀と溝。何と殺風景なと静は思った。その先に春めいた陽炎たつ由比ガ浜が見えている。その相模の海から逃れたかった。


  かわいそうな一人ぼっちの義経様。私がいなければ、、
そう、私がここで戦おう。

これは女の戦い。知らぬうちにそっと自分の下腹をなででいる。義経様、お守り下させ。これは私の鎌倉に対する一人の戦い。別の生き物のように、ふっきれたように、静かの体は舞台へ浮かんだ。

 しかし,今、舞台真正面にいる源頼朝の心は別の所にある。

 頼朝は、2つの独立を画策していた。ひとつは、京都からの独立、いまひとつは、階級からの独立である。武士は貴族の下にいつまでもいる必要がない。とくに、東国では、この独立の意識が強いのだ。

西国からきた貴族になぜ、金をわたさなければいけなにのか。だれが一番苦労しているのか。その不満の上に鎌倉は成り立っている。

しかし、義経は、、あの弟は、、義経は人生において、常に逃亡者である。

自分の居場所がない。世の中には彼に与える場所がない。義経は、頼朝が作ろうとしている「組織」には属することが不可能な「個人」であった。その時代の世界に彼を受け入れてくれる所がどこにもない。

 頼朝はまた平泉を思う。

頼朝に宿る源氏の地が奥州の地を渇望している。源氏は奥州でいかほどの血をながしたのか。頼朝は片腹にいる大江広元おおえひろもとをみる。

土師氏はじしの末裔。学問を生業とする大江一族。頼朝は京から顧問になる男を呼び寄せる折、あるこだわりを持った。

なぜなら、彼の曾父は大江匡房まさふさ。博学の士。八幡太郎義家に兵法を伝授し、奥州での勝利を確約したといわれている。頼朝はその故事に掛けている。奥州との戦いのために学問の神、大江家が必要だったのだ。

さらに別の人物頼朝は眺める。

文覚もんがくは十年前、後白河法王の密命を受けてきた荒法師で、が今は頼朝の精神的な支えとなっている。皮肉な運命だった。法王はそこまで、頼朝が大きくなるとは考えてなかった。
 その想いの中を歩む心に、声が響いて、頼朝はふと我にかえる。

「しずや、しずしずのおだまき繰り返し、昔を今になすよすがなる。吉野山
みねの白雪踏み分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき」

 ひらひらと舞台の上に舞い落ちる桜吹雪の中、静は妖精のようだった。人間ではない、何か別の生き物…。

 思わず、頼朝をはじめ、居並ぶ鎌倉武士の目が、静に引き寄せられていた。
感嘆の息を吐くのもためらわれるほど、
 それは…、人と神の境を歩んでいる妖精の姿であった。

●続く●2014版
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所






最終更新日  2017.08.14 19:28:13
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2017.08.09
源義経黄金伝説■第3回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

第1章 一一八六年 鎌倉八幡宮
    1 
 文治二年(1186)四月八日のことである。 鎌倉八幡宮の境内、音曲が響いてくる。
「京一番の舞い手じゃそうじゃ」そこに向かう雑色ぞうしきが仲間と声高に話していた。相方がこれも声高に答えた。

「おまけに義経が愛妾とな」
「それが御台所様のたっての願いで、八幡宮で舞うことを頼朝様がお許しになられたのそうじゃ」
「大姫様にもお見せになるというな」
「おう、ここじゃが。この混み様はどうじゃ」

鎌倉の御家人たちもまた、この静の白拍子の舞を見ようと、八幡宮に集まって来ている。
大姫は頼朝と御台所・北条政子の娘であり、木曽義仲の子供である許婚を頼朝の命令で切り殺されたところでもあり、気鬱になっていた。

去年文治元年(1185)三月平家は壇ノ浦で滅亡している。その立役者が義経。その愛妾が話題の人、静。平家を滅ぼした源氏の大祝賀会である。その舞
台にある女が登場するのを、人々はいまか今かと待ち兼ねて、ざわついている。

 季は春。舞台に、観客席に桜の花びらがヒラヒラと散ってきて風情を催させる。

その時、どよめきが起こった。

 人々の好奇心が一点に集中し、先刻までのどよめきが、嘘のように静まっている。舞台のうえにあでやかな人形があらわれた。

 舞殿まいどのの上、ひとりの男装の白拍子が舞おうとしている。
 頼朝から追われている源義経の愛妾静その人であった。この時、この境内の目はすべて静に注目している。
 衣装は立烏帽子に水干と白い袴をつけ、腰には太刀より小振りな鞘巻をはいている。
 静は、あのやさしげな義経の眼を思っている。きっと母親の常盤様そっくりなのだろう。思考が途切れる。騒がしさ。ひといきれ。

 静の母親の磯禅師は今、側にはしり寄って執拗に繰り返す。
「和子を救いたくば、よいか、静、頼朝様の前での舞は、お前の恭順の意を表すものにするのです。くれぐれもこの母が、どれほどの願いを方々にしたか思ってくだされ。わかってくだされ。よいな、静」涙ながら叫んでいる。

 が、静にも誇りはあった。

 母の磯禅師は白拍子の創始者だった。その二代目が静。義経からの寵愛を一身に集めた女性が静である。京一番といわれた踊り手。それが、たとえ、義経が頼朝に追われようと…。
 静は母の思わぬところで、別の生き物の心を持った。

要塞都市、鎌倉の若宮大路。路の両側に普請された塀と溝。何と殺風景なと静は思った。その先に春めいた陽炎たつ由比ガ浜が見えている。その相模の海から逃れたかった。


  かわいそうな一人ぼっちの義経様。私がいなければ、、
そう、私がここで戦おう。

これは女の戦い。知らぬうちにそっと自分の下腹をなででいる。義経様、お守り下させ。これは私の鎌倉に対する一人の戦い。別の生き物のように、ふっきれたように、静かの体は舞台へ浮かんだ。

 しかし,今、舞台真正面にいる源頼朝の心は別の所にある。

 頼朝は、2つの独立を画策していた。ひとつは、京都からの独立、いまひとつは、階級からの独立である。武士は貴族の下にいつまでもいる必要がない。とくに、東国では、この独立の意識が強いのだ。

西国からきた貴族になぜ、金をわたさなければいけなにのか。だれが一番苦労しているのか。その不満の上に鎌倉は成り立っている。

しかし、義経は、、あの弟は、、義経は人生において、常に逃亡者である。

自分の居場所がない。世の中には彼に与える場所がない。義経は、頼朝が作ろうとしている「組織」には属することが不可能な「個人」であった。その時代の世界に彼を受け入れてくれる所がどこにもない。

 頼朝はまた平泉を思う。

頼朝に宿る源氏の地が奥州の地を渇望している。源氏は奥州でいかほどの血をながしたのか。頼朝は片腹にいる大江広元おおえひろもとをみる。

土師氏はじしの末裔。学問を生業とする大江一族。頼朝は京から顧問になる男を呼び寄せる折、あるこだわりを持った。

なぜなら、彼の曾父は大江匡房まさふさ。博学の士。八幡太郎義家に兵法を伝授し、奥州での勝利を確約したといわれている。頼朝はその故事に掛けている。奥州との戦いのために学問の神、大江家が必要だったのだ。

さらに別の人物頼朝は眺める。

文覚もんがくは十年前、後白河法王の密命を受けてきた荒法師で、が今は頼朝の精神的な支えとなっている。皮肉な運命だった。法王はそこまで、頼朝が大きくなるとは考えてなかった。
 その想いの中を歩む心に、声が響いて、頼朝はふと我にかえる。

「しずや、しずしずのおだまき繰り返し、昔を今になすよすがなる。吉野山
みねの白雪踏み分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき」

 ひらひらと舞台の上に舞い落ちる桜吹雪の中、静は妖精のようだった。人間ではない、何か別の生き物…。

 思わず、頼朝をはじめ、居並ぶ鎌倉武士の目が、静に引き寄せられていた。
感嘆の息を吐くのもためらわれるほど、
 それは…、人と神の境を歩んでいる妖精の姿であった。

●続く●2014版
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所






最終更新日  2017.08.09 15:48:18
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2017.08.02
源義経黄金伝説■第2回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所


明治元年(1868年)よりさかのぼる事、690年前

1180年(治承4年)四国白峰。

老僧が荒れ果てた神社の鳥居の前に佇んでいる。鳥居から見える四国瀬戸の荒海はひゅひゅうと音を立てて荒れすさんでいる。

「ようやく参りましたぞ、崇徳上皇様、しかし、この荒れよう、いかにかなら
ぬものか。上皇様、上皇様、どうかお姿をお見せくださいませ。西行が、佐藤
義清が参りましたぞ」
西行は大声で叫んでいる。ここは四国の山中である。が、社殿は静まり返って
いる。その静けさが、何とも恐ろしい。

「いかがなされました。何かご不満がおありになられるのか」

「ふ……」
どこからともなく、うめき声が、あたりの静寂を破る。

突然、風が強くなってくる。空が急激に曇り始め、やがてポツリと西行の頬を
雨脚が濡らした。

「遅いわ、西行よ。朕を、何年待たせるのじゃ。さような奴輩が多いがゆえ、
京都に災いの種を、いろいろ蒔いてやったわ。四つの宮、後白河もいやいや腰
をあげたであろう。俺が恐ろしいはずじゃ。う、悔しや。もっとあや
つ、、、、後白河法皇を苦しめてやるぞ」
その声は恨みに満ち満ちている。

「崇徳上皇様、お待ちくだされい。民には、何の咎もございませぬ。どうか、他の
人々に災いを与えるのはお止めくだされい」

「ふふう、何を言う。日本の民が苦しめば、あやつも苦しむ。もっともっと苦
しめばよい。俺の恨みはいかでも晴れぬは」
「お聞きください、崇徳上皇様。では上皇様のための都を新たに作るという策は、いかがでございますか」

声が急に途切れる。
「何、西行よ、お前、何かたくらんでおるのか。いやいや、お主は策士じゃ。
何かよからぬことをたくらんでいるに違いない」

意を決して、西行が顔をあげた。
「崇徳上皇様、奥州でございます」
「何、あの国奥州に」
「そうでございます。この国の第二の都を。それならば中国にも前例がござい
ましょう」
「何、平泉を、第二の京に。そして朕を祭ると、、そういうことか、西行」
「さようでございます」
西行は、顔を紅潮させていた。

「西行、たばかるでないぞ。わかったぞ。朕は、少しばかり様子をみる事とし
ょう。がしかし、再度謀れば、未来永劫、朕はこの国に、祟るぞ」
風雨は、急に止み、天に太陽が姿を現す。汗がしたたり落ちている西行の顔
は、まぶたが閉ざされている。体が瘧のようにぶるぶると震えている。腰は、
地に落ちている。

「これでよろしゅうございますか、兄君、崇徳上皇様に告げましたぞ。後白河法皇様。はてさて、しかしながら、恐ろしい約束事を…。この私が西行が、佐藤
義清が、いかにしてか、平泉を第二の京にしなければなりませぬなあ…」

ひとりごちている西行は、心中穏やかではない。
西行は四国白峰にある崇徳上皇の塚にいる。
崇徳上皇は保元の乱で破れ、弟、後白河上皇に流されたのだ。

(続く)2010改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所






最終更新日  2017.08.02 23:31:34
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2017.07.28
源義経黄金伝説■第1回2017版改稿
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所


京都市上京区今出川通り飛鳥井に京都市上京区に白峯神宮はある。
祭神は崇徳上皇すとくじょうこう。日本の大魔王といわれている。

幼き帝の手を外祖父、中山忠能がかしづき、新しく出来た神社に詣でている。
「さあ。御君おんきみ、ご先祖帝さまにお願い申し上げてくだされ。
これからの、御帝さまを中心とされる新しき政府に、崇徳様の怨霊がたたらぬ
よ うに、あたらしき政治をお守りくだるようにお願いつかまつれ。
代々、我が家、藤原本家に伝わりし、西行法師さいぎょうほうし殿との
約束をお伝え下さいませ」

この日、1日驟雨である。中山忠能卿のさし出される傘の中。
幼き帝は、手を合わせ、御願いを、なされた。

「崇徳上皇殿下、お許しくだされ。我が王朝が武士から世辞を取り戻すに700年
かかってしまいました。今にいたり、源頼朝、大江広元の子孫たる二家、薩摩島津。長州毛利両家をもって、武士どもの町、江戸と政庁江戸幕府を倒し、武士どもを根こそぎ退治いたします。この長き屈折したりし日々をお許しくだされ。

そして、陰都かげみやこでございます。平泉王国は、いにしえに滅びました、それゆえ、
代わ りに江戸を陰都といたします。平将門を祭る神田明神を持って、陰都の
守神といた します。

が、本来は、崇徳上皇様が祭神でございます。どうぞ、我が王朝が、江戸城をもっ て新しき王朝の皇居といたす事をおゆるしくだされ」

御年十六歳の帝は、深く頭をさげた。白峰稜前にある白峰寺木像(白峰大権現)が 讃岐(さぬきー香川県)から運ばれて来ていた。先帝孝明帝が望み、できなかった事をなしとがている 。

「今、奥州東北の各藩が、列藩同盟とか申し、昔の蝦夷どものように反乱を
起こそうとしております。我が王朝の若い貴族を持って先頭に立ち、荒恵比寿
どもをたいらげます」

幼き帝は、再び深々と、頭を垂れた。

崇徳上皇は、保元の乱ほうげんのらんの首謀者の一人である、後白河に
敗れ、讃岐に流され、そのちでなくなり、白峰山しらみねさんに葬られた。
讃岐は京都の南西の方角、つまり裏鬼門うらきもんであり、平泉は、京都から見て鬼門
にあたる丑寅の方角である。

空から、驟雨の中雷光が、崇徳上皇の独白が落ちてきて響き渡る。

「西行法師よ、長くかかったのう。いつまで朕をまたせたことやら。
がしかし、その陰都もいつまでも、安穏とするかや。
所詮は、東の幕府、所詮は、荒夷どもが街だわ。

朕が情念は、いつしか吹くだすやもしれぬぞ。
見ておれ」

その時 雷光が風景すべてを白濁させ、消えた。
残光が響き渡る。

「不吉なり。。」誰かがつぶやく。

この日、元号が明治と改元された。

(続)2017版改稿
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所






最終更新日  2017.07.28 18:15:08
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2017.06.06
源義経黄金伝説■第72回■最終回★
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
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■ 終章

 正治元年(一一九九)、源頼朝、落馬がもとで死亡と、鎌倉幕府正史
「吾妻鏡」には記されている。
 印地打ちの石には、鉱山で使われる丹毒が、塗られていて、ゆっくりとした
死を頼朝に与えたらしい。
 頼朝の死は平家滅亡より、十四年後である。

義経の存在が、日本の統一を可能にした。
頼朝は、義経のおかげで、追捕師として、日本全国に守護地頭を置くことを可能と
した。これが律法の世、貴族の世である日本を、革命においこんだ。

黄金大仏の再建は、平安黄金国家の終わりを意味し、新しい征夷大将軍が続いて
いく。

西行法師は文覚に、黄金のありかをつげ、
さでに先に運び込んだ黄金を頼朝の名前で、勧進を行った。その代わりに
義経をこれ以上追いかける事を約束させたといわれている。

 西行の残りの黄金は、結縁衆、山伏たちによって、蝦夷・恵庭岳の山林中に隠
されてるという伝説が存在する。
宝物を埋めた目印として、笹竜胆の家紋が浮き出る、義経石が配されている。
笹竜胆は、西行えにしの藤原北家の家紋である。

 当時、満州、東蒙古、華北地方を領有していた、女真族の国は金である。
 義行も、母静ともともに吉次の手づるにより、金に渡っていると伝えられた。
 義経は、その子、義行とともに、金朝に仕え、功績は抜群で、父子相次いで
範車大将軍に任じられたと「金史別伝」にある。

文覚は生き残り、鎌倉幕府により再び佐渡に配流された。1199年3月の事
である。

夢見、こと明恵は文覚の跡目となり、京都神護寺の事跡をつぐ。この後、承久の変の後
北条泰時が、明恵に深く帰依し、「御成敗式目」という法律をつくる。

この中に明恵のあるがごとくの思想は反映され、民間の知恵あるがままを、条例化する
手助けをした。式目は明治時代まで日本人のこころのよりどころとなる。
40年間書き綴られた明恵の「夢記」が今に残る。

東大寺勧進職は、栄西に受け継がれる。法然は鎌倉仏教を立ち上げていく。
鬼一法眼は伝説の人物となった。

紀州田仲庄は後、源頼朝の預所となり、高野山との土地争いは解決された。
藤原定家編纂の歌集「新古今和歌集」には西行の歌が94首が治められ、
入選歌集筆頭である。

歌の聖人、西行上人の名は日本の歴史に深く刻まれている。


以下 連載 第1回に戻る。
■明治元年(1868年) 白峯神社(京都)

京都市上京区今出川通り飛鳥井に京都市上京区に白峯神宮はある。
祭神は崇徳上皇。日本の大魔王といわれている。

幼き明治帝の手を外祖父、中山忠能がかしづき、新しく出来た神社に詣でている。
「さあ。御君、ご先祖帝さまにお願い申し上げてくだされ。
これからの、御帝さまを中心とされる新しき政府に、崇徳様の怨霊がたたらぬよ
うに、あたらしき政治をお守りくだるようにお願いつかまつれ。
代々、我が家、藤原本家に伝わりし、西行法師殿との約束を使え下させ」

幼き帝は、手を合わせ、御願いを、なされた。

「崇徳上皇様、お許しくだされ。我が王朝が武士から世辞を取り戻すに700年
かかってしまいました。今にいたり、大江広元が縁の2家、島津。毛利両家をもっ
て、武士どもの町、江戸と政庁江戸幕府を倒し、武士どもを根こそぎ退治いたしま
す。この長き屈折したりし日々をお許しくだされ。

そして、陰都でございます。平泉王国は、いにしえに滅びました、それゆえ、代わ
りに江戸を陰都といたします。平将門を祭る神田明神を持って、陰都の守神といた
します。
が、本来は、崇徳上皇様が祭神でございます。どうぞ、我が王朝が、江戸城をもっ
て皇居といたす事をおゆるしくだされ」

御年十六歳の帝は、深く頭をさげた。白峰稜前にある白峰寺木像(白峰大権現)が
讃岐から運ばれて来ていた。先帝孝明帝が望み、できなかった事をなしとがている 。

「今、奥州東北の各藩が、列藩同盟とか申し、昔の蝦夷どものように反乱を起こそ
うとしております。我が王朝の若い貴族を持って先頭に立ち、荒恵比寿どもをたい
らべます」

帝は、再び深々と、頭を垂れた。

崇徳上皇は、保元の乱の首謀者の一人である、後白河に敗れ、讃岐に流され、
そのちでなくなり、白峰山に葬られた。
讃岐は京都の南西の方角、つまり裏鬼門であり、平泉は、京都から見て鬼門
にあたる丑寅の方角である。

空から、音声が落ちてきて響き渡る。

「西行法師よ、長くかかったのう。いつまで朕をまたせたことやら。
がしかし、その陰都もいつまでも、安穏とするかや。
所詮は、東京幕府、所詮は、荒夷ども街じゃ。朕が情念は、いつしか吹くだすやもしれぬ。
見ておれ」

(完結)20160619版改稿原稿
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
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最終更新日  2017.06.06 09:58:36
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源義経黄金伝説■第71回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
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■1199年(建久10年)京都・藤原兼実邸

関白、藤原兼実は考えていた。

我々の家の先祖が、古き名前では中臣の家が、百済から、この国に流れてき
て、他の豪族や百済、新羅の貴族とも戦い、この国で一をしめ、仏教とこの国
の宗教とも戦い、我々、藤原の貴族がこの国の根幹を押さえてきた。

藤原の都を作り、壬申の乱を生き残り。この国を寄生樹のように支配してきたのだ。

ここは、我々、藤原氏の国だ。

おそらく、この世界のどこよりも我々の支配体制が優れていよう。

天皇家ですらその意味合いがわかるまい。それなのに、後から来て板東に移住しいてきた者どもが、武闘を繰り返し、地位を締めはじめ。天皇家の血を入れた人物を立ててしまった。

藤原の氏の長としては、何らかの生き延びる方策をこうじねばならない。「鎌倉」へは何かかの方策を討たねばなるまい。
源頼朝が、鎌倉源氏が麻呂を裏切ろうと。京都の底知れぬ企みの怖さをしれぬ武者ともを、手に入れよう。

法然殿、重源殿、栄西殿とも話あわねばなるまい。
むろん、麻呂の弟、慈円じえんも。

そうだ。慈円なら我々藤原の名跡をたたえ、我々の役割を言葉として残してく
れよう。この京都の比叡山から、次々と宗教という矢を打ち込み、鎌倉武士ともの心をうちつらぬこうぞ。

いままでの後白河法皇という重石が、麻呂の頭からさっても、、

いや、なつかしい思いがつのる。生きておわした間はにくらしげで
あったが、今は、後白河法皇様がうたれた、打ち手の見事さが、麻呂の身にしみる。

さいわい、西行が打ち立ててくれた「しきしま道」が日本全土を多い、我々の
守りとなろう。和歌により言霊による日本全土の守り。その和歌の言葉が悪霊
から我々を守りってくだるだろう。

和歌により神と仏を日本各地でたたえる。

それも歌枕によりわれわれ貴族や僧侶が、恐るべきは崇徳上皇様のたたりのみ。
西行ですら失敗してしまった。

永く後生我々のおそれとなろう。

兼実は、藤原氏の氏の長者うじのちょうじゃとして、あらゆる手をつかい、鎌倉幕府への攻撃かための決意をした。

■4 1199年(建久10年)京都

京都。神護寺の境内。

鎌倉から生き延びて京都に帰っている僧がいる。
文覚が涙を流しながら、二mはある巨木の切れ端に向かっている。
その力技は普通ではない。刃の聖そのものである。その姿勢が、
「天下落居てんからっきょ」の今となっては時代遅れの観をいなめまい。

額に汗し、顔を赤らめ、ひたすら巨木に打ち込み刃を振るう文覚は、人間では
ないような感じさえ思わせるのだ。赤銅色のその力強い腕からは、ある人物の
姿がだんだんとこの木片から浮かびびあがったくる。

夢見、今は明恵みょうえと呼ばれる弟子が、文覚にたづねる。
「お師匠様、それはもしや、」
「いうまでもない。西行の像だ」
「でも、お師匠様、この世ではお話が通じなかったのではございませんか」
「夢見よ、ワシと西行は同じ乱世を生きた、いわば戦友、同士だ」

鬼の文覚から一筋に涙が、、
「これは汗ぞ。夢見よ。奴の思い出にのう」
「、、、」
「が、夢見よ、負けたのはやはりわしかもしれん」

「それはいかなる故にでございますか」
「わしと西行は、北面の武士ぼ同僚だった」
「たしか、相国平清盛さまも」

「そうだ、が、この後世の日本で、一番名前が残るは、残念ながら、西行かも
しれん」
「西行様が、」

「そうだ、ワシが忌み嫌った「しきしま道」をあやつは完成させよった。和
歌によりこの国日本の風土あらゆる者に神と仏があると思わせ崇拝させる道を
あやつは完成させ、その道を伝えるものを数多く残したのだ。

歌の聖人として、西行の名前は、永遠不滅であろう。日本古来の神道と仏教を、和歌と手法を使い一体化させよった。これは、さすがの、重源も気づかなかったことだ」

「でも。お師匠様、よろしいではございませんか。この世が平和になるのでご
ざいますから」
「夢見よ、ふふつ、お主もな、西行の、毒にはまったか」
文覚は苦笑した。

「わしはな、まだまだ西行への甘い考え方には不服だ。奴は亡くなっても策士ぞ」
「といいますと」
「西行が、義経という玉ぎょくを、旧い日本である奥州に送り込み、頼朝に日本統一をさせよった。
西行は、後白河法王の命とは故、日本統一と、宗教統一の2つを完成させよったのだ。これは、珠子たまこさまの願いにもかなう。後白河さまは、白拍子 などとつうじ、今までの日本の文化をまとめ、武士にたいする日本文化の根元流派を、藤原氏をはじめとする貴族に残したのだ」

文覚は、夢見にさとすように言った。
「むかしナ。わが王朝は、東大寺の黄金大仏を作り上げた。これは、唐にも天竺にも新羅にもない大事業であり、我が王朝の誇りとなった征夷大将軍、坂上田村麻呂が、黄金を生む異郷である、蝦夷を征服した。そして、」

「そして、平安京を桓武帝がおつくりなられ、我が王朝の平安なる時を希望されたわけですね」
「武者である平家が、黄金大仏を焼き、新たなる黄金大仏を、黄金国家である我が王朝は再建せざるを得ない。が、黄金は平泉奥州王国が握っておった」

「で、新たなる征夷大将軍の出番というわけですか」
「そうだ、黄金郷であり仏教王国である平泉を、何かの理由で成敗し、新たなる征夷大将軍として、再び黄金大仏を作りあげなけらば、ならぬ」

「源頼朝様が、異国奥州平泉を成敗し、黄金を手に入れ、黄金の大仏を、平安国家の象徴としてつくり上げねばならなかった、と」

「そうだ、お主も、ワシも、色々な国々からこの日本へ移住してきた我らが祖先が、1つの国の象徴として存在した黄金大仏を再建し、新たなる時代の幕開けをつげなければならなかったのだ」

「お師匠様、でも、もう日本は仏教国でございます」

「くく、それよそれ。西行は、歌の形で、奥州藤原氏の仏教王国の考え方自体を、日本に広げていきよった、くやしいが、わしは、西行にかなわなんだ」

夢見、明恵は、しかし心のなかで少しほほえんでいる。

でも、お師匠様、でも少しお忘れです。ー紀州熊野を納めしもの、日本をおさ
めんー熊野を治めるどこかの国から来た人間の子孫が、この日本を治めるのですよ。
紀州湯浅氏出身の夢身、今は明恵みょうえは、ほほえんで、西行の彫像ができあがるのを眺めていた。

(続く)

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源義経黄金伝説■第70回

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■ 1198年(建久9年)鎌倉/大江広元屋敷
「危ういところであった、文覚が鬼一を処分してくれたとしては」
大江広元は呟く。が、広元は疑心に捕らわれる。
 いかん、もし、、、

「よいか、至急に牢を見て参れ」と雑色に命ずる。
「源義行殿、牢におられませぬ」
 雑色が顔色を変えて報告した。
「何と…、そうか、あの禅師めが」

大江広元は、禅師の控え部屋にいく。
「禅師、お主、義行殿を逃がしたな」
声高かに叫ぶ広元に対して
禅師は、ゆっくりとお茶をたしなんでいる。

ふくいくたるお茶の香りが禅師のいる部屋にたちこめている。

「大江様、どうかお許しください。あの者、最初からこの世には存在せぬもの
です」
「禅師、お前、静と連絡をとっていたのか。静はまだ生きていると聞く。あ
の義行を静の元に走らせたのか」

大江広元は、ある事にはたと気づく。
苦笑しながら言う。
「そうか、禅師、お主、西行に惚れておったのか。それを見抜けなんだのは
、私が不覚。西行の想いが、自分の黄金である源義行を逃しよったか。くくっ、まあ、良い。 いずれは、静のところに向かうであろう」

大江広元は憎々しげな表情で、禅師を見つめる。
禅師は、まさか広元が静の居場 所を知っているとは、思っている。

恐るべき情報能力を持つ男だった。広元 は付け加えた。

「よいか、禅師。もし何かことがあれば、お主もろとも滅ぼす。無論、京都
大原にいる静もだ」

脅しの言葉であった。が、禅師も負けてはいない。
「しまし、大江様。大江様もこのままでは済みませぬぞ」
「何だと」
「頼朝様の暗殺を知っておられたこと、鎌倉腰越にて書状に認めてございま
す」
「何という書状を…、嘘じゃ」

「北条政子様は信じますまい。いや、本当のことをご存じでも、その書状を
利用し、京都から来た男である大江様を、鎌倉政権の座から引きずり落とすでし
ょう」
「むむっ、お前。この俺を裏切りおるか」
大江広元は憤怒の形相で、禅師ににじり寄った。

「これでも禅師は、この源平の争いの仲を生き残ってきた者でござい ます。裏の手、裏の手を考えておらねば、生き残ってはこられませぬ。そこは 私、禅師の方が広元様より、一枚も二枚も上手ということでございましょう」

大江広元を見返す禅師のまなじりには力がこもっていた。
おまけに義行は、禅師の孫なのだ。

今の今まで生きながらえて、この官僚あがりの田舎貴族と対峙
して、勝てなければどうしよう。経験の量が違うのだった。
「うむっ…」
大江広元も押し黙ってしまう。ここは禅師を怒らせぬ方がよいかもしれぬ。所
詮は女だ。変に怒らせて、今までの広元の苦労を水泡に帰すこともあるまい。

「大江様、大江様はこの鎌倉殿の政庁を作り。歴史書に御名前が載りましょう。
が しかし、大江広元様ではなく、中原広元様にかも知れませんね」

「禅師、お前何を企むか」
「いや、お隠しめされるな。先年なくらられし西行様も、同じことをされました」

「‥‥」

「西行様も、佐藤家の本筋ではございませんでした。佐藤家は源平の戦い、屋島の戦で、
滅んでおります。それゆえ、西行様も佐藤家御本流として、後の歴史にのこられるでしょう。
これは大江様も同じことをされる機会でございましょう」

大江広元も、また西行もその家の本流、本家ではない、と禅師はいうのだ。

「禅師、お前は、、」
「いや、皆まで申されますな。

大江様の御母君様は、大江家の出。母方さまの御本流をのってるおつもりではございませんでしたか。中原の名前を隠し、大江の本流の方々をすべて死においや り、大江広元の名前は、歴史にのこりましょうぞ。さすれば、名高き学者、大江匡房の 曾孫としてはづかしき事無く明法博士の御名前を朝廷からいただけましょう。これ でも禅師には、つてがございます」

大江はしばしの間、頭を垂れていた。が、ゆっくりと顔を禅師に向ける。
「、、で、禅師、そのお方とは、、」

禅師は、広元もまた、京都のためにからめとった。

「わかった禅師。このこと不問にしよう」
「では、源義行様のことはいかが記録されます」
「事件とはかかわりあいのない雑色だったということにしよう」
「それを聞いて安心いたしました。 それでは、京都からこられる僧のことよろしくお願いいたします」

栄西、法然をはじめ、新しい教条を手にに、鎌倉武士のために
京都から僧侶が送られてくるのだ、その手配方を、大江広元に頼もうというのだ。

昔、平家の諜報少年部隊、赤かむろの束ね者でもあった、磯禅師は、深く頭をさげた。

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2017.06.05
源義経黄金伝説■第69回
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■ 1199年(建久10年)鎌倉

文覚は、対決の後、しばらくして、広元屋敷の元を訪れている。

文覚の頭や顔は朱に染まっている。
足取りもおぼつかぬ。
鬼一の打撃の後がゆっくりと文覚の体をむしばんでいる。
鬼一の八角棒には、やはり丹毒が塗られていた。

「大江広元殿、鬼一方眼はワシがあやめた、これで、あやつらの王国、勢いがなくなろう」
文覚は、大江に満足げに言った。
「さようでございますか。それは重畳。しかしながら、いかがなされた。その傷は」
「我のことなぞ、どうでもよい。よいか、大江広元、義行を逃がせ」
「源義行を…、何を言う。気が狂られたか」

「よいか、大江広元。私、文覚は、元は武士である。鬼一との約束は守らねばならぬ」
 文覚は息も絶え絶えに言うのである。

「皆の者、出て参れ。文覚殿、乱心ぞ」

大江広元は、屋敷の郎党を呼び寄せる。
「くそっ、広元、貴様」
 手負いの熊のように文覚は、広元の手の者と打ち合うが、多勢に無勢。おま
けにひん死の状態の文覚は打ち取られる。
「残念、無念。清盛、西行、お前らが元へ行くぞ」
とらえられ、牢につれていかれる文覚が、いまわの際に叫んだ。


文覚は,今は亡き好敵手西行の最期を、そして西行から聞いたある話を
思い起こしていた。


待賢門院璋子けんれいもんいんたまこは、西行の手を強く握りしめている。
待賢門院璋子は後白河法皇の母君である。
その臨終の席に西行が呼び寄せられていた。

「二人の皇子をお守り下され。西行殿。私の最後の願いでございます」
「わかりました、璋子様、この西行の命に変えても」
西行は宮廷愛の達人でもあった。この時期日本は宮廷愛の時期である。

待賢門院璋子の二人の子供とは、崇徳上皇と後白河上皇である。

璋子は鳥羽天皇の間に後白河法皇を生み、鳥羽上皇の祖父である白河法王の間
に崇徳上皇をうんだ。白河法皇は璋子にとり愛人であり、義理父であった。
いわゆる源平の争いは、璋子を中心にした兄弟けんかから起こった。

西行は璋子のために終生、2人の御子を守り事を誓ったのだ。
西行は璋子のために、京都朝廷のしくみを守りために、その生涯を捧げた。
西行と文覚は、若き頃、恋いにそまりし王家を守る2人の騎士であった。

それでは、文覚は、日本の何を守ったのか。自問している。

文覚は若き折り、崇徳上皇の騎士であった。
上西院の北面の武士である。
しかし、文覚は保元の乱の折り逃げ出している。その折りの事を西行はよく知っているのだ、言葉で攻めていたのだ。

西行は、いまはのきはに、叫んでいた言葉を思い起こす。
「文覚殿よ、天下は源氏におちたと、、思わぬほうがよい」
「何だと」
「頼朝殿の義父、北条、平時政殿の手におちるかもしれんな」
西行の死に臨んでの予言であった。

いにしえ、坂東の新皇と自ら名乗った、平将門まさかどの乱平定に力があ
ったのは、藤原秀郷と平員盛である。藤原秀郷の子孫は、奥州藤原氏、西行の
家などである。
平員盛の子孫が、伊勢平氏と北条氏であった。

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源義経黄金伝説■第68回★

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第9章 1198年(建久9年) 鎌倉
■5 1199年(建久10年)鎌倉大倉山 

 鎌倉の街の背後にそびえる大倉山山腹に、びょうと風がふいている。

 鎌倉の周り北東西三方に山山がとりまき、南は海に開いている。鎌倉は自然
の要塞であった。大倉山山頂から頼朝が作りあがた要塞都市の姿がよく見え
る。文覚はだれにも手出しできぬように、この決闘場を選んでいた。

 伊豆からの春嵐がふきすさぶ山頂に鬼が二匹。

「鬼一、今度が最後の勝負ぞ。いずれにしろ、お主らが丹毒で、頼朝様、もっ
ても7日だ。お主らを倒しておかねばのう。この鎌倉幕府が持たぬわい」
鬼一も構えている。

「おおよ、その勝負、受けたぞ、文覚。俺も京都一条の鬼一法眼。あとくされ
ない勝負だ。これで引き下がったとあっては、俺の名折れよ」
二人の体に、伊豆からくる少し早い春風が、吹き巻いている。

人の気配のない大蔵山の山頂に、二人とも八角棒を手にして微動だにしない。

「それに鬼一、安心せよ。儂は西行殿と9年前に約束しておる。勝っても負け
ても、源義行殿の命は安全よ」
「それを聞いて安心した。お主も闇法師の端くれであったか。約束は守るの
か」
「当たり前よ。ましてや、西行殿の今際の際の言葉だ」
「いざや、まいる」

とどちらからともなく打ちかかっている。
激しい打撃音が、大倉山全体に響く。山に住む野生の動物たちが勢いで逃げ出してくる。

「よいか、鬼一。お前たち、山の民どもの住む所など、もうこの世には存在せ
ぬ」
激する文覚が声高に叫んでいた。
「頼朝ばらに、我々の王国など支配できるものか。いあや、支配させるもの
か」
鬼一が、鋭い文覚の八角棒の一檄を受けて叫ぶ。

鬼一の言う王国とは、京都大和王朝が成立しても、なお連綿と続いている、
前の王朝、葛城王朝の流れを汲む『山の民の王国』である。歴代の京都朝廷も
彼らの見えざる王国を認め、協力者としていたのだ。それを文覚は無くなると
言うのだ。

「よいか、頼朝殿が、征夷大将軍となり、十年前に奥州平泉王国を滅ぼした
今、我々武家の世の中よ。日本は頼朝殿によって統一された。支配するのは
鎌倉将軍。また山々、山山林のすみずみまで、鎌倉から守護、地頭をつかわし、
網の目のように日本全土に支配を巡らせる。お前たち、山伏を始め、山の民の
住む所なぞないわ。義経が逃げた場所などもうなくなる」

「くそっ、ゆうな。文覚、それであるからこそ、お主ら倒さねばならぬ。お主
は鎌倉を代表する攻撃勢力。我々自由民のためにな」
「無駄よ。京都朝廷を頼朝殿がおさえれば、『山の民の王国』など認めるもの
か」
「平清盛殿、西行法師殿、後白河法皇様。皆、我らが味方であったぞ」
「それも終わりぞ。義経殿も、もう日本には帰ってこれぬぞ」

文覚の言葉に鬼一はたじろく、
(なぜそれを知っている)
「貴様、なぜ、それを」

「ふふっ、金きんに逃れるところを、儂が、のがしてやったのだ。
鞍馬寺の宝、征夷代将軍、坂上田村麿呂公の刀と引き換えにな」

「くそ、これが最後の一撃…」
鬼一は、渾身の力を込めて、文覚に打ちかかっていた。

八角棒はぱしりと折れ、鬼一の棒が、文覚の頭蓋を、天頂を打ちすえている。

一瞬、時の流れがとまる。
二人の体は止まっている。
風も一瞬凪いだ。

急にゆるやかな太陽の光が、雲間からふたりの体を照らした。

折れた八角棒の先を、文覚は鬼一の胸板を貫いている。
 相打ちである。

 血のにおいがただよっている。
鬼一の方が致命傷となる。
足下に体液の流れが、大地をすこしづつ、赤黒く染めていく。

「くっつ文覚、どうやら、我々の時代は終わったのう」

苦しげに、鬼一は呻く。
血が口からしたたり落ちてくる。

 しばらくして文覚が告げる。

「鬼一、よい勝負じゃった。それに約束だけは守ってやろう」
「約束じゃと」
血みどろの鬼一の疑問の顔が、文覚に向いた。

「源義行殿を、鎌倉から逃がすことじゃ」
相対する文覚の顔と体も、すでに血にまみれている。

「それは有り難い、文覚殿。その事恩にきる。ぐう」

ひとこと発し、鬼一の体がゆっくりと大地に沈んでいく。
 血の気が失せていく鬼一の体に、文覚は両手で拝む。

「鬼一殿のお仲間の方々、後はお願い申す」
 まわりの気配に対し、文覚は周りを見渡し大音声でさけぶ。

折れた八角棒を杖として、頭から血を流しながら、文覚は鬼一の体を残し
そこを去って行く。
文覚は山道で立ち止まり、振り向く。
目には血が流れ込んでいる。

「鬼一殿、さらばじゃ」

 文覚の姿が消えた後、山伏の群れ、結縁衆や、印字打ちの群が現れていた。
 数人が鬼一方眼の遺骸を取り囲む。

 「後を追うか」一人が叫ぶ。
 「無駄じゃ、あのおとこには」

「刃の鬼聖」文覚の名前は、紀州にも響いている。
文覚は日本各地の山伏の生地で荒行をくり開けしていた。

「頭の最後の命令にしたがおう」
「それより、我々はな、、西行法師殿の伝説を、この世に広めねばなるまい
それが、われら、後に残りしものが役目ぞ」

鬼一方眼の義理の弟、淡海が、強くいう。
目じりが光っていた。

(続く20131026改訂

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